大

私の『冷戦史』翻訳出版秘話

今回は「私の『冷戦史』翻訳出版秘話」と題して、今まで一度も明らかにしてこなかった出版の裏話について書いてみたいと思います。

以前もnoteに書いたとおり、私が和訳を担当させていただいたロバート・マクマン『冷戦史』(勁草書房)が2018年7月に出版され、その後重版・増刷が決定しました。

私が本書の和訳作業に当たったのが2016年の11月から12月にかけてで、そこから監訳者である一橋大学の青野利彦准教授(役職は当時)による監訳作業が開始され、最終的に出版の運びとなったのが2018年7月でした。

ある専門家との出会い

この翻訳書の出版のきっかけは、2016年8月のある方との出会いにありました。私はツイッターである分野(国際政治関連)の専門家の方(仮名Tさん)をフォローさせていただいており、その方のツイートを見て勉強させていただいています。

2016年8月に、私はTさんにメールを送り、もしよろしければ一度会っていただくことはできないかとお伺いすると、会いましょうとご快諾いただき、渋谷の某所で待ち合わせすることになりました。

Tさんは海外の大学で、ある分野の博士号を取得された方で、その専門分野に関する洋書を自ら和訳して何冊も出版されています。

Tさんは渋谷の待ち合わせ場所で顔を合わせると、お腹がすいたのでウナギでも食べましょうと言って、ビルの上階のお店に連れていってくれました。お互いに実際に顔を合わせるのはこれが初めてでしたが、食事しながら、私がTさんをツイッターで知ったきっかけや気になっている国際政治関連のテーマ、自分が普段仕事でやっている翻訳の分野などについて話しました。また、Tさんが訳された翻訳書も数冊持っていったので、その本にサインしてもらいました。

すると、Tさんが「平井さんは翻訳の経験も豊富な人なので、出版社を紹介しますよ」と不意に口にしました。私は思いがけない言葉をいただき、たいへん光栄に思いましたが、初めて会ったばかりで本当に出版社を紹介していただいていいのだろうかという驚きと戸惑いもありました。

ただ、それはたいへんありがたいことですし、Tさんからも前向きに検討してほしいと言われたので、積極的にこの機会を活かしていきたいと思いました。私自身、国際政治を中心としたテーマを扱った書籍の翻訳にはずっと以前から興味を持っていたので、全く思いがけないご提案をいただいて、嬉しく思いました。

Tさんと、自分がどんな分野に興味があるかという話をし、後日Tさんが私のことを編集者に紹介してくれたので、たまたま手元に持っていて、このテーマはいいのではないかと思ったオックスフォード大学出版会から出版されているVery Short IntroductionシリーズのRobert J. McMahonのThe Cold Warを提案させていただきました。

すると、決定まで数ヶ月かかりましたが、幸運にも出版社の企画会議に通り、青野准教授が監訳者を務め、私が翻訳を担当させていただけるということが決定しました。そして、上記のとおり、この年の11月から12月にかけて和訳作業を行いました。

以上が、『冷戦史』の翻訳が出版されるに至った経緯です。

ちなみに、Tさんは初めて会ったばかりの私に出版社を紹介してくれた上に、ウナギまでおごってくれました。私には感謝の一言しかありません。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?