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なぜラ・サールが名門校たりうるのか?

(2023.10.13加筆)
東福岡自彊館中の共学化が発表され記事加筆しました

思いつく母校の魅力をまとめてみました。リンクを貼っている過去記事もご参照ください。

寮生活

日本のボーディングスクール

「ラ・サール」というと「全寮制の」と返されることが多いが、厳密には「全寮制」ではない。自宅から通学する鹿児島市近郊住まいの生徒が約3分の1いる。それでも、寮が有名なのは全国から優秀な生徒が寮に入って進学するという事実が有名だからだろう。イギリスには各界にエリートを輩出するパブリック・スクールがあり、それらはほぼ全寮制でボーディングスクールと呼ばれている。そのうちのハロウ校が日本の岩手県に進出ということで話題。下記著作はパブリック・スクールとの比較の中で日本のラ・サールも出てくる。

規則正しい生活

中学寮は縦割りの8人部屋で生活する。生活する部屋とは別に同じフロアの全生徒の学習室が集まった自習室があり、毎日19時15分に点呼の後、「義務自習」がある。3時間。テレビも無い、当然ゲームも無い生活。この1日3時間の義務自習の積み重ねは大きい。中高一貫校であり、授業の進度も速いし、課題も多いけれど、この3時間を有効活用すれば何とかなる感じ。

現在、塾を運営していて、自宅ではゲームやYouTube三昧という生徒が非常に多い。寮があることでこれらを断つことができる。「強制的に」規則正しい生活となる。ラ・サールは違うけれど、学校によっては近隣の医大生がチューターとして質問対応をしてくれる寮もあるようだ。寮という環境は、学習面、大学受験において有利な環境と言える。夜の時間帯を寮に「拘束」されるということは塾にも通わない(通えない)。大学受験対策の塾代と比べると、寮費のコストパフォーマンスは非常に良いものなのかも知れない。

親からの自立と人間力

中学生になるとみんなに訪れる反抗期。親との反発を避け、自立を促す仕組みとして寮は画期的である。すべて自分のことは自分でという環境が本人にとって気楽である一方で、何もしなければ何も起きない(例:掃除をしなければキレイにならない)という、今までの家族の存在、特に母のありがたみがよく分かるようになるのが寮生活。大学進学にせよ、就職して初任地に向かうにせよ、ずっと実家からという人生の方が珍しい。どこにいってもその地で受け入れられ、とりあえず何とかやっていけるスキルというか、人間力を培うという意味では、中学校から親元を離れるという選択肢は大アリだ。


男子校

レアになった九州の男子校

首都圏で言えば、男子御三家の開成、麻布、武蔵、神奈川の聖光、栄光など上位難関校に男子校が多い。関西圏でも灘、東大寺学園、甲陽学院などトップ私立校は男子校。九州では、久留米附設、青雲、弘学館といった難関校がかつては男子校であったが共学化した。四国最難関の愛光も男子校から共学化。九州の男子校で現存するのはラ・サール、東福岡自彊館、中村三陽、長崎南山、精道三川台、楠隼。絶滅危惧種の男子校。

(2023.10.13加筆)
東福岡自彊館中が2025年度から女子の受け入れ開始の報道。学校側は「人種、性別、年齢を超え、価値観の異なる人と協働して力を発揮できる人材を育てることが求められている」とした上で「時代の要請に応え、社会貢献するために共学化を決めた」と説明している、とのこと(西日本新聞10/11記事引用)
また鹿児島県立楠隼中についても26年度から共学化に向けて、知事・県議会が調整中。男子校が減っていく。

『新・男子校という選択』 おおたとしまさ著

「ジェンダー」「ダイバーシティー」という言葉がこれだけ飛び交う現代で、あえて「男子校」という選択をしようとするのならば、手に取りたい1冊。内容の多くが中高一貫校で6年を過ごす学び舎選び、男子校か共学かを考えるための材料となる。


中高六年一貫

東大合格ランキング

かつてはトップ10の常連も近年はトップ20くらいが定位置となっているラ・サール。久留米附設と共に九州からこのランキングの上位に食い込むのは立派と言える。全国から生徒が集まっている分、東京志向(要は九州から出ることをいとわないということ)が強いとも言えるし。九州には附設とラ・サールよりも偏差値的上位校が無いので、合格偏差値よりもかなり高いレベルの生徒が多く進学しているというのも影響していると思われる。四谷大塚偏差値70くらいあって灘や開成に受かっても実家が九州なのでラ・サールに進学という生徒。関東や関西だと中堅校で開成や灘を蹴りましたという生徒はほぼいないだろうけど、ラ・サールは確実にいる。そして、その層に引っ張られて高みを目指すという環境ができていると思う。

医学部合格ランキング

医師の子息も多く、教育費を存分にかけられる家庭も多く、遺伝的に理数系に強いみたいなこともあれど。医学部の話、医局の話、専門の話なども高校時代から耳にすることが多かった。とにかく●●大医学部に行きたいというレベルではなく、将来は医師としてこのようなキャリアを描いていて、そこに強い医局はどこで、どの大学医学部に行く、みたいなことを言っている生徒が確かにいた。

実際に大学以降では民間就職と同じで医者の世界でも人脈は重要ということもあり、どこぞの知り合いも誰もいない高校から一人で踏み入れるよりも、ラ・サールから医学部に進学する方が良い面も多くあろうな、と。後述する同窓会の結束とも繋がる話で、プチ同窓会をすると医者は医者の話ばっかりしている。


同窓会の結束

学校のある鹿児島はもちろんのこと、大学や仕事などでOBの多いや東京や福岡にも大きな同窓会があり、規模は小さくなれど名古屋や関西にもOB会が存在する。定期的に総会を開催し、同じ場所で費用などはOBが負担して学校説明会を実施するのが慣わし。部活ごとでもOB会を実施していて、私が所属していたバスケットボール部も東京・福岡・鹿児島で懇親会実施。

学校説明会2016inJR九州ホール

先輩の面倒見は非常に良い。現役生に対して大学を紹介する機会、高校卒業後に各地で歓迎会、就活の時期になれば名だたる大企業の先輩たちが相談に乗ってくれる会が催される。先輩たちからすれば優秀な後輩のスカウティング。ラ・サール卒生と接触できるというのは人事部からすると激アツ案件、人事ならお金出してでも得たい機会。弁護士などの法曹界や、霞が関のキャリア官僚の中にもラ・サールの会がある。また、九州であれば各大学や病院、医局に先輩がおりキャリアを導いてくれたりなどもあるようで。日本中の色々なところ・分野に行ってもラ・サールの先輩を頼ることができるというのも、母校の良いところかな、とも思う。

偏差値お買い得校

ラ・サール中偏差値凋落の考察

当noteで一番読まれている記事。保護者世代が受験生だった頃と入学難易度が変化しています、というお話。

ラ・サールは早慶附属よりオトク校

最近の合格偏差値表を見て、逆にラ・サールは早慶附属中より簡単になってしまったのかと。サンデー毎日を読むと、九州の高校から早慶に受かるのは想像以上に至難の業と分かります。

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