大丈夫、いつものことだろ?

感覚的パーキンソン病論①

動けなくなっているパーキンソン病患者に「落ち着いて」と言っても、たぶん無駄である。彼らの脳は落ち着いている。慌てているのは、脳からの命令を待ちわびている身体のほうなのだ。ところが、「落ち着いて」というメッセージは、目や耳などの感覚器を通して脳に伝えられる。脳は「わかっとるがな。身体に言ってやってくれ」となる。ドーパミンの不足によって、脳の命令が身体に伝わりにくくなっているからだ。このジレンマを解消するためには、「落ち着け」というメッセージを脳を介さず直接身体に伝えなければならない。それには、日ごろ脳を介さずにやっている反射的な運動を思い出させてやるのが効果的だ。地面に引いてある線を越えようとしたり、腕を振ったり、まず一歩下がったり、音楽に合わせたりすると歩き出せるのは、それが反射的運動を通じて、そうしたきっかけが、「大丈夫。いつものことだろ?」というメッセージを、身体に直接伝えるからなのだ。

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