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『Shell and Joint』の撮影

今回は撮影機材を中心にやや専門的な話を書いてみます。

『Shell and Joint』では自分で撮影までやりました。

その理由はものすごく単純な話なのですが、20日や30日もの撮影日数、カメラマンに来てもらうお金が無かったのが最大の理由なのと、フットワーク軽く、極端に言うと、明日撮影しようと思った時にすぐ出来る体制にしたからです。

自分で撮影するにあたり、PanasonicのGH5Sをベースにして、レンズやリグ、モニタ、カメラバック、NDフィルタなど、一式を揃えました。なかなかの出費にはなりますが、機材を買う事は喜びこそあれ、苦はありません。

そして大きな決断として、レンズ一本ですべてを撮りきる決心をしました。ズームレンズ一本ではありません。単玉一本です。

映画のコンセプトとして、アップ無しで引きでワンシーンワンカットで撮ると決めていたので、レンズはLEICA DG SUMMILUX 12mm/F1.4を買いました。35mm換算で24mmなので、かなりワイドレンズなのですが、開放でF1.4あるのが面白いなと思いました。このレンズは期待通りに、かなり切れ味のあるレンズで選択に間違いは無かったです。

機材を買い、カメラの使い方や特性をマスターする前に撮影に突入しました。いきなり、かなり暗い場所での撮影でした。GH5SはデュアルISOと言って、暗部にかなり強いカメラという事で購入しました。

調子に乗って、ISO6400で撮影を始めました。理想的にはすべてのカットをパンフォーカスにしたく、必要以上に絞ってしまったため、感度を上げなければならなかったのです。確かF11以上まで絞っていたかと思います。

ポスプロでカラーグレーディングする段階になり、絞り過ぎていた事を悔やみました。やはりそこまで絞って感度を上げると、ノイズが乗るからです。せっかくF1.4もあるレンズを買ったのに、本当に悔やみました。DaVinci Resolve 15のノイズキャンセリングには本当に助けられましたが。

撮影を進めて行く段階で、Field Toolsというアプリを発見しました。センサーのサイズと、レンズのミリ数と、被写体までの距離を入力すると、いくつまで絞ればパンフォーカスになるか分かるアプリです。撮影の途中からそのアプリを使い、必要以上に絞る事をしなくなりました。撮影の当初、F11まで絞ってISO6400で撮っていたのは、実際にはISO1600のF8ぐらいで撮れたんじゃないかと分かりました。重ね重ね書きますが、本当にそこは悔やんでます。

撮影も中盤になってくると絞りのイメージが掴めてきて、それほど絞らなくなりました。カメラや絞りの勉強をしながら長編映画を撮るというのは、明らかに無謀なのですが、まるで全て分かっているかのように撮影を進めました。終わった今だから言えますが。

それにしても、映画のカメラ機材としてはあり得ないほどコンパクトだったと思います。レンズを一本にした事が最大の理由かと思います。

外部モニタとして、Blackmagic Video Assist 4Kを買いましたが、カメラポジションが厳しい場所だけに持って行き、ロケには基本的には持って行きませんでした。外部モニタ用にVマウントバッテリーなどを持って行くと、機材が増えてしまうからです。

機材が増えると何が困るかと言うと、私が持たなければならなくなって困るんです。機材が重くて撮影がイヤになるんです。撮影を自分でやると言う事は、撮影助手も付けないという事ですので。

アングルを決めるのもフォーカスを決めるのも、ほとんどカメラの小さなファインダーでやりました。左目をつむって、右目で凝視するんです。撮影を始めた当初、顔の筋肉がおかしくなりました。左目をぎゅっとつむり続ける事は普段ありませんので。でもカメラのファインダーで全てをやると、どんなに明るい場所でもしっかりフォーカスを見る事が出来ました。その代わり、私以外の誰も何も見る事は出来ませんでしたが。

このような撮影体制で全部のシーンを撮りきりました。監督をしながら撮影をやると、体がボロボロになるんだなと分かりました。ボロボロになるというか、疲労が半端無いという感じでしょうか。まあ、今思えばそんな事は当たり前の話なんですが。

一方で、納得いかないアングルが1シーンもありません。カメラをミリ単位で動かしてギチギチにアングルを決めたので、本当に100%納得のいくアングルです。そんな風にしてアングルを決めたシーンが連続するのは、観客からしたら辛いだろうなとは思いましたが、そんな事は知らないもんねとばかりに、自分のやりたい様にやりました。

まさに「インディペンデント映画」だから出来たんだと思います。


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