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陽気な葬送文化たち
お墓やお葬式などの葬送文化に興味があるのですが、それらは地域や民族、宗教によってほんとに色とりどりです。
そこで今回は、世界のお墓をとりあげた本の中からわたしが気に入った陽気な葬送文化を3つご紹介したいと思います。
参考にした本は、『世界のお墓』『世界のお墓文化紀行』の2冊。写真集のようにパラパラと眺められて、各地のお墓事情も書かれていておもしろいです。
1. ユーモアあふれる陽気なお墓
一つ目は、国立民族学博物館にも展示されているルーマニアの「陽気なお墓」。博物館の展示説明によると、こんなお墓です。
亡き村人の生前の姿をユーモアとともに絵と物語で描き出した「陽気な墓」。一人ひとりの個性に応じた内容となっている。ルーマニアのサプンツァ村の墓地には、この「陽気な墓」が林立している。
『世界のお墓』によれば、このお墓づくりはある一人の木彫り職人がはじめた活動で、今は年間3万人もの観光客が訪れています。
実際にこのお墓に訪れた人のブログも発見しました。
この地方では昔からの風習で、死が近づいてきたと感じた村人は、自分の人生を振り返って詩で表現し、また自ら棺を用意して旅立ちの準備を整えるという。
わたしはお墓不要派だったのですが、こんなお墓ならいいかも、と思ってしまいます。
余談ですが、このブログを書かれている人のお墓巡りに対する執念もすごい。「墓マイラー」を名乗り、なんと、34年間にわたって世界各地101カ国の偉人たちのお墓巡りをされているそうです……!
2. パレード形式のジャズ葬
二つ目は、アメリカ南部の港町、ルイジアナ州ニューオリンズに根づく「ジャズ葬」。ジャズ発祥の地らしい葬送文化です。
アメリカ ルイジアナ州のニューオリンズの「ジャズ葬」は、死者が天国へ旅立つことを祝福する儀式です。
多くの人たちが故人の入った棺を墓地まで運びますが、その道中ブラスバンドの演奏する明るいジャズにあわせて、参列者も一緒にお祭り騒ぎをします。
一見、明るい慣習のようですが、こちらの記事によると、その背景には奴隷として酷使されていた黒人たちが、死によって苦しみから救われていたことから「祝福」するようになった、という悲しい過去から誕生したそうです。
ジャズ葬を調べていたら、「東京葬楽社」というユニットを見つけました。音楽好きの方のおみおくりに、生演奏は喜ばれるかもしれません。
3. お祭りとしての死者の日
三つ目は、メキシコの「死者の日」。ピクサー映画「リメンバー・ミー」の題材にもなっていて、私も映画を見たときに知りました。
戻ってくる死者を迎えるお祭りで、毎年11月1日、2日に行われています。日本のお盆のような風習のようです。
この日になると骸骨人形が家々に飾られ、商店では骸骨をかたどったカラフルなお菓子が売られ、人々は骸骨姿に扮装して街中を練り歩く。
夜になると、人々は黄色いマリーゴルドで彩られた墓地に続々と集まり、家族や先祖が眠る墓前で酒を飲み、食事をし、死者に語りかけて時を過ごす。
メキシコではパレードまで行われるそうなので、かなり盛大なお祭りみたいです。
以上、3つの葬送文化をピックアップしてみました。
大事な人が亡くなって、胸が張り裂けんばかりの悲しみにくれているときに、お祭り気分にはなれないし、明るい音楽なんて聞きたくないかもしれません。
亡くなった方の年齢や亡くなり方、遺族の方の受け止め方や価値観によっても、どのように死を受け止めたいかは変わってくると思います。
ただわたしは、自分が死んでしまったあとは、自分が生きていたことを少しでもポジティブな思い出にしてほしいという欲があり、こんな葬送文化もいいかなと思いました。
最後に、『世界のお墓文化紀行』編集部のあとがきの言葉がよかったので、こちらを引用して締めます~。
死を考えることは、つまり生について考えることである。世界のお墓文化を知ることで、あなたの人生が、日々の心の在り方が、そして死生観が、あなたらしくありますように。
参考文献
長江曜子監修『世界のお墓』(誠文堂新光社、2016年)
新免光比呂監修/ネイチャー&サイエンス構成・文『世界のお墓文化紀行』(幻冬舎、2016年)
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