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図解!原価計算基準三一~三三【個別原価計算他】

原価計算基準。制定以来、実に60年以上経った今でも、一語たりとも加筆修正されていません。 聖書が古くならないように、全47あります原価計算基準も、時代遅れの産物ではないと考えています。
で、このnote。通常は「読み物」として発信されますが、以前より「調べ物」として創作してみたいとも考えていました。原価計算基準を「一つのnote記事に一つの基準」で楽しくイラスト図解不定期で順不同の発信となりますが、全47基準が完成した時には「試験勉強や実務のお供」として使っていただければ嬉しいです。

『図解!原価計算基準』の前書き

 基準二〇で以下の「製品別計算の形態」の類型に区分し、基準二四までで、(一)(二)(三)まで規定しています。
(一)  単純総合原価計算
(二)  等級別総合原価計算
(三)  組別総合原価計算
(四)  個別原価計算

 そして基準三一から「(四)  個別原価計算」の規定されています。よってこの間の、基準二五~三〇が「総合原価計算」の残りを規定しています。

 基準三一~三六で「(四)  個別原価計算」を規定していますが基準三一~三三のみご紹介し、個別原価計算の概要・考え方を説明してまいります。

個別原価計算は、種類を異にする製品を個別的に生産する生産形態に適用する。
個別原価計算にあっては、特定製造指図書について個別的に直接費および間接費を集計し、製品原価は、これを当該指図書に含まれる製品の生産完了時に算定する。
経営の目的とする製品の生産に際してのみでなく、自家用の建物、機械、工具等の製作又は修繕、試験研究、試作、仕損品の補修、仕損による代品の製作等に際しても、これを特定指図書を発行して行なう場合は、個別原価計算の方法によってその原価を算定する。

三一 個別原価計算

 個別原価計算とは、顧客の注文に応じて製品を製造する受注生産形態に適用される原価計算方法をいいます。下図①のとおり、顧客から注文を受けると、注文内容を記載した製造指図書が発行されますが、工場ではこの製造指図書に基づいて製品の製造を開始します。
 製造指図書の発行と同時に原価計算表が作成されます。原価計算表は、製造指図書ごとに原価を集計する表で、原価計算表に集計された原価が各製品の原価となります。

図①:顧客から注文を受けると、製造指図書の発行と同時に原価計算表が作成されます。

 上図①より、製造原価のうちピンク部分の製造直接費(直接材料費、直接労務費、直接経費)はある製品にいくらかかったかが明らかな原価なので、製造指図書ごとに個別に集計します。これを賦課(または直課)といい、基準『三二 直接費の賦課』で詳細を規定しています。

個別原価計算における直接費は、発生のつど又は定期に整理分類して、これを当該指図書に賦課する。
(一)  直接材料費は、当該指図書に関する実際消費量に、その消費価格を乗じて計算する。消費価格の計算は、第二節一一の(三)に定めるところによる。
自家生産材料の消費価格は、実際原価又は予定価格等をもって計算する。
(二)  直接労務費は、当該指図書に関する実際の作業時間又は作業量に、その賃率を乗じて計算する。賃率の計算は、第二節一二の(一)に定めるところによる。
(三)  直接経費は、原則として当該指図書に関する実際発生額をもって計算する。

三二 直接費の賦課

 上図①より、ブルーの間接費(間接材料費、間接労務費、間接経費)は、ある製品にいくらかかったかが明らかではない原価なので、製造指図書ごとに個別に集計することができません。そこで作業時間や直接労務費(金額)など何らかの基準に基づき振り分けますが、これを配賦といい、基準『三三 間接費の配賦』で詳細を規定しています。

(一)  個別原価計算における間接費は、原則として部門間接費として各指図書に配賦する。
(二)  間接費は、原則として予定配賦率をもって各指図書に配賦する。
(三)  部門間接費の予定配賦率は、一定期間における各部門の間接費予定額又は各部門の固定間接費予定額および変動間接費予定額を、それぞれ同期間における当該部門の予定配賦基準をもって除して算定する。
(四)  一定期間における各部門の間接費予定額又は各部門の固定間接費予定額および変動間接費予定額は、次のように計算する。
1  まず、間接費を固定費および変動費に分類して、過去におけるそれぞれの原価要素の実績をは握する。この場合、間接費を固定費と変動費とに分類するためには、間接費要素に関する各費目を調査し、費目によって固定費又は変動費のいずれかに分類する。準固定費又は準変動費は、実際値の変化の調査に基づき、これを固定費又は変動費とみなして、そのいずれかに帰属させるか、もしくはその固定費部分および変動費率を測定し、これを固定費と変動費とに分解する。
2  次に、将来における物価の変動予想を考慮して、これに修正を加える。
3  さらに固定費は、設備計画その他固定費に影響する計画の変更等を考慮し、変動費は、製造条件の変更等変動費に影響する条件の変化を考慮して、これを修正する。
4  変動費は、予定操業度に応ずるように、これを算定する。
(五)  予定配賦率の計算の基礎となる予定操業度は、原則として、一年又は一会計期間において予期される操業度であり、それは、技術的に達成可能な最大操業度ではなく、この期間における生産ならびに販売事情を考慮して定めた操業度である。
操業度は、原則として直接作業時間、機械運転時間、生産数量等間接費の発生と関連ある適当な物量基準によって、これを表示する。
操業度は、原則としてこれを各部門に区分して測定表示する。
(六)  部門間接費の各指図書への配賦額は、各製造部門又はこれを細分した各小工程又は各作業単位別に、次のいずれかによって計算する。
1  間接費予定配賦率に、各指図書に関する実際の配賦基準を乗じて計算する。
2  固定間接費予定配賦率および変動間接費予定配賦率に、それぞれ各指図書に関する実際の配賦基準を乗じて計算する。
(七)  一部の補助部門費を製造部門に配賦しないで、直接に指図書に配賦する場合には、そのおのおのにつき適当な基準を定めてこれを配賦する。

三三 間接費の配賦

 ところで「個別原価計算」の特徴を知るには「総合原価計算」と比較することで、その違いが明確になるかもしれません。下図②をご覧ください。

図②:個別原価計算と総合原価計算の違いをイラスト図解してみました。

 「個別原価計算」は、仕事(オーダー)ごとに発行された製品オーダーに原価を集計する計算方式で、特定の製品を作るために用意したトロッコ(製品オーダー)に積まれた原価を計算するイメージになります。
 これに対し、「総合原価計算は会計的だ」と説明される場合があります。というのも、生産は一定期間継続して行われ、全ての生産が完了するまで生産数量は確定せず、一定期間(1ヶ月や1年間)で区切って、この期間を原価集計単位として、人為的に製品原価を計算するので「会計的」だと言われます。更には製品原価の後ろに生産物が存在しないのも特徴的です。

図③:総合原価計算は大量生産形態に適用されます。

 「総合原価計算」は上図③のとおり、月末仕掛品がある場合、製造原価を直接材料費加工費に分けて計算しますが、詳しくは基準『二四 総合原価計算における完成品総合原価と期末仕掛品原価』で規定しています。

<以上となります。最後まで読んで頂き、ありがとうございました。>

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