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かつては演出がちがった!?「古演出による」能について

長い年月を経る中で、演出が変化した能がいくつかあります。
そうした演目を、以前行われていたであろう演出で上演するのが、「古演出による」「古式による」とした催しです。

5月28日(日)京都観世会例会では、古演出による「鵜飼」、6月18日(日)京都観世会復曲試演の会では、古演出による「昭君」が上演されます。

「鵜飼」観世暁夫(現 観世銕之丞)銕仙会定期公演 1994.6.10(撮影 吉越研)

古い演出には、今は出ない作り物があったり、登場人物が多く出ていた…など、様々ありますが、シテの役柄が前場と後場で別人格の「鵜飼」「昭君」では、古くは、前シテが中入りせず舞台に残り、後シテを別の能楽師が演じていた、と考えられています。

「鵜飼」の前シテは鵜飼いの老人、後シテは地獄の鬼、「昭君」の前シテは白桃(昭君の父)、後シテは呼韓邪単于(こかんやぜんう)の霊です。
今回はこの前後のシテをそれぞれ別の役者が演じる、古演出での上演となります。

それでは、なぜ現在のように、前シテが中入りして(間狂言が入り)、後シテも同一の役者が演じる演出に変わったのでしょうか。

これには、世阿弥が作った「複式夢幻能」が関係しているようです。

「複式夢幻能」は、能の演出形式のことで、複式とは前場と後場の二場面を指します。
主人公は同一人物であり、前場でその人物の化身(前シテ)が僧侶などの役(ワキ)に出会い、後場では真の正体(後シテ)を現します。
この形式では、前シテは中入りし、後シテも同じ役者が演じます。
「井筒」などが、これにあたります。

複式夢幻能が主流となっていく過程で、他の演目でも前後のシテを一人の役者が演じる形が増えていったのではないでしょうか。

長い歴史の中で、能がだんだんとシテ一人をクローズアップするようになり、現在の演出になったとも考えられますね。

この機会に、現在の演出と古演出を見比べてみてはいかがでしょうか!

「古式による 鵜飼」
5月28日(日)11時 京都観世会例会 
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「古演出による能 昭君」
6月18日(日)13時 京都観世会 復曲試演の会
(復曲能「粉河祇王」もあります) 
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