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「ごめんあそばせ」

息子の初めての夏休みもいつの間にか終わった。7月30日からまるまる1カ月間休みだったわけだけれど、私たちが小学生の頃は、もっと夏休みが長かった。海の日前後から夏休みで、登校日は2回あったように記憶している。

うちの実家は母がフルタイムで働いていて、父が自宅で仕事をしていたから、私が小学校のころ、夏休みは学校で実施される学童保育に行っていた。小学校の奥の校舎、図書室の手前に位置する図工室で行われていたと記憶している。

そこでの思い出は一つ。確か竹馬をしていて、(うーん、でも室内で竹馬なんかしていたのかな。まあいいや、とにかく竹馬をしていたんだと思う。)そのときに1つか2つ年下の女の子、きれいな癖毛を高い位置で二つ結びにした、二重まぶたがくるっとしていてかわいらしい女の子がぶつかってきた。そして「あら、ごめんあそばせ」と言ったのだ。

そのときの衝撃というのか、正直イラっとした。そして反射的に「こういうときはそういう言い方をしないんだよ」と私は言った。彼女は何も悪気がなかったんだろう。その途端ひるんで、「ごめんなさい」と消え入るような声で言った。

私の中には澱のような感情と、彼女の発した「ごめんあそばせ」が残った。それをあれから20年近くが経った今も思い出す。それほど、平成時代に小学生の女の子が発する「ごめんあそばせ」は私にとって強烈だったのだろう。ちなみに私は一度もその言葉を使ったことがない。一度くらい使ってみたいものだ。

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