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旅をする木 - 星野道夫 著

ひの自然学校、「スタッフの活動理念にある裏側」
今回ご紹介したいのは、最近一番大切にしている一冊です。

 はじめてこの本に出会ったのは大学生のころ。星野道夫さんは著名な写真家でありエッセイストでしたが、当時僕は全く知りませんでした。そのキッカケは大学3年生の時にひょんなキッカケでオーロラクラブが主催するアメリカのアラスカ州にある「ルース氷河でキャンプをする」というプログラムに参加したところからでした。
 実はこのオーロラクラブ、星野道夫さんが生前「自分が写真を撮影し、心奪われたアラスカの地へ日本の子どもたちを招待したい」という想いからスタートした団体です。偶然このキャンプに出会ったところから、星野さんの作品に出会い、中でもお気に入りになった本が「旅をする木」です。

2008年オーロラクラブで出かけたアラスカ氷河キャンプ。右のシルエットはワタクシ。笑

 子どもたちとアウトドア活動を楽しむ僕の今の人生を支えるいくつかの文章を紹介します。 (” ”は書籍からの引用)

”子どもの頃に見た風景がずっと心の中に残ることがある。
いつか大人になり、さまざまな人生の岐路に立った時、人の言葉ではなく、いつか見た風景に励まされたり勇気を与えられたりすることがきっとあるような気がする。”

”日々生きているということは、あたりまえのことではなく、実は奇跡的なことのような気がします。つきつめていけば、今自分の心臓が、ドク、ドク、と動いていることさえそうです。人がこの世に生まれてくることにしてもまた同じです。”

"ぼくたちが毎日を生きている同じ瞬間、もうひとつの時間が、確実に、ゆったりと流れている。日々の暮らしの中で、心の片隅にそのことを意識できるかどうかは、それは、天と地の差ほど大きい。"

  子どもと体験活動という分野では、様々な教育効果に関する研究がされ、エビデンスが示されています。「より子どもにとって良い事」を追求するのはおとなの恒久的なテーマであり、こどもの権利の保証とも言えるでしょう。
 ただ時にそれは、大人が必死にになりすぎて「教育効果のより高いこと」に盲目的になってしまうこともあるように思います。
 星野さんの文章や彼のインスピレーションを感じたアラスカでの旅の想いでは、「まぁ、焦るなよ。人はゆっくりと旅をしながら大きくなるんだよ」という極めて原則的なことを教えられた気がします。そして、ひの自然学校ではそんな時間や機会を表現していきたいな、と考えてはいます。

子どもと関わるひと、とりわけ教育者や全ての「親」になったおとなたちにぜひ読んでもらいたい1冊です。

 ”私たちはすごい時代に生きているなあと思います。資源の枯渇、人口問題、環境汚染…ちょっと考えただけでもある無力感におそわれます。それは正しい答が見つからないからでしょうか。けれどもこんなふうにも思うのです。ひとつの正しい答などはじめから無いのだと…そう考えると少しホッとします。正しい答えを出さなくてもいいというのは、なぜかホッとするものです。
 私たちは千年後の地球や人類に責任をもてと言われても困ってしまいます。言葉上では美しいけれど、現実として、やはり遠すぎるのです。けれでもこうは思います。千年後は無理かもしれないが、百年二百年後の世界には責任があるのではないか。つまり、正しい答はわからないけれど、その時代の中で、より良い方向を出してゆく責任はあるのではないかということです。つまり、グッチン・インディアンの人々も、私たちも、いつも旅をしている途上なのかもしれません。” (「旅をする木」より)

ひの自然学校/ひの社会教育センター 寺田まめた

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