されそうでされなかった質問:『する』と『やる』の違いについて聞かれた
質問されそうでされなかった質問が、今日突然やってきました。
その質問とは、「する」と「やる」の違いです。
長年レッスンを受けていた先生が産休に入ったため、繋ぎで私のレッスンに参加しているAさん。
そんなAさんは毎回、質問をリストにまとめて参加されます。今日も5つほど質問があったのですが、その中の1つが「する」と「やる」の違いについてでした。
「する」と「やる」、この2つは代表的な直訳は”do”ですが、途中で枝分かれします。
まず言える大きな違いというのは、「する」はフォーマルにもカジュアルにも使えるけども、「やる」はカジュアルというか、家族や友人、関係が近い人たちとの会話で使うということでしょうか。
まず、「する」について
「する」という動詞は、本当に柔軟だなぁと日々感じます。
単体でも使えるし、名詞と組み合わせて新たな動詞を作ることもできます。
選択肢がある中から選ぶときにも使えますし、動作を表す名詞や、抽象的な動詞とも相性が良いです。それに、五感に関連する表現にも使えるんですよね。
例えば、
「サッカー」「バレー」「テニス」
これらはスポーツの種目を表す名詞で、その競技を「する」という動作が暗黙的に含まれています。この名詞と組み合わせて、「サッカーする」、「バレーする」、「テニスする」として使うことができます。
他の例を挙げると、例えば
「料理」「勉強」「掃除」「会議」「運転」など、これらはすべて動作に関係する名詞です。これらの名詞と組み合わせて「料理する」「勉強する」「掃除する」といった具合に、動詞として使うことができます。
さらに、「愛する」「努力する」「緊張する」など、抽象的な概念や感情を表す語彙とも「する」は一緒に使えます。ちなみに、このような抽象的な語彙と「やる」を組み合わせることはできません。
例えば、するでは使えるけど、「やる」とだと・・・
愛やる・・・???
努力やる・・・???
緊張やる・・・???
日本語話者なら、これを聞くとモヤっとしますよね(笑)。
あら。この「モヤっとする」も「する」を使いますね。
これと関連する「ドキドキする」「ワクワクする」「ソワソワする」など、オノマトペとも一緒に使えます。これらも感情に関係する語彙ですね。
また、レストランでメニューを選んでいるときに、「ランチセットAと日替わりパスタセット」の選択肢があったとします。最初はランチセットAを選ぼうと思っていたけれど、「やっぱり日替わりパスタにします」と、選択肢を決定する際にも使います。
さらに、五感に関連した表現にも使われます。
例えば、
大きな音がする
すれ違った人からふわっといい匂いがした
変な匂いがする
変な気分がする
「する」という動詞は、英語で直訳すれば "do" ですが、非常に柔軟に使われるため、まるでカメレオンのように色々な状況に対応できる動詞だな、と私は感じています。
次に「やる」について。
最初にも言及しましたが、「やる」は親しい関係の人たちとの会話で使う表現です。
例えば、お母さんからよく言われていた
「宿題、もうやった?」「ピアノの練習やったの?」
「いつ掃除やるの?」「早くやってしまいなさい!」など(笑)。
これを初対面の人や上司、目上の人、距離感がある人に対して使うことはあまりありませんよね。
また、「やる」は抽象的な言葉や感情を表す語彙とは一緒に使えない、と前にも書きました。五感を表す語彙とも組み合わせることはできません。
例えば、
ドキドキやる?
緊張やる?
カレーの匂いやる・・・?
どれも不自然に聞こえますよね。
しかし、「やる」には、何かを渡す行為、つまり「あげる」と同じ意味で使うこともあります。
例えば、
妹にクリスマスプレゼントをやる
猫に餌をやる
花に水をやる
このような表現です。この内容で「やる」を「する」に置き換えてみてください。カメレオン動詞の「する」では、このような場面では使えません。
ただし、「上司にプレゼントをやる」と言うと、意味は伝わるものの、少し失礼な感じがしますよね。
そうなんです。「やる」は何かを与えるという意味を持ちますが、主に自分より年下や身近な人、動植物に対して使うのが一般的です。
この他にも、色々な「やる」があることに書きながら気づきました(笑)。
「やる」も「する」に負けずともカメレオン動詞
何かを達成した時や成功した時に使う「やった!」
目標達成を意味しますよね。悪いことをする、または失敗をした時に使う「やる」
例:「あ……またやってしまった。これで3回目!」
私がよく使ってしまう言葉です!笑プライベートな話題での「やる」
カジュアルな表現ですね。例えば、「あの二人、付き合ってるの?もうやっちゃったの?」のように使われますが、スラング的な意味が含まれており、使う場面や関係性がかなり限られます。誤って使うと、下品な印象を与えてしまうこともあるので注意。(これをnoteで例に出すかどうかも、迷いました・・・!)「やってくる」:訪れる・来るという意味
例:「秋がやっとやってきた!」
「彼が急にやってきてびっくりした。」
代表的なものを箇条書きに挙げてみました。他にも書き漏れがあるかもしれません。
まとめ
「する」と「やる」は、どちらも英語で「do」と直訳されますが、日本語では使い方やニュアンスが異なる。
「する」は非常に柔軟で、フォーマルからカジュアルまで幅広い場面で使えるカメレオン的な動詞です。抽象的な概念や感情、五感に関する表現とも組み合わせることができ、様々な状況に対応する。
一方で、「やる」は親しい関係の人とのカジュアルな会話で使われ、抽象的な言葉や感情を表す表現とはあまり結びつかない。
また、何かを渡す意味でも使われるが、主に年下や動植物に対しての表現である。「やる」はスラングや日常のさまざまなシーンでも使われ、文脈に応じてニュアンスが変わる。
私たちは、日常の中で自然に「する」と「やる」を使い分けていますが、これも経験の積み重ねによるものですよね。トライアンドエラーを繰り返すうちに、無意識に状況に合った表現を選べるようになったのですよね。
私もきっと、何度もトライアンドエラーを繰り返しながら、自然に状況に合った表現を身につけてきたんだと思います。
幼い頃から、どんな風に母語を習得してきたのか、ドラえもんがいたらタイムマシンに乗って観察してみたいです(切実)。
突然始まった日本語を教えるという経験。外国語として日本語を勉強したり教えたりすることは、自分の母語を再発見するような感覚です。まるで宝箱を開けるような驚きと発見が詰まっています。
「する」と「やる」の違いについて、少しでも新たな発見や気づきがあれば嬉しいです。
長文読んでくださってありがとうございました!