僕の愛した君はいない⑧

「でも、何であの時、私は自分のパーツを顔に嵌めこんだのに……。そう、それで朝起きて顔を洗っていたら別の人のものに替わっていたのに気付いて……。それで、混乱したまま学校に行って……。頭も体もとても熱くて重くて、まるで自分のものじゃないみたいに言うことをきいてくれなくて……。それから私は学校で倒れた。そうして、私は記憶を失ってた」


 彼女は、自分に言い聞かせるように話していた。話の内容からしても僕の夢と同じでよさそうだ。僕の存在は彼女が落ち着くまで彼女の中から抜け落ちていたようだった。彼女はそれからふと僕の存在を思い出すと話しかけてきた。


「これは、一体どういうこと何ですか?」
「すいません。僕も詳しくは分かっていないんですが、確定しているのは僕とあなたの目と耳が入れ替わっていること。そして、それは僕たちが見た夢が大きく関係していること……ですかね。色々と確認をしたいのは山々なんですが、前回と同じで、いつこの状態が解除されるか分からないので、あなたに確認して欲しいことがあるのです」
 彼女は眉間に皺を寄せて、私も聞きたいことあるのにって表情を浮かべ、むすくれたまま頷いた。とても、分かりやすい性格のようだ。コロコロ表情が変わりやはりリスみたいだと思った。


「えーっとですね。僕達が入れ替わるのには恐らく条件があるみたいなんです。僕が最初に夢を見た時は、この世界じゃない、どこかへ行きたいと願っていました。次に僕があなたと入れ替わった時も小説や漫画の世界に行きたいと願っていました。そして、今回も小説を読んでいるときにこの現象が起きました。僕の場合は、恐らくここではないどこかへ行きたいと願ったときに入れ替わるのだと思います。だから、あなたにしてほしいのは通信が切れた時に、僕と同じ条件で入れ替わるかどうかと、最初に夢を見た時に何を思って寝ていたのかを確認して欲しいのです」
「分かりました。覚えておきます」


 それから、僕はカンニングペーパーを取り出した。やっぱり初対面の相手と話していると緊張して自分が自分じゃないような気がしてくる。それに時間制限があるかもしれないと思うとどうしても早口になってしまう。


「あっ、ちょっと君待った。そのまま視界を固定してくれないかな。そうそう、そんな感じで……」
 そう言うと彼女は左目を手で覆った。
「……あの、これ昨日一日で作ったの? かなり文量があるんだけど……」
 それから、可笑しそうに笑った。先程までの固い感じがなくなり笑顔を見せてくる。
「ねぇ、最初から口で説明するより、私が落ち着いた時点でこうしてノートを見せてくれた方が早かったんじゃない?」


 それから、僕は彼女が言わんとしていることに気付いた。そして、顔が赤くなるのを感じた。
「ははっ、君面白いなぁ。真面目なのにどこか抜けているというかなんというか……。あっ、顔赤くなってる。おかっしー」
 やっぱり、思った通りの人物のようだ。僕が苦手とする明るい女子だ。ただでさえ、人と話すことが苦手なのにこの手の手合いと思うとさらに荷が重い。


「いやいや、笑って悪かったよ。でもお陰で君が悪い人じゃないって分かったし、お願いだから機嫌直してよ」
「…………いいから読んでください」
「そう言わないでさ、仲良くしようよ、清水瓶君」
「喋っていて頭に入るんですか?」
「ごめん、ごめん。分かった集中するよ。…………読んだから、次のページめくってもらって良い?」


 それから、彼女は僕が作ったカンニングペーパーを静かに読み漁った。僕の名前や住んでいる県、考察内容や記憶が消えてもいいようにやった方がいいこと等が書かれている。
「うん、大体読んだけど、これ……本……日」


 砂嵐の様なノイズが走る。段々相手の声が聞こえにくくなってくる。向こう側の視界もぼやけてくる。僕は急いで紙にお昼休みにまた連絡がとれるかやってみますと書いた。彼女が手でオッケーサインを作っていたのが歪んでいたが分かった。それとほぼ同時に向こうとの連絡が途絶えた。


 時計を見ると、三十分程時間が経過していた。時間はこの現象に関係があるかも鑑みる為に、三十分とノートに書き記しておく。それから次に何をしようと頭を悩ませていると校内放送が流れた。


「二年十組、清水瓶君。至急、保健室まで来てください」
 何事かと思ったが、保健室に行っていると言った手前、無視するわけにもいかず赴くことにした。保健室の前まで行くと、未紀先生が扉の前で立っていた。


「やぁ、清水君。昨日ぶりだねぇ……。ほら、待ってたよ。ほら、診察を受けるんだ。ほれほれ、こっちに座って、座って」
 未紀先生は僕の腕を引っ張って保健室の中に入り、椅子に僕を座らせる。
「あの、特に今日は別に体調が悪くはないのですが……」
「いいから、いいから君は大人しく座っていればいいから……」
「えっと、ですから特に体調は……」


 未紀先生は僕の頬をぐにゅっと押しつぶして、発言できないようにした。
「はーい、診察中ですよ。患者は黙っておくように……。よーし、それじゃあ、笑ってみてくれるかな?」
「何でですか? 理由を教えてくれませんか?」
「いや、笑った清水君の顔が見たいかなって」
 僕は、引き攣った笑いを浮かべた。
「あれ、やっぱり、そうなの。本当にそれしか笑えない?」
「いや、笑えますけど……」
「だったら、笑って、笑って。これも治療の一環だから……。必要なことだから」


 僕は仕方なく口角を無理やり上げた。
「ふーむ、ちゃんと笑えているってことは麻痺でそうなっている訳ではないと……。……それにしても、清水君、君笑うの下手過ぎない。何かちょっと不気味だよ」


 僕は、無駄に傷を負った。内心ほうっておいてくれと思った。その間も未紀先生の治療と称する何かは行われている。僕はされるがままに治療されている間に、彼女が読んだカンニングペーパーの内容について思い出していた。


 僕の基本情報、そして入れ替わりの条件、そして記憶の喪失のこと、他者の自分たちの顔に対する認識の狂い、恐らくだけどパーツが入れ替わった瞬間のこと、そして、向こうの基本情報も今後連絡をする上で教えてほしいということを簡単に記していた。


「うーん、お手上げだよ。これは、一体どうしたものかね……。該当する症状が思いつかない。表情を変えても痛くはないっていうし、触診だけだとあれだから血液検査で数値を見てみて、それからそれから……」
 このままほうっておくと、色々されそうな気がしたので断ろう。未紀先生の眼に探求心のようが見えたので足早に退散することにする。


「あの、本当に大丈夫ですから……。昔からこうだったので全然大丈夫ですよ」
「いや清水君、君、この前保健室来た時にわざわざ私に両目と両耳を見てもらったよね。ということはさ、それってつまり直近にその症状が現れたってことじゃない?」
「いえ、昔からのコンプレックスで、周りからどう見られているか気になったから聞いただけですよ。僕も高校生で、思春期ですから……」
 とりあえず、思いつく妥当な理由を並べてみた。躱し文句としては、それなりに的を射ているのではないだろうか? 


「いや、でもそれにしたってその左右非対称加減は何かあるはず……。かといってこれといった症状もなさそうだし……」
 未紀先生はぶつぶつと独り言を言いだしたが、僕はこれでとりあえず帰る目途がたったと胸を撫でおろした。


 扉が勢いよく開く。
「瓶、大丈夫か。さっき保健室に行くって言ったのに、校内放送が流れたから、保健室にたどり着く前に倒れたと思ったぞ」
 友人だった彼が入るなりそう発言する。未紀先生は、面白そうなものを見つけたとでもいうように目を猫の様に細めて彼に微笑んだ。僕は、嫌な予感がした。





皆さん、お疲れ様です。本日も晴天なりということですね。

ダッシュボードの機能を使うとどうやら短編小説が一番読まれているみたいっすね。後、時間帯も大切みたいで休日とか、夕方とかが大事みたいです。んで、逆に読まれにくいのは22時以降の深夜帯みたいっすね。

色々と試行錯誤していると分かることも多いっすね。まぁ、しかし今は読んでくれている人間も少なからずいるみたいなので、それは嬉しい限りっす。

だけど、何よりも大事なのは自分で読んで感動する作品を作ることが何よりなので、楽しみながらゴールに向かいたいっすね。

まぁ、終わりは知ってるんすが、過程がどうなるかが未知なので、後はキャラクター達に協力してもらって一緒にハッピーエンドを目指したいっすね。とりあえず、今日も読んでくれてありがとうっす。


朝起きたら、皆それぞれやることもあると思いますが、そんな日常すら楽しく乗り越えられる一日になっていくことを願っています。それではまたの機会に


いつも読んでくださってありがとうにゃ。 ゆうきみたいに本を読みたいけど、実際は読めていない人の為に記事を書いているにゃ。今後も皆が楽しめるようにシナリオ形式で書いていきたいにゃ。 みにゃさんが支援してくれたら、最新の書籍に関してもシナリオにできるにゃ。是非頼むにゃ。