麻雀を「教える」のに必要な能力

もう二年半くらい前ですが、所属している団体を辞めたときこんなnoteを書きました。

簡単にいうと「プレイヤーとして研鑽する時間とれてない自分がプロと名乗るの嫌だからYouTubeとかに専念しますわ」って話です。

これを発表したあと、何人かから「でも人に教えることで自分の雀力も伸びるしそんな区別しなくていいんじゃないの?」と言われました。

確かに巷では、人に教えることで自分の脳内も整理されて理解力が上がる、なんて言われますよね。受験勉強のときもそんな話聞いた気がする。

これはある一面では正しいけれど、別の一面では「教える」のってもっと難しいよなぁ、とも思うんですよね。
今回はそんなお話です。自分語り成分強めですがご容赦ください。

上手に「教える」ための能力は2種類ある

人に上手に教えるために必要な能力は

(1)うまく要点を整理したり、優先順位をつけることで必要な知識を絞ってわかりやすく伝えること

(2)相手が何をわかっていないか、何を知りたいかを察すること

の2つがあると思います。

具体例を出しましょう。

東一局南家5巡目

これ、今から十年近く前の近代麻雀で、確か…大崎初音プロだったかなと思うんですが間違ってたらすみません…が行っていた紅孔雀という初心者向け麻雀教室での体験をもとにしたコラムで書いていたんですが4mを切ってシャンポン待ちにする初心者さんが多いそうです。

その理由について「和了牌が手にある方がロンというときに間違える心配がなくて安心だから」と書いてありました。

これを見たときめちゃくちゃ感動した覚えがあります。

確かに、25mは自分の手牌にないから、「場に切られたときにそれが25mであると瞬時に判断する力」がなければロンということはできません。みんながスパスパと切っていくなかでそれをしなきゃならないというのはプレッシャーになってもおかしくない。
けれど3m1pなら「自分の手にあるこれと同じ絵柄がでたらロンと言おう」というマインドになるのでいくらか楽ちんです。

再掲

この牌姿について「4mを切るとシャンポン待ちと言って待ちが4枚。3mを切るとリャンメン待ちといって待ちは8枚。待ちが多いほうがアガリやすいからリャンメン待ちにとろうね。」という説明ができるのが(1)の能力です。

けれど、初心者が4m切りリーチをしてしまう理由は「枚数がわからないから」では無いとしたら?その説明はあまり意味がありません

「初心者は間違わずにロンと言わなきゃならないというだけでプレッシャーになる」ということに気づけているかどうか、というのが(2)の能力です。

それを知っていれば「ここで無理にリャンメン待ちにさせるより、まずはたくさん打って牌を覚えるのが大事だな」と指導方針を変更できるかもしれないし、チョンボをしても大丈夫だよという雰囲気を作ることが大事かもしれません。
ネット麻雀を教えるときとリアル麻雀で教えるときに違う説明をしようという話にもなります(ネット麻雀は自動でロンしてくれるからね)。

そして、これは自分がいくら麻雀の勉強をして論理的に強くなったとしても気づくことができません

大抵の麻雀が上手な人が、教えるのがうまいとはどういうことかと聞かれれば(1)の能力が高い人をイメージします。
麻雀が上手な人は論理的な思考力があることが多いですから(1)が得意な人はたくさんいます。
かくいう自分も最初に本を出したころは(1)が自分の武器だと思っていました。けれど上記の通り(1)が得意な人は世の中にいくらでもいるので、(2)を考えられることが麻雀を教えることを仕事にする上で大事なんじゃ無いかと思うようになってきました。

コメントから学ぶ

YouTubeの動画で「AとBの比較ではAが有利です」という話をしたとき「Cはダメなんですか?」と私が想定していなかったコメントがくることがありますが、そういうときは必ず、なぜCを選びたくなるんだろう?と考えます。

東一局南家5巡目

昔この何切るを出しました。23mと45s(24s)の比較のつもりで問題にしたら「ドラを使い切りたいから8mを切ります」というコメントが複数あって数日間考え込みました

自分が強くなりたいと思っている人は太くないおさんとか多井隆晴さんとかNAGAの打牌をみて「なんでこれを打つんだろう」と考えることに時間を割くべきです。
けれど私はこの8m切りについて考え続けることで麻雀界で希少価値の高い人材になれるのでは?と考えたので(そしてそれにワクワクしたので)プレイヤーとして何かを成すことは諦めて冒頭のnoteを書きました。

また初心者の方々が抱える課題を知るという意味では、どれだけYouTubeの登録者を増やしても、現場で実際に初心者の方々と触れ合っている麻雀教室の先生には敵わないんじゃないか、と思いベルバードさんでのスクールなんかもさせていただくようになりました。

ちなみに8m切りの理由に対する現状の結論としては

こういう画面の動画だったのでツモ7m(そしてドラ)と勘違いしちゃう人が多いのかも…ということです。
教え方とは関係ない結論ですみませんw動画の作り方の問題として勉強になりました。

この勉強の集大成

というわけでここ数年、コメント欄と睨めっこし、スクールでいろんなことを学ばせていただいて培った「初心者がどこでつまづいているか」というノウハウを詰め込んだ牌効率本を3月に出版します。

なんだ宣伝noteかよ!

と思われた方、その通りです。すみません。

初心者向けの牌効率本なんですが、「重要な部分だけを体系的にまとめる」という従来の自分の強みも出しつつ「ちょこちょこ講座系動画などをつまみ食いしてるけどなかなかネット麻雀の段位が上がらない人」が混乱しがちな部分を整理しました。

東一局南家5巡目

例えばこちらの手牌。ターツ選択で13sを切るとタンヤオになるよという話です。

けれど、ヘッドレスの動画をみて「雀頭がないと受け入れが広いんだ〜」という理解をしてしまったせいで8pを切りたくなってしまう人がいます

これを回避するためには、5ブロックとかヘッドレスとかを学ぶ前に、シャンテン数と受け入れの概念について整理しておかなければいけません。

もしくはこちらの手牌

東一局南家5巡目

7mか4pを切れば完全1シャンテンです。
ドラ受けと赤受けを考えれば7m切りがよさそうですが、まずはこのトイツ固定の7mか4pにたどり着くのが大事です。

これを「正しく」説明すると、7m(4p)を切れば25p(69m)と69sの2つのリャンメンの他に8m3pのシャンポン受けもあるから手が広いよね、という話になります。
もちろんこれで理解してくれる人もいるでしょうから、この説明をわかりやすくすることにも価値はあります。

しかし一方で

東一局南家5巡目

おい!こっちは7s切りって言ったじゃねえか!リャンメン強いって!!言っただろ!!!なんで上のはリャンメン壊すんだよ!!!!!

と、思う人もいますよね。
なのでこの本では、上の牌姿の時点で下の牌姿との違いまで説明したり、という部分を工夫しました。

この問題に共感してくださった方にとっては、とても役立つ本にできてると思いますのでよかったらお願いします。3/24出版です。

ちなみに3/26は毎月恒例、ベルバードさんでのナイトスクールもありますが、そちらで手売りもします。サインなどもご希望いただければ対応いたしますので、都内の方はぜひこちらもよろしくお願いいたします。

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