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『Shell and Joint』のシナリオ

私は『Shell and Joint』で初めて、撮影を前提とした長編映画の脚本を書く事になりました。撮影を前提とした、と書いたのは、長編映画の脚本自体は今までにも2本ぐらい書いた事があるからです。1本はサンダンス・NHK国際映像作家賞の日本側の3本に選ばれた事もありました。

でもそれらは、撮影する事が決まっている訳では無く、上手く行けば撮影までこぎ着けるという脚本でした。事実、その脚本は撮影までこぎ着ける事なく、脚本のまま、いまだに眠っています。

『Shell and Joint』では撮影する事が決まっていました。撮影どころか、完成させる締め切りも決めていました。その時書いたシナリオが、数ヶ月後、あるいは数週間後には撮影されるという状況でした。

短編映画の脚本はかなりの数書いてきたので、時間の感覚がかなり分かります。冒頭からラストまで一気に俯瞰的に見る事が出来ました。15分程度の作品だったら、数時間〜半日程度の出来事を描く方が上手くいくのもわかりました。15分の作品で一週間や一ヶ月を描こうとすると、全然上手く行かないのです。

『Shell and Joint』で長編映画の脚本を書くにあたり、ワードなどのテキストエディターではなく、アドビのイラストレーターを使う事にしました。A4縦のアートボードを50枚ぐらい並べるんです。A4一枚を2分と換算して、シーンをどんどん埋めて行くんです。パッと50枚が並んでいて、シーンの大きな内容が大きな文字で書いてあるので、全体の尺のどのぐらいの位置にどんなシーンが来るのかがひと目で分かりました。イメージが掴みやすくなる様に、サンプルの写真なども貼り付けました。シーンの移動や入れ替えも、ビジュアル的に直感的に出来ました。

そして、大きなシーンが書いてある下に、小さな文字でセリフやト書きなどを書き込んで行きます。そしてまた、50枚が並んでいる状態まで引いて見るんです。それを毎日毎日、仕事に合間に少しずつ繰り返して行きました。気付いた時には、A4のアートボードが80枚ほど並んでいました。一枚を2分換算として80枚で160分。完成した作品は154分になりました。

たぶん、ワードなどのテキストエディターを使っていたら、シナリオは完成しなかったんじゃないかと思います。『Shell and Joint』は起承転結がある物語ではなく、いろんな交差しないシーンが並んでいる作品だからです。極端に言うと、イラストレーターでシナリオを書いたから出来た作風なのかもしれません。

イラストレーターでの脚本書きにかなり慣れてしまったので、この先も長編映画の脚本はイラストレーターで書く事になると思います。

ちなみに自己弁護するようであれですが、ちゃんと縦書きの日本の脚本形式でも脚本は書けますので。

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