流加

幸せはあるいてこない

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無害な生き物と有害な優しさ

居心地の良いところに棲みついている。心も、身体も。 鬱々とした気持ちとは裏腹に、部屋は片付いている。ここに来た時からその姿は変わっていない。殺風景で、生活感をまるで感じない部屋。 ここが、一番落ち着く場所だと私は思う。自宅よりも学校よりもカラオケよりも。 なのに、周りは「危ない」と言う。両親も、友人も、「あなたを理解できるのは私だけ」という顔をして、「そこは危ないから」と私の居場所を奪おうとする。居心地の良い場所なんて提供できないくせに。 誰とも話さず、誰にも構われず

    • 憂鬱と秋

      息を吸った。金木犀の匂いがして、秋は来た。夏を閉じて、秋を開く。 起きられない朝から始まって、眠れない夜に終わる。今年は、紅葉を見に行けるだろうか。 生きている心地がしなかったので、ジムで体を痛めつけた。なるほど私は生きていたと確認する。明日来る痛みを想像し、愉悦する。 インスタのストーリには、やはり金木犀がどうのこうのということを載せている人が多かった。みんな同じことを感じているのだと思い、考えていることは違うのだと知った。 20回目の秋が、物語を進めている。

      • 🫂

        支えられながら、生きている。 精神は穏やかで、凪いでいる。 私はずっと孤独だと思っていたんだけど、誰とも分かり合わなくても、ただ人といることが助けになったりするんだと思うようになった。 どれだけ言葉を尽くしても、それは言いたいこととは少しズレている。 どれだけ言葉を尽くしても、完璧には伝わらない。 それでも、伝えようとして、わかろうとして、でもわかり合えないんだなって落ち着く方が、関係性は良くなるのかなと思う。 「みんな違ってみんないい」を実現できたらいいなと思う。「

        • 🌊

          感情の感度を落としたから、病むことが少なくなった。情動的なこともあまりなくなって、津波のような激しい波は穏やかな波に変わった。 しばらくは自分が自分でないような気がした。自分を殺した気がしていた。本当は大切にしたかったものを捨てて、平和を呼んだ。 大人になることは、諦めることだ。だから何かに執着することも、夢も、大切なものも、諦めた。その先にやってきたのは平和な波だった。 怒りを鎮めて悲しみを鎮めて生きている。なるべく、なるべく起こさないように。自分が、自分であるためには

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        無害な生き物と有害な優しさ

          🙂‍↕️

          自分が何者なのだろうかと考えるたびに心が落ち着く。まるで自分を取り戻したように。 朝を知らせる鳥が鳴いているように、 授業を終わらすチャイムが鳴るように、 おやすみと言うように。 腕にある傷、心の痛み、歪んだ口元。全てが私を語っていた。私は、何者でもない。私を見ている全てのものが、私を形作っているだけだった。

          🙂‍↕️

          傷ついたり、悲しくなったり、情緒豊かな気持ちを味わうのは小説の中だけでいい

          傷ついたり、悲しくなったり、情緒豊かな気持ちを味わうのは小説の中だけでいい

          川沿いで感じたもの。春

          桜の花びらが散っていた。 アニメで見たことのあるような景色が目の前にあった。けれどそれはアニメよりも色褪せていた。 「ホケキョ」という歌声を今年、はじめて耳にした。あたりを見渡したけれど、声の主を見つけられなかった。 おしりまで覆うランドセルを見た。子供には固くて大きいランドセル。隣を歩くランドセルは、少し傷があって、小さく見えた。

          川沿いで感じたもの。春

          👣

          男のひとが苦手だった。 大きい図体、威圧するような低い声、低俗な思考。 女のひとが苦手だった。 底無しの美的意識、ゼロ距離で触れられる感覚、胸元開いたワンピース、吐きたくなるような香水の匂い。 子どもが苦手だった。 予測できない行動、泣き喚き、汚れを知らない瞳。 そして、人の優しさが苦手だった。 「レズって噂聞いたんだけど…」 「本が好きだなんて真面目だね。私とは大違い」 「ストックホルム症候群的なやつ?大丈夫?」 「え〜、それってただの都合よくなってるだけじゃん、本

          涙が降り、名前を呼ぶ

          水溜まりを跳ねてスニーカーが濡れ、Tシャツは湿って重みを纏う。切ったばかりの髪の毛は雨に打たれ、きっとすでにボサボサだろう。 風が吹いて、傘が煽りを受ける。急いで帰ろうと足を早めようとして、やめた。 急にどうでも良くなった。 傘を下ろす。傘どころか背に負う重たいリュックも、出来立ての髪型も、もういらないと思う。お気に入りのスニーカーも、川の底へ沈めばいい。嫌悪に満ち満ちて、どうにか衝動を抑えた瞬間、腕を切り付けられたような激しい感覚が走った。胃が締め付けられる。息を止めてしゃ

          涙が降り、名前を呼ぶ