見出し画像

ポスティング移籍の中身について調べてみた

広岡達郎が言いたかったホントのこと

18日に発売された、週刊ベースボール内の広岡達朗のコラムが野球ファンの中で話題になっている。

話題は先日、ポスティングシステムでオークランド・アスレチックスへの移籍を決めた藤浪晋太郎について。近年燻っていたとはいえ、彼のポテンシャルを考えたら活躍してもおかしくはないとは思うが……広岡は以下のような厳しいコメントを記した。
 
「藤浪がメジャー・リーグで通用するかどうかは論じること自体がナンセンス。日本で通用しない選手が海の向こうで通用するわけがない。数年したらクビになる。そうなったら喜んで再契約するのが日本球界である」
 
……思えば藤浪の契約が決まる数日前、テキサス・レンジャーズから自由契約になった有原航平が帰国してソフトバンクと契約を結んだ。3年契約で総額9億円(単年3億円)という契約内容は日本ハム時代の年俸1億4500万円のおよそ倍になる。メジャーでは2年間でたった3勝しか挙げていないにもかかわらず、NPBに出戻りするだけでこんなに高額な契約を結んだのだから、メジャーに行ったほうが生涯年俸は上がることを示してみせた。
 
だからだろうか、今オフは契約更改の場で将来のメジャー挑戦を宣言する投手が心なしか多かったように思う。日本にいつまでもいるより、メジャーに行けば年俸が大きく上がるし、たとえ活躍できなくても日本のチームが今まで以上の好待遇で迎えてくれる――そんな選手の本音が透けて見える。
 
この後の特攻隊云々の下りはともかく、広岡は恐らく「メジャーで苦戦してNPBへ出戻りする選手が多すぎる」と苦言を呈したかったのだと思う。メジャーへの挑戦を志すことは決して悪いことではないが、主な理由が年俸ありきだったとしたらあまりにも不純すぎる。
 
かつてのイチローやダルビッシュ有のように日本球界でやるべきことがなくなり、さらに上のレベルを目指すのがメジャー・リーグであって、高額年俸ありきで行くところでは決してないと思う。球団が手塩にかけて育ててチームの顔になった選手が活躍するようになってたった1年や2年でメジャーに行きたいと言いだしたら、さすがにファンも興ざめだ。
 
ただ……選手からしたら誰だって給料のいいところで働きたいと思うのは当然のこと。だから、行ける機会があれば年俸ありきでメジャーを目指して何が悪いと言われれば、ぐうの音も出ない。だから選手の権利であるFA権を行使しての移籍については今回、対象外としてこの原稿を書いている。
 
つまり球界を代表するくらいの名選手になってからこそ、ポスティングシステムを利用すべきということ。そこで考えたのが行使する際に何か線引きを作れないかと。いったいどれくらいの成績を残せば広岡はもちろん、ファンも移籍に納得できるのだろうか。

2つの条件でポスティング移籍選手をチェック

これまでポスティングシステムを利用してメジャーへ移籍した日本人選手は藤浪を含めて22人いるが、まずはざっくりの基準としてメジャー移籍前にNPBで通算100勝(or100S)以上挙げた投手、通算1000本安打以上を放った野手がどれだけいるか調べてみた。
 
イチロー 通算1278安打(9年)
大塚晶則 通算137S(7年)
中村紀洋 通算1294安打(13年)
松坂大輔 通算108勝(8年)
岩村明憲 通算1073安打(10年)
青木宣親 通算1284安打(8年)
山口俊 通算112S(14年)
 
そうそうたるメンバーがずらりと並んだ。この中で不発に終わったのは中村と山口だけだからかなりの高確率で活躍しているのがわかるが、これだとダルビッシュ有や田中将大、さらには大谷翔平らが漏れる。ならば上記の条件に加え、個人タイトルを3個以上獲得した選手を含めてみよう。
 
石井一久 獲得タイトル3個
井川慶 獲得タイトル5個(沢村賞1回、MVP1回)
西岡剛 獲得タイトル4個
ダルビッシュ有 獲得タイトル5個(沢村賞1回、MVP2回)
田中将大 獲得タイトル7個(沢村賞2回、MVP1回)
前田健太 獲得タイトル7個(沢村賞2回)
大谷翔平 獲得タイトル3個(MVP1回)
鈴木誠也 獲得タイトル4個
吉田正尚 獲得タイトル4個
 
通算勝利数や安打数でクリアした上記の7名と合わせると22名中16名がクリアしているが、この2条件を未達のままメジャーへ移籍した選手は2017年までは中継ぎ投手で通算成績やタイトルに恵まれづらい森慎二と牧田和久の2名のみだったが、2018年以降は一気に4名に増加している。
 
この数字を見ると、メジャーの壁が以前ほど高くなくなったともとれるが、悪く言えば広岡の言う「日本で通用しない選手」がメジャー・リーグへ移籍するケースが増えたとも言える。
 
今後、ポスティングシステムでメジャーを目指す選手は通算記録を積み上げるか、個人タイトルを3回以上獲得するのをひとつの目安にするのはいかがだろうか? まぁ選手側からしたら余計なお世話なのは間違いないが……。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?