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大阪府民の税金はどこへ【さきしまコスモタワーホテル事件とカジノ】


「お久しぶりでーす。さきしまのホテルの件、知ってますか。やばいすねえ。おれ、あの社長ら2人とも知り合いなんですわ」
 大阪の「番長」から久しぶりに電話がかかってきた。ミナミでふぐを食べて以来か。
「なんですか、それ?」

 そのニュースを詳しくは知らなかったが、その時、大阪では話題になっていた事件である。
 8月22日、誉田喜博氏と小寺孝明氏氏は、ホテルの賃料を差し押さえようとする大阪府からカネを逃がした強制執行妨害容疑で逮捕された。
 両氏が経営するさきしまコスモタワーホテルは大阪府の人工島・咲洲(さきしま)に大阪府が所有する55階建てのビルに入っている。このビルには府庁舎が入り、2017年からホテルはテナントとして入居、ホテル経営をしてきた。
 咲洲はカジノ(IR)で批判も多い大阪・関西万博が開かれる夢洲(ゆめしま)地区と目と鼻の先にある。それゆえ、2025年開催の大阪万博の宿泊客も見込まれていた。

 ところが、このホテルは開業から10ヶ月で賃料を支払わなくなった。退去命令が出たものの営業を続け、大阪府は未払い賃料26億円を支払えと明け渡しの民事裁判を提起。今年6月に大阪高等裁判所の判決が確定し、誉田氏側は10月中にホテルを明け渡すことになっていた。
 

 その一方で、同社は収入となった宿泊料金900万円を別会社に振り込んで隠したとして強制執行妨害容疑で逮捕されたというわけだ。刑事事件である。
 賃料は月額3500万円。それが約7年間だから、単純計算で滞納分は26億円に及ぶという。つまり、900万円は大阪府が持つ債権のごく一部だ。もちろん同社が26億円儲かったわけではないが、誉田氏らが隠している金はかなりの金額になるはずだ。 

◇コロナで狂った歯車


 表にも裏にも顔が広い経営者である「番長」は誉田氏とは会食もする仲だったという。「誉田は昔は太ってたんですが、バイパスの手術してから痩せましたね」と話す。誉田喜博氏の名前の読みは「ほんだ」ではなく「こんだきはく」。「こんちゃん」とも呼ばれていたという。
 番長とは今年の6月から携帯電話がつながらなくなったそうだ。番号を変えて、本当に近しい人間にしか番号を教えなくなったらしいという。

「6月くらいから怪しかったね。だけど、誉田はもともとサギろうと思っていたわけではないと思いますわ。どこかで歯車が狂ったんですわ。コロナんなってホテルに客が入らなくなり、どうしようもなくなった。あのときは、『カネが大変だ』と言って、自分の物件を売りまくってすっからかんになってましたよ。だけど、コロナも収束してホテルに客は戻ってきた。商売は戻っても家賃はそれでも払わない。そりゃ儲かりますよ」

 コロナでは企業にさまざまな特例措置が執られた。ゼロゼロ融資や社会保険料を含む税金保険料の支払い猶予などだ。だが、このような固定費を支払わない日常になれきってしまうと、いまさら支払えなくなる。そんな社保倒産が問題になっているが、誉田氏の場合は賃料支払いが惜しくなったのか。

 番長によれば誉田氏が現金を持ち歩く姿も度々見たという。

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