見出し画像

【映像の仕事】シナハン・ロケハン・ロケ

プロフィールに映画監督とか演出家とか書いてるくせに、そっち方面の投稿を全然してない自覚がありまして、たまにはそっち方面の事も書いてみようと思います。

なぜそっち方面の事を書かないかと言いますと、普段自分がやっている仕事が取り立てて特殊に見えないからでしょうね。当たり前のようにやっていることなので、書いても面白くないだろうと思ってしまうんです。

しかし!

それは自分にとって当たり前なだけで、外から見たら特殊な仕事に見えてると思いますので、たまにはそっち方面の事も書いてみます。

「シナハン・ロケハン・ロケ」というタイトルのまずはシナハンについて書いてみたいと思います。シナハンというのは多分「シナリオハンティング」の略語だと思われます。ロケハンから派生して出来た言葉なんじゃないでしょうか。

そもそもロケハンは「ロケーションハンティング」の略語みたいですが、それも日本独自の造語だそうです。英語だと「ロケーションスカウティング」と言うそうです。略してロケスカだと言いづらいですね。

そのシナハンですが、シナハンというのは「さてと、どうすっかね?」という段階のものなんです。例えば、北海道を舞台にした映画を作ってくださいとか、佐渡ヶ島の観光ビデオを作ってくださいとか、仕事が動き出した時に、何を作るか、どう作るか、みたいなのを考えるために行く旅行ですね。

あえて旅行と書きましたが、今まで私が行って来たシナハンで、旅行じゃなかったシナハンはありません。その土地の人にいろいろな名所に連れて行ってもらい、美味しい名物を食べさせてもらい、夜は美味しい地酒を頂くんです。バカヤローな仕事ですよね。いや、私がやっている仕事がそういうお気楽な仕事ばかりなので、シナハンが旅行化してしまうのかも知れませんが。

例えば、網走刑務所にいる死刑囚とその土地に住む人々についての映画やドキュメンタリーの仕事だったらそんなシナハンにはなりませんから。もっと深刻でしょうね。深刻というか真面目というか。

そうやってその土地やテーマについての概要を吸収するのがシナハンです。シナハンから帰ると、それを元に企画を立てたり、シナリオを書いたり、コンテを書いたりします。

シナリオやコンテが完成すると、それを元にロケハンに行きます。ロケハンというのは、シナリオやコンテに書かれている場所を探したり、カメラアングルを確認したりする作業です。

例えば、「主人公が遠くから橋を渡ってくる」と書いてあったら、ある程度長い橋で遠くから渡ってくる様に見えるアングルで撮れる場所があるかどうかを探すんです。

橋の感じもいいし撮影場所の条件もいいんだけど、橋の後ろに思いっきり幸楽苑の看板が見える場所なんかだとダメなんです。「中華そば290円」と大きく書かれた看板があったらダメなんです。幸楽苑が悪い訳ではなくて、見てる人が幸楽苑を気にしてしまうからです。もしかしたら主人公が橋から飛び込んでしまうんじゃないかという緊迫したシーンなのに、橋の後ろに幸楽苑の看板が大きく映ってたとします。そうすると「あ、帰りに幸楽苑で餃子ダブル半ラー定食セットを食べて帰ろう。」などと思ってしまうんです。グーッと物語の世界に入っていたのに、突然現実に戻らされてしまうんです。そういうのを避けるために、出来るだけ物語の邪魔をしないロケ地を探すんです。

それがロケハンなので、1日にいくつもの橋を見て回ります。そして最適なロケ地が見つかったら、カメラマンがその場で実際に撮るであろうアングルを決めることもあります。アングルをある程度決めてしまえば、撮影日に試行錯誤する時間が要らなくなりますから。

私はこう見えてロケハンが好きではありません。ロケ地って見たら0.001秒で良いか悪いか分かるんです。そしてロケハンの日はほぼ移動なんです。本当に無駄なことをしているなと思ってしまうんです。無駄じゃないんですけどね。絶対に必要な工程なんですが、面白くないんです。

一番キツいのはハウススタジオのロケハンです。家族がいるリビングとか子供部屋とかのロケハンはもう地獄ですね。地獄っていうのも酷い言い方ですけど、20年も30年も映像の仕事をしていると、ファミリー設定のハウススタジオなんて大体回っちゃうんです。そして「またここに来ちゃったよ…」と思うんです。「ここだったら知ってたよ。撮影したことあったよ。2時間かけてここに来た時間を返して欲しい。」と思う訳ですが、それに気が付かない自分の自業自得なんです。ハウススタジオのロケハンって、1日に4つも5つも回るんですよ。

そしてロケです。ロケというのは撮影の事です。シナハン、ロケハンを経てロケになります。私は仕事を始めたばかりの頃、ロケは知ってましたがロケハンは知りませんでした。関西のおばちゃんがアメの事をアメちゃんというのと同じ様に、ロケのことを京都風にロケハンと言ってると思ってましたが違いましたね。

しかしまあ、私達にとってはあまりにも当たり前の日常を書いただけなんですが、こんなのを読んで面白いんですかね?

写真はシナハンの時の写真です。フザケてますね。

サポートして頂けたら、更新頻度が上がる気がしておりますが、読んで頂けるだけで嬉しいです!