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ドSが帰ってくる

そうこうしているうちに、今年も半年が過ぎてしまいました。そして、そうこうしているうちに、今年も終わってしまうんでしょう。

去年は本当に非常事態だったので、「何もしなかった」と言っても許されるのですが、今年は許されないのです。今年の後半は本当に許されないのです。何もしないのはコロナのせいではなく、自分のせいなのです。

そしてもうすぐ、ワクチンによってコロナ禍も終わり、本当の自分がむき出しにされるのです。何もしてないことを、コロナのせいに出来ないのです。何でも自由に出来る世界がやって来てしまうのです。自分の選択で生きていける状態になるのです。そんな恐ろしい世界が、もうすぐやって来るのです。

いっそのこと、コロナ禍が一生続いて欲しいと思う人も出てくることでしょう。だって、すべてをコロナのせいに出来るんですから。自分がむき出しにされることがありませんから。

しかし、そんな日が終わるのもすぐそこです。日本だったら年内にはやって来るでしょう。「もっと感染者増えろ!」「緊急事態宣言出ろ!」と願っても、科学のチカラで圧倒的な平常時が来てしまうのです。恐ろしい。

本当にどれだけの事を「いまはコロナだから…」と言ってやらなかった事か。あれもあれも、あれもあれも、コロナのせいでやりませんでしたよ。

「いまは緊急事態だから」と言えば、もう一人のドSの自分も説得出来ていたんです。あのドSも「今だけだぞ」と言って許してくれていました。あのドSも、今は鉄パイプを持っていません。鉄パイプは傘立ての横に静かに置かれています。鉄パイプの中には、ゴケグモの仲間が巣を作って平和に暮らしてます。そんな日々ももうすぐ終わるのです。

そして、あのドSももうすぐ気づいてしまうでしょう。ヒマだからと言って『銀魂』を4:3の画角で作られた初回から一気見しているあのドSも、高齢者のワクチン接種率の高さに気がついてしまうでしょう。そしてまた、あのドSに鉄パイプで脅される日々がやってくるのです。鉄パイプを握りしめて、「やれ」と言って睨むあのドSが帰ってくるのです。もしあのドSの鉄パイプが振り下ろされたら、私の頭蓋骨は粉砕されるでしょう。ヒグマの3000倍の腕力を持っていると言われています。恐ろしい。

仕方がないので、そろそろ準備を始めようと思います。あれもあれも、あれもあれも、手を付けなければならないのです。またドSとの二人三脚が始まるのです。

もし、ドSが私よりも早く死んだら、私には永遠の平和が訪れるのかも知れません。「あれをやれ」「これをやれ」と言われないからです。鉄パイプで頭蓋骨を粉砕される恐怖もなくなるからです。ヒグマの3000倍の腕力に恐れる日々も終わるのです。私はドSから解放されて、真面目に働かなくても良くなるでしょう。映画を作ったり、映画を映画祭に出したりすることもしなくて良くなるでしょう。1年後の映画祭の締切から逆算して、その中で可能な企画を、頭をフル回転させて考えることもなくなるでしょう。誰かが作った作品を見ては、「全然ダメだねwww」と言うだけの、平和な日々が訪れるに違いありません。

しかし残念なことに、ドSが死ぬ時は私も死ぬ時なんです。ドSだけ死んでくれないのです。だから私はまたドSと共に生きるのです。

ドSに真っ先に聞かれるのは「長編映画のシナリオ書けたか?」に違いありません。去年、私はドSに言ったんです。「今はコロナだから、生きていくことを最優先させてください。生活費にもならない作品制作をしている場合じゃないんです。家族を食わせていかなければならないんです。いまは映画祭とかそういう事に構ってられないんです。仕事だけをさせてください。」と。

ドSも「お、おう。オマエがそこまで言うならいいよ。実際にコロナ大変だしな。仕事頑張れよ。」と言ってくれました。そしてこうも言いました。「とは言えオマエ、仕事だけしてたらオマエの未来無いからな。映画の脚本、ちょっとずつ進めろよ。」と。私は口グセでもある「まあまあ。まあまあ。まあまあ。」と言ってお茶を濁していたのです。

コロナ禍が終わって最初のドSとの面接では、そこを真っ先に聞かれるに違いありません。もちろん、映画の脚本など進めていません。ドSに何と言ったらいいのか。

まず、このコロナ禍で家族を露頭に迷わせることが無かったという結果の報告をして、コロナ禍の期間に関しては許してもらおうと思います。ドSも腕力はヒグマの3000倍ありますが、意外と論理的なんです。しっかりと説明すれば分かってくれるはずです。頭蓋骨を粉砕されることは無いでしょう。

問題はアフターコロナの計画ですね。面接でドSが一番気にしているのもそこに違いありません。面接までに自分の中でまとめておかなければなりません。ドSのパソコンにはパワポが入ってないので、PDFで作らなければなりません。いや、そんな事はどうでもいいんです。

そろそろ本気でコロナ後の計画を立て、覚悟を決めなければならないのです。

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