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文芸作品

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詩、掌編など。
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記事一覧

習作_「律」

 どっと教室が沸く。お調子者の勇樹がまた冗談を言ったのだ。担任の尾崎先生が勇樹をたしなめ…

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影あそび

 今日も起きられなかった。もう何日も敷き放しにした煎餅布団に重い体を横たえたまま、私は思…

水中世界2

彼に身を寄せたなら、彼の鼓動が高まって、私の鼓動は凪いで落ち着くはずだった。のに。 彼に…

朴の木のふもとで

大きな樹木の下に、シャガの花が一面に咲いていました。白いひらひらとしたシャガの花弁をみて…

水族館(「歩っぽ」より抜粋)

『歩っぽ』創刊について今年1月、地元・宮崎県延岡市の仲間で文芸誌『歩っぽ』を創刊しまし…

水中世界

水中でぶくぶくと沈む。隔たりある世界。心地よい。私の周りを水の膜が包んで、何者からも脅か…

銀河の塵となれ

「あのさ、どうして柊ちゃんはわきの毛を剃らないの。」 隣りで小説を読んでいる彼女に問いかけると、ほんのわずかな時間、瞬きする間もないほど短い刹那、空気の流れが止まった。彼女はゆっくりとこちらに顔を向け、長い睫毛に縁取られた色素の薄い瞳で僕を捉えるとこう言った。 「洋ちゃんは私に剃ってほしいの。」 穏やかな彼女の投げかけは僕の胸の奥にある何かにこつんと響いた。なぜか僕は黙った。何も返す言葉が出てこない。 わきの毛があると興奮が萎む、かというと実際にはそんなことは全くない

新春(「歩っぽ」より)

ずっとこの人に会いたかった、と私は思った。じわっとしみた言葉のしずくが、胸の中で波紋を描…