その男、コードネームはアルタイル
通り向かいの花屋からその男が出て来たのに気づき、ベガは席を立った。
薄闇の街なかで真っ白なスーツ、手には赤い薔薇の花束。どう見ても狙ってくれといわんばかりだ。この街、いや世界でも高額懸賞金の出る男は、悠々と大股で通りを渡って来る。車が警笛を鳴らしても、軽く手を上げて前をすり抜ける。
ベガはカフェから出る時、胸元のマイクに向けて呟いた。
「任務開始、標的は生きたまま捕える」
組織でもトップの狙撃手、ベガが出たのであれば他には誰も手を出せまい、彼女はルージュの口元を引き締め、通りに出る。
彼が手を振って近づいた。
「君の方からお出迎えとはね」
ぱっと笑顔がはじける彼に彼女は冷たく告げた。
「お終いよ」
言いながら胸元のピンマイクを外し、ヒールで踏み割って囁く。
「会いたかった」
声は組織には届かない、しかし思いがけぬ銃声がふたりの間を裂いた。
「逢瀬は決着がついてからだな」
彼女を抱きざまに路地の影に飛び込み、彼はにやりと白い歯を見せた。
(410文字)
またまた、たらはかに(田原にか)さんの企画7/7のお題で参加しました。
裏お題は週末までに考えてみます!
おっと、うちは七夕8/7派ですw
よろしくお願いします。
たらはかに(田原かに)さんの企画はこちら。
自分の企画ホイホイのたまり場はこちら。
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