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ヒューマンエラーの原因と対策①

ヒューマンエラーとはなにか

 品質問題の原因の一つに「ヒューマンエラー」があります。ヒューマンエラーとは人為的なミスのことで、JISでは「意図しない結果を生じる人間の行為」と定義されています。製造現場では、ヒューマンエラーのことを「ポカミス」と称することも多いと思います。人間はミスや間違いをおかしてしまう生き物ですので、ヒューマンエラーは完全に無くすことはできません。
 とはいえ、ヒューマンエラーをそのままを放置してしまうと不良発生につながりますし、小さいミスが積み重なることで取り返しのつかない大きな問題につながる可能性もあります。

 ヒューマンエラーが原因で発生した不具合に対して、「注意して作業します」「従業員の再教育を行います」「検査を二人にしてダブルチェックします」という対策を目にすることも多いのですが、残念ながら私はそれらを信じていません。理由は、人間の集中力・注意力には限界があり、どんなに気を付けていても慣れや疲労、錯覚などでヒューマンエラーが発生するからです。これは、若手やベテラン関係なく、どんな人であってもヒューマンエラーを起こす可能性があるのです。

 したがって、ヒューマンエラーによる不具合が発生した場合には、人は必ずミスをするという前提で発生状況を詳しく観察し、ヒューマンエラーを発生させた原因や環境要因を特定し、それらを除去することによってヒューマンエラー自体が発生しないように改善する必要があります。つまり、ヒューマンエラーの発生メカニズムを知り、それを除去することが不具合対策として有効な方法になります。決してミスを起こした当人の不注意や性格の問題として片付けてはいけません。

ヒューマンエラーは原因ではなく結果である

 例えば、ある製品で「付属品の入れ忘れ」という不具合が発生したとしましょう。「付属品の入れ忘れ」を結果としてしまうと、原因は「梱包作業者の作業ミス(ヒューマンエラー)」となってしまい、対策は「入れ忘れないように注意する」とか「作業手順を再教育する」とかになってしまいます。人が行う作業は、どんなに訓練してもミスをなくすことはできませんので、この対策方法ではいずれ問題が再発してしまうでしょう。

 そこで、ヒューマンエラーは原因ではなく結果であると考えると、有効な対策を考えることができるようになります。
 「付属品の入れ忘れ=梱包作業者の作業ミス(ヒューマンエラー)」を結果とすると、原因は「何故、入れ忘れが発生したか」、つまり「入れ忘れを発生させた要因は何か」になります。ここを追求し、その要因を除去することが、ヒューマンエラーの改善策に繋がります。

遵守すべきルールはあったのか

不具合が発生した際に、まず最初に確認するのは次の2点です。
 1.遵守すべきルールはあったのか
 2.定められたルールを遵守していたのか

 そもそも作業手順が定められていない場合には、何が起こっても不思議ではありませんし、ヒューマンエラーとは言えません。作業手順を定め、わかりやすく明文化し、作業手順書のような形で作業場所に掲示することから始めましょう。工場でよくある事例としては、通常の工程には作業手順書が掲示されているのに、不具合が発生した際に修理を行う工程には作業手順がないことがあります。不良品がゼロということは通常あり得ませんので、不良が出た場合のルールも定めておくことが必要です。

 定められたルールがあり、作業者はルール通りに作業していたにも関わらず不具合が発生したケースもヒューマンエラーではありません。当然このケースでは、ルール自体に問題がありますので、不具合が発生しないような作業手順(ルール)に見直しを行います。

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