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図解!原価計算基準四〇【標準原価算定の目的】

原価計算基準。制定以来、実に60年以上経った今でも、一語たりとも加筆修正されていません。 聖書が古くならないように、全47あります原価計算基準も、時代遅れの産物ではないと考えています。
で、このnote。通常は「読み物」として発信されますが、以前より「調べ物」として創作してみたいとも考えていました。原価計算基準を「一つのnote記事に一つの基準」で楽しくイラスト図解不定期で順不同の発信となりますが、全47基準が完成した時には「試験勉強や実務のお供」として使っていただければ嬉しいです。

『図解!原価計算基準』の前書き

 基準四〇より『第三章 標準原価の計算』になります。標準原価算定の目的を4つ規定しています。
  ①原価管理目的
  ②財務数値算出目的
  ③予算策定目的
  ④記帳の簡略化、迅速化目的

 では基準四〇の原文を見ていきましょう。

標準原価算定の目的としては、おおむね次のものをあげることができる。
(一)  原価管理を効果的にするための原価の標準として標準原価を設定する。これは標準原価を設定する最も重要な目的である。
(二)  標準原価は、真実の原価として仕掛品、製品等のたな卸資産価額および売上原価の算定の基礎となる。
(三)  標準原価は、予算とくに見積財務諸表の作成に、信頼しうる基礎を提供する。
(四)  標準原価は、これを勘定組織の中に組み入れることによって、記帳を簡略化し、じん速化する。

四〇 標準原価算定の目的

 基準四〇の内容は以上なので、以降は『1.標準原価計算の始まり』と『2.標準原価計算の流れ』についてご紹介します。

1.標準原価計算の始まり

 標準原価計算のルーツは、20世紀初頭アメリカの能率技師F・W・テーラー(1856-1915年)の「科学的管理法」にあります。19世紀の工場では、作業は労働者に任されていました。当時は出来高制で、彼らが作業能率を上げると経営者は賃率を引き下げて労働者へ分配を減らそうとしました。このことが、賃金制度に対する労働者の不信を生み、慢性的な怠業を招きました。
 そこで、テーラーは、労働者のやる気を引き出し、高能率、高賃率を実現するために、「公正な1日の作業量」である課業の設定、時間・動作研究による作業の効率化、職能別職長制度、指図票制度などの管理方法を考え出しました。
 テーラーは「作業量」という原単位についての標準を提唱しましたが、「原価についての標準」を提唱したのは、価格的管理法の普及に努めた能率技師のH・エマーソン(1853-1931年)でした。これが、標準原価計算の始まりです。こうして、テーラーの科学的管理法は標準原価計算に取り組むことで世界中に広がりました。

図①:F・W・テーラー(1856-1915年)の「科学的管理法」がH・エマーソン(1853-1931年)に取り込まれました。

2.標準原価計算の流れ

 基準四〇前までの原価計算は、実際に発生した原価(実際原価)をもとに製品の原価を計算する方法(実際原価計算)でした。これから見ていく標準原価計算は、あらかじめ目標となる原価(標準原価)を決め、標準原価をもとに製品の原価を計算する方法です。
 標準原価計算では、予め目標となる原価(標準原価)を決めますが、この標準原価は無駄や非効率を省いた場合の原価です。ですから、標準原価と実際原価を比べ、その差異を比較することによって、無駄や非効率を改善することができるのです。

図②:標準原価の流れ

<以上となります。最後まで読んで頂き、ありがとうございました。>

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