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図解!原価計算基準五【非原価項目】

原価計算基準。制定以来、実に60年以上経った今でも、一語たりとも加筆修正されていません。 聖書が古くならないように、全47あります原価計算基準も、時代遅れの産物ではないと考えています。
で、このnote。通常は「読み物」として発信されますが、以前より「調べ物」として創作してみたいとも考えていました。原価計算基準を「一つのnote記事に一つの基準」で楽しくイラスト図解不定期で順不同の発信となりますが、全47基準が完成した時には「試験勉強や実務のお供」として使っていただければ嬉しいです。

『図解!原価計算基準』の前書き

 基準五では「非原価項目」について具体例を挙げています。非原価項目とは、原価計算制度において原価に算入しない項目のことをいいます。
 なお下図①のとおり、基準三では「原価項目」の「本質」を規定しているのに対し、基準五では「非原価項目」の「具体例」である点、ご留意ください。

図①:非原価項目の具体例4つ(基準五)

 では基準五の原文を見ていきましょう。

非原価項目とは、原価計算制度において、原価に算入しない項目をいい、おおむね次のような項目である。
(一)  経営目的に関連しない価値の減少、たとえば
1 次の資産に関する減価償却費、管理費、租税等の費用
(1)  投資資産たる不動産、有価証券、貸付金等
(2)  未稼働の固定資産
(3)  長期にわたり休止している設備
(4)  その他経営目的に関連しない資産
2 寄付金等であって経営目的に関連しない支出
3 支払利息、割引料、社債発行割引料償却、社債発行費償却、株式発行費償却、設立費償却、開業費償却、支払保険料等の財務費用
(二)  異常な状態を原因とする価値の減少、たとえば
1 異常な仕損、減損、たな卸減耗等
2 火災、震災、風水害、盗難、争議等の偶発的事故による損失
3 予期し得ない陳腐化等によって固定資産に著しい減価を生じた場合の臨時償却費
4 延滞償金、違約金、罰課金、損害賠償金
5 偶発債務損失
6 訴訟費
7 臨時多額の退職手当
8 固定資産売却損および除却損
9 異常な貸倒損失
(三)  税法上とくに認められている損失算入項目、たとえば
1 価格変動準備金繰入額
2 租税特別措置法による償却額のうち通常の償却範囲額をこえる額
(四)  その他の利益剰余金に課する項目、たとえば
1 法人税、所得税、都道府県民税、市町村民税
2 配当金
3 役員賞与金
4 任意積立金繰入額
5 建設利息償却

五 非原価項目

 特に「(一)  経営目的に関連しない価値の減少」と「(二)  異常な状態を原因とする価値の減少」は、原価の本質を規定している「基準三の裏返し」になります。

(一)  経営目的に関連しない価値の減少

 経営の目的は、製品やサービスを生産し販売することですから、経営の目的に関連しない財務活動や利益剰余金に関連する支出は原価ではありません。したがって、借入金利息、社債発行費、社債発行差金償却等の財務費用や未稼働の固定資産等に関する減価償却費、寄附金等経営に関連しない支出は原価ではありません(営業外費用)。また、法人税や住民税、配当金などは利益剰余金処分支出も、価値のない消費ではないため原価ではありません。よって「経営目的に関連しない価値の減少」は原価に算入しません。

(二)  異常な状態を原因とする価値の減少

 原価は、正常な状態における経営活動を前提として把握された価値の消費です。通常生じる(つまり正常)範囲の減損や仕損は原価に含まれます。よって「異常な状態を原因とする価値の減少」は原価に算入されません。

<以上となります。最後まで読んで頂き、ありがとうございました。>

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