見出し画像

御題小謡(ぎょだいこうたい)「友」を謡ってみた!

毎年、檜書店では宮内庁の歌会始(うたかいはじめ。今年は1月18日に行われました)のお題に合わせて、御題小謡を作成しています。
 
これは、文化人に作詞を依頼し、節付を観世宗家がなさるものですが、記録でたどる限り、昭和初期から80年以上続いています。
過去の記事はこちら
 
また、これまでの御題小謡リストも作成しましたので、ご参照ください。

皆さんの生まれた年の御題小謡は何だったでしょうか?

「御題小謡」一覧表(雑誌『観世』より)

さて、今年のお題は「友」で、作詞を法政大学能楽研究所所長の山中玲子先生にお願いしました。


山中玲子先生に、作詞にあたっての思いをうかがいました。

「友」という御題を見て、すぐに南方熊楠(みなかたくまぐす)のエピソードを思い出しました。若き日にロンドンで出逢い親しく交流を持った孫文(そんぶん)が、後に辛亥(しんがい)革命を成功させて来日し、熊楠との再会を望んだときに、熊楠はそれを断ったという話です。その理由を後に記した中に「人の交わりにも季節あり」という有名な言葉があります。

熊楠の思いを推測すると、人生の春や夏、若き日にどんなに親しくしていても、季節が移り秋や冬が来るように、友人との関係も変わり、終わっていくこともあるのだ、と言いたかったように感じますが、ここでは敢えて、季節のように移ろうのなら冬の後にはまた春が来るでしょう、と返してみることにしました。

突然コロナ禍に見舞われて以来、私たちは親しい友達にも会えず、たくさんの「あたりまえ」だったことを奪われて、長い冬を過ごしてきました。ですが、冬の後には春が来ます。新しい年を迎え今度こそ、離れていた友人たちと再会し、互いの無事を祝したい、という気持ちをそのまま詞にしました。親しいお仲間、大切なご友人と声を合わせ謡っていただければ幸いです。
                  (『観世』2023年1・2月号より)

今回、作詞者の山中玲子先生はじめ能楽研究所有志の先生方と、檜書店の有志の計10名で、御題小謡「友」を謡ってみました。

※注意:こちらの連吟はあくまで素人によるものです。「謡ってみた!」は皆さんにどんどん実践していただきたいのですが、YouTubeの音声はお手本になさらないようお願いいたします。


能楽研究所の先生方にはお忙しいなか、お集まりいただき本当にありがとうございました!
 
来年令和6年のお題は「和」に決まりました。
歌会始の詠進要領 - 宮内庁 (kunaicho.go.jp)
来年はどのような小謡になるのかどうぞご期待ください。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?