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とある旅立ちの話。

どうもです。

先日の日勤で人工呼吸器をつけてた患者さんが旅立ちました。
私が受け持ちしていましたが、夜勤者に業務を引き継ぎ夕方になってから心臓の拍動が少し落ち、それから数分で拍動がゼロになりました。
午前中はまだ、瞬きをしたり顔を少し動かすなどの反応はあったのですが、午後になり体が全く動かなくなり、眼球も上を向いて対光反射も無くなりました。

この日は朝のうちにもう家族を呼んで会わせた方がいいのかもとリーダーに話をし、リーダーが家族に連絡をしてくれて少しの時間面会してもらいました。
コロナの世の中じゃなかったら、ずっといてもらっても構わないのですけども。

患者さんの妻と親戚が来て、ベッドサイドにきてもらいました。
奥様は、お父さん!お父さん!と声かけをして手をさすり過ごしていました。

何本も点滴の針を打ち、全身は浮腫んでしまい、人工呼吸器のマスクの重みで鼻は潰れ皮膚が赤くなり、保護のテープを顔中に貼られ、見ていてため息が出るほど気の毒でした。

「これ(人工呼吸器)外したら…すぐ亡くなるんですか?」
「これつけてて、(具合は)良くなるんですか?」
「危篤状態なんですか?」

色々と質問を受けましたが、看護師に答えられることと答えられないことがあるので、慎重にお返事をしていきました。
医師からはすでに状態説明がされているので、今回医師の立ち会いや説明はありません。

それにしても…この状態を見ていて、回復していけるかもと本当に思っているのだろうか?
すでに厳しい状態であることは医師から家族に説明されてます。
今回面会を促したのも、本当の本当に危篤状態で、旅立つ前に家族に一目会わせてあげたいという看護師側の判断でのことです。

以前に医師から状態説明を受けてはいるものの、危篤状態というのはあんまり理解されてなかったのかな〜。
医師からのお話のあと、患者さんのベッドサイドに通して会ってもらってたのですが、そのときはまだ人工呼吸器は装着していなかったので、状態が厳しいという意味がピンと来なかったのかもしれません。

今回面会し、奥様は患者さんに「頑張って!頑張ってね!」と何度も繰り返していましたが、私は内心「いやもうすでに十分頑張ってて、もう頑張れないんですよ!頑張らなくていいんですよ!」と思いつつ、その光景を見てました。
私の思いは、私のエゴみたいなモノですから、心の中で思うだけで終わりです。

やった後悔より、やらない後悔の方が死ぬまで引きずる。
って言いますよね。
延命治療がそれに当てはまるかどうかは分からない。
答えは、無いし、有る、んでしょうね。

さて、家族が帰路についてしばらくしてから、患者さんの心臓が止まりました。
「本当に、お疲れさま。家族に会えてよかったですね」
「大変だったね、頑張ってたね」
耳は最期まで聞こえているとよく言われてますから、家族が来たことを理解できるし、ほっとして旅立つことができたのかもしれないですね。

夕方に旅立ったので、残って体拭きや処置をしていこうかと思いましたが、家族がまた来院するまでいつになるか分からないから、帰っていいよと上司に言われ、帰りました。

とある旅立ちの、お話でした。
※プライバシー等配慮に基づき、設定など少し変更しているものがあります。

それではまた。

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