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「WE ARE ONE: A Global Film Festival」の短編映画を観た①

5月29日から始まった、オンラインでの映画祭「WE ARE ONE: A Global Film Festival」の短編映画ばかりを観ています。この映画祭は、カンヌを始め、世界のいくつかの映画祭が連携して開催している、新型コロナウイルスに関するチャリティー映画祭なんだそうです。

それぞれの映画祭から、長編や短編などが出品されていて、こうやってまとめて観る機会もなかなか無いので、短篇だけでも全部観てみようと思ったんです。いまのところ、24本の短編映画を見ました。全部観たいのですが、ライブ配信でしか観れない作品もあるようで、そういう作品は見逃すでしょう。

私が観た順番に、おすすめ作品などをご紹介してきます。どうしても作り手目線になってしまいますが。あ、私はこの映画祭とは1mmも関係しておらず、勝手にやっていますので。

ちなみに、作品は数日で見れなくなるみたいなので、リンクはしません。だから、気になったら、「WE ARE ONE: A Global Film Festival」のYoutubeチャンネルで探して観てみてください。

・L'Heure de L'Ours(カンヌ)
・The Distance Between Us and the Sky(カンヌ)
・White Echo(カンヌ)

カンヌ映画祭の短篇部門の映画って、実はあんまり見ることが出来ないんです。だから、こうやって観られる機会はすごく貴重です。

『L'Heure de L'Ours』は、アニメーション作品です。カンヌ映画祭の短篇部門に選ばれるアニメーション作品は、本当に強い作品が多いという印象があるのですが、この作品も凄く印象的で強い作品でした。手法とメッセージ性の両方が強いと、本当に強い作品になりますね。すごく私好みの作品ですが、一生作れない作品だなと思いました。

『The Distance Between Us and the Sky』は、パルム・ドールを受賞した作品です。短篇だけどパルム・ドールって憧れの賞ですね。運と実力が最高潮に達した作品が受賞するんでしょうね。この作品はざっくりと2つのシチュエーションしかありません。「なんて効率よくパルムドールを受賞したんだ!」と思ってしまいましたが、「ギョッとする冒頭の掴み」「テーマの現代性」「ラストのキレ味」という、短編映画の教科書のような構造でかつ、「観ていてちょっと心配になる登場人物」という、まさに王道の短編映画だと思いました。

・The Light Side(トライベッカ)
・Cru - Raw(トライベッカ)
・No More Wings(トライベッカ)
・Egg(トライベッカ)
・Circus Person(トライベッカ)

トライベッカ映画祭の、この中では、『Cru - Raw』という作品が良かったです。料理人見習いの話ですが、緊張感のある演出でついつい見入ってしまいます。この作品のプロットを文章で書いたら、「ありがちな作品だよね」と言われてしまうんでしょうけど、演出次第でありがちな作品にならない、という見本ですね。私たちはどうしても、プロットの段階での新しさやインパクトを追求しがちなんですけど、散々やり尽くされたプロットでも、演出次第で大きく変わり、十分に新しい作品になるんだと思います。

トライベッカ映画祭のラインナップは、割とベタな感じがしました。これがトライベッカ映画祭のトーンなのか、アメリカ特有のノリなのか分かりませんが、私が好きな温度感では無いですね。あるいは、ステイホーム期間に見る作品だから、エンタメ色の強い作品を選んだのかも知れません。

・Electric Swan(ベネチア)

この『Electric Swan』という作品は良かったですね〜。40分の作品なので、短篇と言うより中編というカテゴリーなんですけど、中編映画ってなかなか観る機会も少ないんです。短編映画は30分以内。長編映画は60分以上。という規定がある映画祭も多いので、30分以上60分未満の中編の行き場が無かったりします。でもベネチア国際映画祭にはオリゾンティ部門という部門があって、中編が選ばれる枠があるんです。『Electric Swan』は、マンションの管理人の男性の話なんですけど、温度の低いコメディと言うのか、コメディと言っては行けないのか、それほど低温の作品なんです。「こういう作品作りたいな〜」と思いました。

・Bird Karma(アヌシー)
・Marooned(アヌシー)
・Bilby(アヌシー)

このアヌシーの3本のアニメーションは、全部ドリームワークスが作っている作品です。作品のサムネイルを見ると、子供向けのベタな作品なんだろうと思ったんですけど、観てみると本当に惹き込まれて、アッという間に観終わってしまう感じです。CGの技術力と、ストーリーのチカラが圧倒的だなと思いました。

・Over(BFI ロンドン)
・Masterpiece(BFI ロンドン)
・Vertical Shapes In a Horizontal Landscape(BFI ロンドン)

BFI ロンドン映画祭の3本も、温度の低い感じの作品で面白かったです。中でも『Over』という作品は、いかにも「私が作りたそうな」作品でした。「どういう事?」から始まって、途中でこの作品の見方の法則が分かってきて、最後、キレ味のあるラストで終わるという。そして、引きのフィックスの多用。良かったです。

・Motorcycle Drive By(トライベッカ)
・TOTO(トライベッカ)
・When I Write It(トライベッカ)

トライベッカ映画祭の作品はどうも、私には向いてない気が改めてしました。英語のネイティブの作品が多いこともあり、何を言ってるのかが分からない事が多いんです。しかも、映画の構造というよりも、その会話が面白い作品なんじゃないかと。英語の作品だと字幕も出ませんので。でも、何言ってるのか分からない時でも、温度感って分かるもんですね。温度感がどうも苦手な感じです。

・Le Coup des larmes(ベネチア)

この作品も淡々とした中に緊張感があって良かったです。でも私の個人的な感覚なんですけど、映画に銃が出てくると途端に冷めちゃうんですよね。「また銃が出てきたよ」と思ってしまいます。この作品も銃が出て来て、その銃の存在によって緊張感を出しています。私もずっと出刃包丁が出ている作品を考えたことがありました。誰かが出刃包丁を持ってるだけで、普通の会話をしていても緊張感が出ますからね。

・La Bataille de San Romano(アヌシー)
・Black Barbie(アヌシー)
・Dew Line(アヌシー)
・Le cortège(アヌシー)

このアヌシーの塊は、ドリームワークスの作品とは違って、作家性の強いアヌシーの作品でした。アニメーションて、似たような手法で作ると、似たような作品になっちゃうから大変だなと思います。その中で、差別化させて、抜きん出るって、これは大変な事です。

・No One Left Behind(ベネチア)

これは31分ほどの作品ですが、淡々と抑えた演出でいい作品でした。淡々としているのに、観終わった後にいろんな事を考えざるを得なくなる作品。こういう作品にも憧れますね。ベネチアの作品は今のところ、好きな温度感の作品が多いです。


今日まででここまで見ました。すみません。内容にまったく触れないレビューになってますが、短篇だから内容に触れると、全部語っちゃう事になるので、触れませんでした。

こうやって映画祭別で観ると、やっぱり明らかにそれぞれの映画祭のトーンてあるんだなと再認識します。そして、映画祭で良いとされているトーンて、共通の何かがありますね。「品」みたいなものなんでしょうかね。荒っぽい作品にも、静かな作品にも、アニメーション作品にも共通する「品」があります。そしてこれは勉強しても分かるものじゃないかも知れない、とも思います。分かる人には分かるし、分からない人には分からないんじゃないかと。それが何なのか分かりたいから作品を作り続けているのかも知れませんが。

この調子で、全作品観たいと思ってますが、私は「挫折するクセ」があるので、これで終わるかも知れませんし、終わらないかも知れません。

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