星のように
こんにちは。新作の紹介です。
一番下に本作の詳細情報とご覧いただける展示の情報を記しています。
少女を中心に色とりどりの花が舞う。太陽を中心に惑星が公転するように。
少女から生じた花々の開花はそれぞれまた新たな命を生み出す。こうして世界が創られていく。
世界のはじまり
湛とは彼岸と此岸の境界であり、水が湧き出るように相互の世界の入り口をつなぐ清らかな流れ通う場所です。そこに咲く青々とした紫陽花。花と葉の両方の属性を持つこの花はまさにあらゆる世界の境界を示しています。
この花の上に寝そべる少女も同じように世界を仲介する巫女のような存在です。彼女が手で作る蕾からは様々な花が生み出されています。
花々は実をつけ種子をまきさらにこの世界は生命で満たされていきます。この睡蓮の上に広がる空間はそんな生命で潤い満ちる世界を象徴しています。この蓮の沼も紫陽花の少女から生まれました。梅雨、雨の多い時期に咲く花─紫陽花─。しとしとと降る雨に促されるように咲く花、しかし反対にこの世界の紫陽花は世界に雨を降らせるように促します。この雨によって地表は水で溢れ、睡蓮も生じたのです。
舞う蝶々も少女の性質を表しています。幼虫から蛹へ、蛹から成虫へと完全変態する蝶。とくに蛹はこの世界の境界性である現実ではありえない混沌とした一見すると無秩序な有り様を示しています。あるいは蛹はそのなかに誕生という膨大なエネルギーを蓄えたものです。まさにこの世界も新たな何かが誕生するエネルギーに満ちているのです。
宇宙のように
この作品の有り様は太陽を中心に惑星が公転しているかのような印象を与えます。太陽である青い紫陽花の少女を中心として惑星である色とりどりの花が回っているのです。まさに宇宙が誕生し広がっていくイメージです。暗く謎の多い宇宙にぽつんと突如発生した少女。その少女が寂しくないようにどんどん世界は賑やかになっていきます。この世界のどこかの花にはまるで地球における人間のように生活している生き物もいるかも知れません。花のひとつひとつには新たな世界と物語が紡がれているのです。
作品のイメージについて
これまでは比較的同系統の色味によって作品の世界を構成してきました。しかし、本作は珍しくいろいろな色を使用しています。正直なところ大変でした。ずっと同じ色を描いているのであればパターンはあまりありません。しかし、色数が増えるとその分パターンが増え、絵の具による性質の違いも相まって混色からして苦労し、理想の色ができなかったりします。その上色のまじり方も色によって違ったり、筆運びも違ってくるわけです。これが想像以上に重労働でした(笑)ただし、考えてみれば、このように描けるようになったのも、めげずに描き続けてきた賜とも言えるのではないかと思ったりもします。作品の世界は知識だけではなく技術によっても広がっていくのだと実感します。
作品の世界が紫陽花から広がっていったように、私の制作もこの青い紫陽花から広がっていきました。葉っぱにはない魅力的な色を作品に落とし込みたいという意欲から始まったのです。色だけではなくこの色あせてなお力強く咲く花の印象もとても強いものでした。この紫陽花の花にはセミの死骸が乗っかていました。梅雨の花が夏の終わりにも咲いているのもとても不思議な気持ちにさせられたものです。その印象は幼い頃にあったのかなかったのか今はもう確かめようのないはるか遠くの記憶のようでした。
作品の一貫したテーマのひつである“還る場所”。あらゆるものはあらゆる細胞で構成されています。その構成要素がかつて生じ、存在した場所を人は細胞レベルで感じているのではないかと思うのです。何故か分からないけど無性に懐かしくなる。やさしい光に包まれているような、そんな印象をこの作品も見てくださる方に与えられたらいいなと思って描いています。
最後まで読んでくださりありがとうございました。
これからも包み隠さず作品についてお話していきたいと考えていますので、是非次回以降のお話にもお付き合いください。
【作品情報】
タイトル:空にきらめく星のように(湛_a_創生)
サイズ:F8号(333*190mm)
技法:パネルに油彩
【展示情報】
「鼓動〜The Beat〜Vol.3」
会期:2023年3月16日(木)〜22日(水)
時間:10:30〜20:30 *最終日は18:00閉場
会場:Artglorieux gallery of TOKYO (GINZA SIX 5F)
出品作家
犬飼将隆、今林明子、長内絵海、黒木美都子、國府田姫菜、清水円加、辻本健輝、津村果奈、手綱笹乃、HIRO、平林孝央、步咲(ほえむ)、丸山純奈、吉田然奈(50音順・敬称略)
購入など作品に関するお問い合わせは下記画廊までお願い致します。
◆ギャラリーサイト
http://gallerysumire.squarespace.com/japanese/news/2023/3/2/the-beatvol3
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