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図解!原価計算基準二二【等級別総合原価計算】

原価計算基準。制定以来、実に60年以上経った今でも、一語たりとも加筆修正されていません。 聖書が古くならないように、全47あります原価計算基準も、時代遅れの産物ではないと考えています。
で、このnote。通常は「読み物」として発信されますが、以前より「調べ物」として創作してみたいとも考えていました。原価計算基準を「一つのnote記事に一つの基準」で楽しくイラスト図解不定期で順不同の発信となりますが、全47基準が完成した時には「試験勉強や実務のお供」として使っていただければ嬉しいです。

『図解!原価計算基準』の前書き

 基準二一の「単純総合原価計算」は総合原価計算の「基本形」ですが、基準二二以降は総合原価計算の様々なバリエーションを見ていきます。

等級別総合原価計算は、同一工程において、同種製品を連続生産するが、その製品を形状、大きさ、品位等によって等級に区別する場合に適用する。
等級別総合原価計算にあっては、各等級製品について適当な等価係数を定め、一期間における完成品の総合原価又は一期間の製造費用を等価係数に基づき各等級製品にあん分してその製品原価を計算する。
等価係数の算定およびこれに基づく等級製品原価の計算は、次のいずれかの方法による。
(一)  各等級製品の重量、長さ、面積、純分度、熱量、硬度等原価の発生と関連ある製品の諸性質に基づいて等価係数を算定し、これを各等級製品の一期間における生産量に乗じた積数の比をもって、一期間の完成品の総合原価を一括的に各等級製品にあん分してその製品原価を計算し、これを製品単位に均分して単位原価を計算する。
(二)  一期間の製造費用を構成する各原価要素につき、又はその性質に基づいて分類された数個の原価要素群につき、各等級製品の標準材料消費量、標準作業時間等各原価要素又は原価要素群の発生と関連ある物量的数値等に基づき、それぞれの等価係数を算定し、これを各等級製品の一期間における生産量に乗じた積数の比をもって、各原価要素又は原価要素群をあん分して、各等級製品の一期間の製造費用を計算し、この製造費用と各等級製品の期首仕掛品原価とを、当期における各等級製品の完成品とその期末仕掛品とに分割することにより、当期における各等級製品の総合原価を計算し、これを製品単位に均分して単位原価を計算する。
この場合、原価要素別又は原価要素群別に定めた等価係数を個別的に適用しないで、各原価要素又は原価要素群の重要性を加味して総括し、この総括的等価係数に基づいて、一期間の完成品の総合原価を一括的に各等級製品にあん分して、その製品原価を計算することができる。

二二 等級別総合原価計算

 ここでポイントとなるのが「等価係数を算定」し「積数の比」をもって按分することです。イラスト図解してみました。下図①はシャツ製造の等級別原価計算の事例になります。

図①:等級別原価計算では「等価係数を算定」し「積数の比」をもって按分します。

 上図①はシャツの製造事例ですが、「Mサイズのシャツ」と「Lサイズのシャツ」を同一工程で作るケースで見ていきます。いずれのサイズも50個ずつ製造。トータルの原価(完成品総合原価)は3,000円となっています。

 まず「等価係数」。Mサイズでは1.0、Lサイズでは1.4に設定しまして、各々の完成品数量50個に乗じ、各サイズの積数を算出します。
 ・Mサイズの積数:50個×1.0(等価係数)=50
 ・Lサイズの積数:50個×1.4(等価係数)=70

 次に、ここで求めた積数を使って、完成品総合原価3,000円を按分します。
 ・Mサイズの原価:3,000円×50÷(50+70)=1,250円
 ・Lサイズの原価:3,000円×70÷(50+70)=1,750円

 最後ご参考までに、各サイズのシャツの単価を求めてみましょう。
 ・Mサイズの単価:1,250円÷50個=@25円
 ・Lサイズの単価:1,750円÷50個=@35円

 以上、いかがだったでしょうか。実務はもう少し複雑ですが、極力シンプルな事例で解説してきました。あらためて「等級別総合原価計算」の意義を見てみますと「同一工程において、同種製品を連続生産する」とあります。よく似たものに「組別総合原価計算」があり基準二三で規定しています。
 組別総合原価計算は「異種製品を組別に連続生産する」とあり、ここでは分かりやすく、等級総合別原価計算=サイズの異なるシャツ、組別原価計算=シャツとトレーナーの事例を使っています。

図②:「組別総合原価計算」は別途、基準二三で規定しています。

等級別総合原価計算:同種製品→(例)サイズの異なるシャツ
組別総合原価計算 :異種製品→(例)シャツとトレーナー

「等級別総合原価計算」と「組別総合原価計算」の比較

<以上となります。最後まで読んで頂き、ありがとうございました。>


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