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CM制作会社が「初めて」映画を作った話

『SHELL and JOINT』は、4つの出資を集めて作られました。

1つ目がプロデューサーの勝俣さんの会社の「DASH」。2つ目はプロデューサーの伊東さんの会社の「クロマリズム」。3つ目は共同プロデューサーの岡崎さんの会社の「TEEMA」。4つ目は私が個人的に出資しています。

今回のnoteでは、CM制作会社のDASHが、どの様に『SHELL and JOINT』に関わったのか、あるいはどんな気持ちで取り組んだのかを、プロデューサーの勝俣さんと、ラインプロデューサーの石井さんと、制作部の天竺桂さんに聞く形でお送りします。

その前に、私と勝俣さん石井さんの関係ですが、「しまじろうのわお!」という番組の立ち上げから一緒に働き始め、もうすぐ10年ぐらい一緒に働いています。番組が始まると同時に、私もDASHに常駐している様な感じですので、普通の仕事の関係というよりも「同じ釜の飯食って来た仲間たち」という言い方に近い感じかと思います。あるいは親戚みたいな感じと言いますか。天竺桂さんともかなり長い事、しまじろうの教材の仕事を一緒にして来ていますので、3人のキャラはだいたい分かっています。という前提でのインタビューになります。

(上の写真の左から:石井さん・私・勝俣さん)

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平林:私が勝俣さんに何か相談すると、勝俣さんはいつでも「やりましょう!」と言ってくれますが、それは勝俣さんの中でポリシーがあるのか、あるいは特に考えていないのか、かなり腹をくくっているのか、正直なところ、どんな感じなんですか?

勝俣:私が、平林さんが言うことを、全て肯定していると思ったら大間違いですねw。相談を受けた時に興味ないことだったら、既読スルーしていると思います。「嫌です。それはやりたくありません。」とは決して言いませんが、ふんわりと無視していること、結構あると思います。

平林:あるあるあるあるあるある。おいっ!

勝俣:そして、腹もくくらず、直感で「やりましょう!」と言っています。特に考えていないといえば、そう言うことなのかもしれません。私は、周りの人が自分をベストな場所に導いてくれると思っているところがありまして…。出来る限り「流れ」に乗るように心がけています。

平林:勝俣さんはDASHの中でも、割と発言権を持っている気がするのですが、社員として社長や社員を納得させながら進めなければならないのは、やっぱり大変ですよね?それでもこれだけの事をやらせてくれる会社って、すごいと思いますが。その辺どうですか?

勝俣:やはり社長の小暮さんの気合いと覚悟がすごいなと思います。うちは小さな会社ですが、それでも社員と社員の家族を養うって相当な覚悟が無いと出来ないなぁと。そんな中でもやりたいことを提案すると、基本的にはすぐに動いてくれます。このスピード感がDASHなんだと思います。

平林:小暮さんのフットワークの軽さはもの凄いですからね。あとアクセルの踏み込み方が凄い気がします。行くときは一気に行きますからね。だからDASHなんですね!

勝俣:あと、「発言する」って、その責任と、何としてでも実現しないとならないというプレッシャーが生まれるのですが、やはりそういうのが無いと、上手くいかないですよね。みんなが納得するのは結果が出ること。過程が大事とか言ってられないので、私は常に全力ですw

平林:勝俣さんも小暮イズムで、ブレーキ踏まないですもんねw

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平林:今回の『SHELL and JOINT』では、DASHの中での制作スタッフは立候補制でした。石井さんは番組の仕事でも日々忙しいと思いますけど、何で立候補したんですか?

石井:最初、DASHの掲示板に貼ってあった映画の募集を見て、平林さんの作品で、公募してもらえるなら、ノーギャラでも手伝いたいと思いましたが、私が映画制作経験がないからお役に立てる自信ないし、社員じゃないし、他にやる人いるだろうと立候補するのを躊躇してました。

平林:ほほ〜。意外ですね。

石井:しばらくどうしようかなと悶々としたまま締切日が近づいてきて、募集締切日に、たまたま勝俣さんと一緒に打ち合わせに行ったんです。帰りに状況を聞いたら、なんと!一人しか集まっていないと聞いてビックリしました。勝俣さんに「募集にフリーでもいいって書いたの、石井さんのことだよ!」と言われまして、そしたら迷いがなくなって、今日、このタイミングでたまたま勝俣さんと一緒に打ち合わせへ行き、そこでたまたまこの話をして集まってないというなら、これは私がやるしかない!とスイッチ入りました。

平林:そういう、運命みたいなのって、割とデカいですよね。

石井:でも、その場で勝俣さんにやります!とは言えず、もう一回、家に帰って冷静に考えて立候補のメールを送りました。たまたま番組も落ち着いてる時期だったし、なんとか掛け持ちできる気もしましたし、私の性格的に、大変な道に足を踏み入れてしまう性分なので。

平林:石井さんからは、自分から積極的に「祭」に参加しないと、楽しそうにやってる「祭」を周りで見てるだけの人になっちゃう、みたいな考え方を感じるんですけど、今回もそういうのがあったんですか?

石井:普通に、イベントや祭りは大好きです。でも、誰でも参加しやすい祭りなら気軽に参加しますが、参加資格があったり、人数とか限定されるような祭りだと、やはりちょっと躊躇して、周りで楽しそうだなぁと見ていることもよくあります。

平林:へ〜意外です。

石井:今回の映画も、普段の私なら後者になりそうでしたが、何か運命を感じて、ちょっと大袈裟ですが勇気を振り絞って立候補しました。

平林:運命ってありますよね〜。流れ、とか。

石井:この映画は、最初は「祭り」という感覚ではなく、新しい映画作りに仕事として参加するという感覚でした。立候補をしたものの、自分がちゃんとついていけるか、役に立てるか、最初の頃は不安もありました。でも、みんなで新しいことをゼロから立ち上げるのは、大変だけどワクワクするので、みんなで試行錯誤しながら、あくまでも仕事として楽しくやっていました。

平林:石井さんから不安ってあんまり感じたこと無いですけど、あるんですね。でも、割と祭りっぽい気はしましたけど。

石井:自分の中で「祭り」に変わったのは、最後のフィンランドロケからだと思います。自費でもいいから、フィンランドロケに行きたい!って名乗りをあげたあたりから、この祭りは参加しないと後悔すると思い、他の仕事のスケジュールを調整して参加しました。結果的に、ロケといっても大変な撮影ではなく、ほぼフィンランド旅行でした。終始楽しく幸せな数日間で、参加して本当に良かったです。

平林:楽しくないといい作品作れませんから。

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平林:石井さんも僕と一緒で、DASHで仕事を始めて10年ぐらいになりますけど、DASHの良いところと言いますか、特徴ってどんなところだと思います?

石井:社員ではないのに10年近くも社員並みに毎日出社して、こんなに長く続くのは、私の中では奇跡です!なぜこんなに続いているのかというと、私が担当している番組が長く続いているのもありますが、簡単に言うと、いろんな意味でDASHの居心地がいいからですね。

平林:それは大いにありますね。

石井:私は今まで恐らく10社以上の会社を転々としていました。その経験を踏まえ、DASHを側から見て、いいところをあげると、まず、CM、インフォマ、MV、映画、Web動画、子供番組や教材の映像など、幅広い映像コンテンツを沢山作ってます。そして、予算が多いものばかりでなく、予算が少なくても、その先に仕事の繋がりがあったり、会社の経歴としてやった方がいいものはやる。そして、社長を始め、プロデューサーなど、上の人と話しやすく、相談もしやすい。福利厚生も他の会社に比べたら、とても恵まれている。上の4つは、側から見ていいと思うところですが、私が居心地よく長く働ける1番のポイントは、誠実な人が多いところだと思います。仕事に対して真摯に向き合っている人が多い。

平林:それも大いにありますね。広告業界にありがちな、チャラチャラした感じも無いですし、「来た球を打つ」に徹していると言いますか。かと言って、媚びている訳でも無いですし。

石井:仕事の内容やお金以前に、どんな仕事でも、お金をいただいて引き受けた以上は、真面目にちゃんとやって、できる限りいい作品を作りたいです。これが当たり前のようで、意外とそうじゃないことも多いのです。どんなにギャラがいい仕事だとしても、信頼できない、いい加減な人と一緒にやることになるなら、私はその仕事は断ると思います。ダッシュにはそういう不誠実な人がいないから、気持ちよく、長く、快適に、働けているんだと思います。

平林:もの凄くわかります!

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平林:僕もそうですけど、勝俣さんも初めて長編映画を作ってみて、どういう発見がありましたか?

勝俣:作っている段階では、長編映画ということをあまり意識していなかったですね。いつもの平林さんのスタイル以上にシンプルに(予算の都合でw)作り上げたくらいの感覚でした。アンソロジームービーなので、時系列や感情の変化などがないため、そこは作る過程からすると楽だったかと思います。それよりも、とにかく長編ということを身にしみて感じたのは、作った後ですね。

平林:作ったあと、何が身にしみました?

勝俣:映画(商品)が完成したことに舞い上がってしまい、その後、お客さんに届けると言う一番大事な部分について、何も準備をしていませんでした。

平林:そこは作っている時から全く気にしてませんでしたからね。

勝俣:映画は作ったら簡単に配給がついて、映画館もちょっとお願いしたら開けてもらえて、普通に上映されるものなのかと勘違いしていました。そんなに世の中、甘くないですね。ましてや、制作費に全部お金を注ぎ込んでしまい、宣伝活動に使えるお金はゼロ…。これだけ広告の仕事しているにも関わらず、ほんと、アホですね…。

平林:ホントに。我々なんにも知らなかったですから…

勝俣:色々調べれば調べるほど、我々みたいなど素人が普通に上映したりすることの難しさを感じました。普通のルートで行ったら一生追いつけない。もう独自の方法で攻めるしかないなと覚悟を決めましたね。

平林:覚悟決めましたよね。かなり。現実を知ってしまい。

勝俣:はい。だから、私たちが生み出したコンテンツを、どうやって世の中に広めたり、上映したり、ビジネスに活かしたりするのかを考えなければならず、ここからの道のりは今までの経験とは全く違い、本当に新しい挑戦でしたね。

平林:よく劇場公開できましたよね。

勝俣:日本での公開、そして海外での公開を目指して、あらゆる手を尽くして来た中で、日本では、ギグリーボックスの宮崎さんが、我々に手を差し伸べてくださり、配給を担当してくれることになりました。こんな長い映画(154分)どこも映画館はかけたがらないから、無理だと言われ続けたのに、シネマートさんでの上映を決めて来てくれたんです。宮崎さんとシネマートさんには感謝しかありません。

平林:噂には聞いてましたが、宮崎さん、本当に凄い人だと思いました。

勝俣:それで、宣伝費もないので、自分たちでポスターを作り、チラシを作り、プレスリリースを作り、いろんな企業に体当たりして、たくさんのメディアに宣伝して欲しいと言うメールを書き、SNSを活用し、いろんな方のご協力のもと、なんとかやって来れた感じです。

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平林:石井さんは『SHELL and JOINT』を実際に作ってみてどうでした?

石井:メインスタッフとして企画段階から参加して映画を作るのは初めての経験でした。撮影の段階では、映画といっても普段の番組を作るときと段取りは大きく変わらず、シナリオができて、出演者やロケ地を決め、小道具や衣装を準備して、香盤を作って撮影にいく、という感じで、いつもより長尺の作品を作っているという感覚でした。

平林:確かに。行程は番組とそれほど変わりませんしね。

石井:そして、完成したら、このプロジェクトは終わるものだと思ってたんですけど、作ったら終わりではなく、完成からが第2幕のスタートでした。まず、モスクワの映画祭で上映が決まり、初めて映画祭に参加しました。選ばれること自体凄いことで、海外の人の反応も直に見れて感動しました。そこからしばらく映画祭の話もなく、日本での上映も出来たらいいなぁと夢物語のように思っていました。

平林:モスクワからの沈黙、長かったですね。

石井:それが昨年の秋頃から、ロッテルダム映画祭が決まり、ヨーテボリやスラムダンスと次々上映が決まり、そして日本での上映まで決まり、また次の祭りが始まりました。そして、ひょんなことからヨーテボリ映画祭でお客さんの前で英語で挨拶するという貴重な経験をさせてもらい、一言挨拶するだけなのにめちゃくちゃ緊張しましたが、とてもいい思い出になりました。

平林:よくやりましたねw

石井:そこからがノンストップで、映画を売るにはどうしたらいいか、劇場公開に向けて何をすればいいか、あれこれ情報収集したり、公開に向けて様々な宣伝活動を行ったり、大忙しの中、やっと先日、日本での公開が実現しました!

平林:はい!

石井:私は映像制作の仕事を長くやっていますが、今まで映画制作に興味はあっても、やる機会がありませんでした。それがこの歳になってそのチャンスが与えられ、こんな新しい経験を次々とすることになり、人生何があるかわからないものです。結果、いつも以上に忙しくなりましたが、立候補してやってよかったです!もし、次のチャンスがあった時、少しでも映画制作に興味がある人は手を挙げてみてください。人生にチャンスはそうそうないので、勇気を出して一歩踏み出してみて欲しいです。

平林:キャリアップにもなりますが、それ以上に、人生がより豊かになる気がしますよね。

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平林:天竺桂さんは、『SHELL and JOINT』に参加してみてどうでした?

天竺桂:私は立候補したところから始まったんですが、この映画に携わっている方は、みんな良い作品を作りたいとか、平林さんの頭にあることを実現したいとか、他にもいろんな思いがあると思います。でも、お金ではないところで動いているので、そういった方々と一緒にお仕事できたというのは、スタッフ間の打合せも含め、とても濃密な時間を過ごさせてもらったと思います。

平林:出演者の方々とは、短かかったですけど、ホントに濃い時間でしたね。

天竺桂:はい。出演者の方と、カメノテの炊き込みご飯を試作して味見したりとか、仕事なんだけど、人との関わりという意味では、今まで経験したことがない、もう二度と無いんじゃないかっていう、本当に濃密な時間だったと思います。

平林:映画制作の経験者として、会社の後輩に伝えたいことは何がありますか?

天竺桂:後輩に伝えたいこととしては、今回は長編映画ですけど、やったことがないことって、大変そう〜〜とか、先にネガティブな感情が起こりがちだと思いますが、やってみると得るものがすごく大きいので、少しでも興味があれば、まずやってみたほうが良いと言いたいです。有りがちな言葉ですけど、経験したからこそ言えるので、声を大にして言いたいです。

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平林:DASHでは、長編映画の製作は初めてでしたが、勝俣さん個人としてと、DASHという会社として、得たものは何でした?そして、それを今後、どう生かして行けそうでしょうか?

勝俣:DASHとしても、私個人としても、非常に大きな一歩を踏み出せたと感じてます。映像や広告をやっている人なら誰でも一度は憧れる映画制作。今、CM制作会社もたくさん映画を作っている時代ですが、企画の立ち上げから上映、セールスまで全てを中心となってやっている会社やプロデューサーはなかなかいないんじゃないかと思います。それを実行できたこと、また制作後の上映に向けて、ど素人ながら果敢に挑んでいけたことはとても大きな自信にもつながりました。

平林:本当に「どういう映画を作りましょうか?」というところから始まって、制作して、宣伝して、公開して、一通りやりましたもんね。

勝俣:はい。そして、自分たちで生み出したコンテンツには、とてつもない愛情が注がれることがわかりました。お金も1円も無駄にしたくないですし…。これをやった事で、広告でいうところの、クライアントさんの気持ちがものすごく理解できましたね。

平林:ひとつひとつに、何でそんなにお金かかるの?って思うようになりましたからね。

勝俣:それからちょっとしたことなんですが、SNSに関しても、プレキャンの偉大さ(笑)、数字を持っているインフルエンサーがどれだけ凄いか、など全て自分たちでやったからこそ肌で感じることができました。

平林:それはありますね〜

勝俣:なんだか振り返りを今回させていただきましたが、コンテンツを持っていると、終わりがありません。世界的にも大変なこの時期に上映となり、また、途中で上映をストップせざるを得ない、なんともモヤっとした状況になってしまいましたが、落ち着いたら、また日本全国で上映したいですし、海外にもガンガン売り込みしていきたいと思っています。

平林:ですね!

勝俣:作ったその先の広がりで、DASHも私も平林さんもみんな一緒に羽ばたけたらと思っています。ここは監督ではなく、私や他のプロデューサーの見せ場なので、なんとしてでも、少しでも、と、気合いが入ってしまいます。私たちは、まだ始まってもいないのかもしれませんw

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