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映画祭日記(2020年ロッテルダム国際映画祭)①

ロッテルダム国際映画祭にて、『SHELL and JOINT』の第一回目の上映に行って来ました。

上映前の挨拶をするために少し早く劇場に着いたんですが、上映するシアターの入り口はお客さんでごった返していました。この方々が全部『SHELL and JOINT』を目当てに来ていると思うだけで、すごく感慨深いものがありました。なぜなら、私はずっと短編映画を撮って来たからです。

短編映画の場合、映画祭に行っても、1つのプログラムが5本ぐらいの短編映画で構成されているんです。だから、会場に来たお客さんの目的がどの作品なのかがハッキリ分からないんです。でも、長編映画の場合、その映画を目的に来ていることが確実です。私が長編映画を作りたかった理由の一つに、実はそれもあるんです。自分が作った作品に海外の人達が観に来る、という経験をしたかったんです。

上映前にまず、日本からロッテルダムに来たスタッフ全員がスクリーンの前で紹介されました。私、勝俣さん、伊東さん、岡崎さん、工藤綾乃さん、米澤さん、石井さん、天竺桂さんの8人です。スクリーンの前から会場を見たのですが、完全に満席でした。ビッシリと埋まった客席が本当に嬉しかったです。平日の14時15分の回だから、埋まらない可能性があったと映画祭の方に言われましたが、本当に良かったです。明日、あさっての上映回も、今のところ満席です。

一番前の席が空いてるから座って下さいと言われたのですが、お客さんの反応を見たかったので、一番後ろから立って見ました。それにしても、上映そのもののクオリティがものすごく高かったです。映像はクリアにシャープに最適な色が出ていますし、5.1chの音もキレイに効果的に出ていました。

上映中、お客さんたちは割と微動だにせずに見ていました。『SHELL and JOINT』は、ワンカット長回しの連続なので、飽きてしまわないか本当にビクビクしながら見ていましたが、みなさんクスクス笑いながら最後まで見てくれました。途中で3人ぐらいの方が出ていきましたが、やっぱり観ていた人が途中で出ていくとドキッとしますね。「つまらなかったのかな?」とか「想定していたものと違ったのか?」とか思ってしまいます。

そして、劇中で一番ウケたのが、勝俣Pがどアップで出てくるところでした。本当に会場がドッと笑いました。勝俣さん、美味しいところ持っていくな〜。

そして、エンドクレジットになるとゾロゾロとお客さんが出て行きました。いやいや、エンドクレジットにもかなり強い意味を込めてるんですけどね。結局、1/3ぐらいの人が出て行っちゃった気がします。

でも、予想以上の数の方々がQ&Aまで残ってくれました。観客からの一番最初の質問が音楽についてでした。そういえばモスクワ国際映画祭の時も音楽の質問をされました。さすが世界の渡邊崇ですね。質問の内容は「企画をしている段階から音楽を考えているのか、完成してから音楽を考えているのか?」という質問でした。たぶん「なんでこんな音楽が付けられるんだ?」という事から来る質問なんだと思います。私は「映像の段階で100%作ることはせず、60%ぐらいの完成度にして、音楽や音響のために40%のスペースを残して映像を作ります。」と答えました。これは短編映画を作ってる時からずっとそうです。

あと「映画のフォーマットが普通ではなく、リスクを取って作ってますね。」という質問もありました。私は「リスクを取って作った作品が、このロッテルダム映画祭に選ばれてビックリすると同時にすごく嬉しかったです。」と答えましたが、私の昔からの持論なんですが、リスクを取らないと大きな映画祭には通らない気がしています。特に監督が無名の場合は。映画祭は何千本の作品の中から、他に替えの効かない作品を選びますから。技術的にはしっかり作られているけれども、観たことのある替えの効く作品は選ばれません。ハイリスクハイリターンだと思います。もちろん私はリスクを冒したばっかりに映画祭に選ばれなかった作品もたくさん作ってきています。

『SHELL and JOINT』は、男女平等以上に女性を優位に描いている作品なのですが、ロッテルダムのお客さんにもそれは伝わったようでした。それを敏感に感じ取ったお客さんから鋭い質問をもらってハッとしました。今度のQ&Aでは、それを自分の答えとして使わせてもらおうと思いました。

Q&Aのモデレーターはジュリアンさんで、普通に日本語が話せる方で、メールでのやりとりも普通の日本語でやり取りしていました。ジュリアンさんは、ロカルノ国際映画祭でもプログラマーをやっているので、今度長編を作ったらロカルノで上映してくださいと頼んでおきました。ロカルノも素晴らしい映画祭なので、長編映画が上映されたら最高だと思います。願わくば、ピアッツァグランデの8000人が観れるスクリーンで。

こうして一回目の上映は大成功に終わりました。ロッテルダムに来て、本当に心の底から良かったなと思いました。

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