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生物としてのレヴィアタンについて本気出して考えてみた

レヴィアタン(リヴァイアサン)をご存じだろうか。
ゲームやアニメ、漫画なんかにもちょくちょく登場している、旧約聖書由来の架空巨大生物である。
見た目は大体ドラゴンっぽいクリーチャーとして描かれることが多い。
中世以降は悪魔の一体としても考えられ、七つの大罪のうち「嫉妬」を司る結構なお偉いさんにもなっている。

筆者はこのレヴィアタンが大好きである。
きっかけはとあるアニメ作品だったが、今日元ネタのレヴィアタンが大好きである。
名前は既に有名だと思う。モチーフにされたキャラクターも多い。人気がある、と思う。
しかし意外に「レヴィアタン」そのものの情報や商品は少ない。
要するに筆者は飢えていた。
来る日も来る日もレヴィアタンのことを考えている。
もとい、限られた情報から妄想し続けている。
よく考えるのは、「生き物としてどこまでリアルに突き詰められるだろうか?」ということである。
伝承でのレヴィアタンは、創造主が天地創造の五日目に造り出した巨大な海の獣で、硬い鱗に覆われ恐ろしい歯を持ち、ひと泳ぎすれば海は煮えたぎる油鍋のようになり口からは火を吐くという。
だが、「生き物」なのである。
例えば悪魔…「七つの大罪」とされるメンバーは資料によって多少変わるが、殆どが堕天使や異教神だ。
そんな中で、レヴィアタンは明確に「生き物」として創造された存在だ。
(もちろん「聖書に登場する前の元ネタの伝承」を辿れば同じく異教神と見ることもできるが、今回は宗教的な考察はしないので置いておく)
架空の生き物。
もし、現実に存在していたら?
その妄想を確固たるものにすべく、私はある手段を取った。
レンタル博士。
マンボウ研究で有名な「牛マンボウ博士(@manboumuseum)」が数年前から行っているサービスだ。
料金さえ払えば、博士号を有するその知識と経験を一日レンタルできる…という素晴らしいもの。
レヴィアタンは海の生き物。マンボウも海の生き物。
マンボウは大きいし、海面から深海まで行き来するし、まだまだ解明されていないことも多いし、いける。
専門家の知識を以て、妄想より深く確固たるものにする!
私は牛マンボウ博士のHPから依頼メールを送った。
返信は「自分はマンボウの専門家でレヴィアタンには詳しくない、本当にいいのか?」という至極真っ当な戸惑いでしたが、元々レヴィアタンは諸説入り交じる伝説の生き物。ふわっとした知識や認識で構いません、と事を進めた。
疫病蔓延る昨今の事情もあってオンラインでのやりとりにすることにした。
マンボウの知識でどこまで考察できるか分からないし対面でもないので依頼料を下げることも提案して頂いたが、私にもただの妄想に貴重な時間を割かせるという罪悪感はあったので規定料金を振り込んだ。金なら払う。レヴィアタンの話をさせてくれ。

当日。zoomが無料プランに時間制限を設けたので、昔懐かしSkypeでの通話とした。
挨拶をし、「どうして依頼しようと思ったんですか?」とまだ困惑が見られる博士に飢餓が限界なことを説明し、いざ考察へ。
博士側からの記事はこちらにまとめられている
レンタル博士されてみた話 クエスト6
ちなみに、事前に「レヴィアタンに対して共有しておく事前情報」をまとめPDFにして送っておいた。なにぶん書籍やページによって書いてあることが違うし、解釈の仕方も様々だからだ。
中心に据えたのは「ヨブ記41章」の記述である(翻訳によっては40章だったりするようだ。今回はWikipediaの口語訳を参照させてもらった)。
この41章丸々ひとつ分、創造主自らがレヴィアタンについて語っている。
外見描写などはここが一番詳しいだろうと判断したためだ。



ひとつひとつから特徴分析や推測をし、深めていく。
詳しくはラボブレインズ様の記事にまとめられているので、そちらをご覧になって頂きたい。
聖獣レヴィアタンのリアル生物学的考察とレンタル博士の可能性について

ので、ここには私の感想を中心にまとめたい。

ところで、なぜレヴィアタンが好きなのか、と聞かれることが多い。
どこが好きなの? と。
これに対してはいつもこう答えている。

「でっかくて強くて美しいところ」

でっかいことはよいことです!
そして私が日本語の書籍やネットで確認した限り、レヴィアタンの大きさの記述は1500km、2000km、4000kmだった。
最低でも日本列島本州くらいある。いい! でっかい!
でかければでかいほどよいので、「4000kmで考えていいですか?」と発言。了承を得た。博士は心が広すぎる。まさに海の様な懐の深さ。
生息域は伝承などから地中海と想定。全長4000kmでも入れる大きさだ。
ただ深さがないため、体型は恐らく細長いだろうということになった。これは私の想像とも一致している。
鱗などの特徴から、水棲爬虫類ではないかと推測された。
ここで私は41章の記述からどれくらい硬い鱗でも動けるのか、などを聞いた。

「 わたしはこれが全身と、その著しい力と、その美しい構造について黙っていることはできない」
(ヨブ記 41:12)
「つるぎがこれを撃っても、きかない、やりも、矢も、もりも用をなさない。
これは鉄を見ること、わらのように、青銅を見ること朽ち木のようである。
弓矢もこれを逃がすことができない。石投げの石もこれには、わらくずとなる。
こん棒もわらくずのようにみなされ、投げやりの響きを、これはあざ笑う」
(ヨブ記 41:26~29)

ヨブ記 Wikipedia

ここから、私は美しく硬いもの──ダイヤモンドを想像していた。
「生物学的考察をしたい」と言っておいて何だが、ファンタジー的にとてもおいしいと思うのだ。鱗がダイヤ。
「金剛をまとう最強の海竜」ってだけでもう合格でしょ。
で、実際そういった鉱物的な鱗はありか、動けるのか、などを聞いた。

硫化鉄の鱗を持つスケーリーフットがリアルにいることから、レヴィアタンも別の共生細菌を使うなどして、宝石のようなより硬度の高い鱗を作り出していた可能性がある。

聖獣レヴィアタンのリアル生物学的考察とレンタル博士の可能性について

実際の生き物の情報なども紹介してもらい、「あり」ではあるとの意見を貰えた。
そして爬虫類であるし、脱皮はするのか? という疑問。
定期的にダイヤがボロボロ生み出される生物だったら、どれだけデカかろうが凶暴だろうが人類は襲い掛かるに違いない。
そんな心配をしていたのだが、博士の意見は「おそらく自分の脱皮した皮は自分で食べているのではないか」。
クジラ等大きないきものも居るとは言え、それだけで必要なエネルギーは賄えなそうだし、海域のいきものが死滅しそうなので、これはとても納得出来た。
前述の妄想を合わせると「宝石を食べるドラゴン」になる。最高である。綺麗なものが綺麗なものを食べて生きている。最高である。
私が提案していたのは「映画シン・ゴジラのような、体内に核施設のような構造を持っているのではないか」だった。これなら炎(熱線)も吐けるし。
それもありだし、あるいはハイブリットなのかもしれない、とのことだった。
だが実際に炎を噴くなら、ともう少し詰めて頂いた。

例えば、発火性のガスを発生させる細菌を共生させ、ボンバルディア・ビートルのようにそのガスを溜める臓器があり、ガスを勢いよく噴出できる腺が口や鼻に繋がっていたら、高温の煙を出したり、火を噴くことは可能と思われる。火は口の中から直接吐くのではなく、発火性のガスを噴いた瞬間に、例えば発火しやすい素材でできた歯を噛んで飛び散った火花に着火させれば、口から前方方向に火炎放射することは可能だろう。硬い鱗で覆われているため、自分が火傷する心配もなかったと思われる。

聖獣レヴィアタンのリアル生物学的考察とレンタル博士の可能性について

共生細菌…!! これはまったく思い至らなかったので感動した。
体内に炉があるから体温も高いのでは? くらいのことしか考えられていなかったのだ。
しかし体内でガスが生成出来れば「火を噴く」ことは可能。成る程!!
余談だが歯で着火し火炎放射、で実写版映画ハガレンのロイ・マスタング大佐の炎描写を思い出していた。あれは非難囂囂だったが(私もそう思う)、火花さえ生み出せれば火炎攻撃は出来ただろう、と。
それなら海の生き物なのに火属性持ちなのも納得できる。

さて、レヴィアタンは「あまりにも凶暴だったのでつがいの片方が間引かれた」とされている。
ここも聞いてみた。
凶暴というより、海のいきものを捕食している=肉食、捕食の際に攻撃性が高い様子なのではないかとのことだった。
ただでさえ大きいので常時暴れまわるエネルギーは無いだろうと。
寧ろ、普段はゆっくり動き、捕食の時に瞬発力を発揮し、それ以外の時は海中で大人しくしていることが多いのではないか、と。
やだかわいい。
喰いちぎったりはせず飲み込むタイプであろうこと、それほど動かないのなら人間と遭遇する頻度は低かったであろうこと。
これはレヴィアタンに「英雄譚」が存在しない事にもつながると思った。
レヴィアタンは巨大な龍だが、これにありがちな「退治されるエピソード」を持たないのである。
というか英雄が退治する前に創造主が間引いた。
華々しい冒険譚があったらハリウッドで題材にされて単独映画とか作られてたんじゃないかなぁ!! と日々口惜しく思っているのだが、逆に考えれば「退治されていない」「間引かれず残った方は不老不死とされた」らしいので、今も地中海あたりを悠々泳いでいるのかもしれない。レヴィアタンはまだ存在している!(かもしれない)と思うことで今日も私はつらい現実を生き延びている。

そして他に海面に上がってくるのは「呼吸するとき」だろうということだった。
爬虫類なら肺呼吸なので、何時間おきかはわからないが海面に出て息をする必要がある。
「鼻先だけ出せば充分なので危険もないでしょうし」
えっかわいい!!
トンデモ巨体の鼻先だけ出してぷくぷく息してまた潜っていくの!? かわいい!!
まぁそのアップダウンだけで海は鳴門海峡みたいになるかもしれないから人間から見れば災害だが。
そこはそれ、神代の龍は人間など気にしないのである。
あと爬虫類でも、これだけの巨体なら体温を維持できるだろうとのことだった。レヴィアタンはあったかい生き物。かわいい。

そして──ついにこの疑問をぶつけた。
「レヴィアタンは美味しいのか?」
最後の審判の日、陸の獣ベヒモスと死ぬまで戦い、勝者は「罪なき者」たちの食卓に並ぶ…レヴィアタンの最期はこう決定されている。
だったら、美味しいんじゃないか。
ずっとこれが持論だった。
ちなみに母に与太として言ってみたところ「海の幸なんだから美味しいでしょ」だった。醤油かける気だ。
気になって自分で調べた範囲では、蛇やウミヘビは「旨味が強い」、爬虫類は「鶏肉に近い」、筆者が唯一食べたことがあるのがワニなのだが淡泊ながら結構イケた。
この辺りを考えてもらった。
まず、とんでもなく大きく(長く)、鱗が硬いとすれば、関節がとても多いだろう。そして鱗の下には分厚い組織があり、そこは恐らく美味しいのではないか。
ただ、刺身には向かないと思う。とのこと。文化圏も違うし。
世界最後の日にはレヴィアタンの唐揚げが振る舞われるのかもしれない。
ベヒモスが勝った場合は…あっちは草食だし、もしかしたら牛肉に近いのかなぁ…ステーキかなぁ…。
ちなみに罪あるものは先にレヴィアタンとベヒモスにばくばく食べられるそうです。喰うか喰われるか。

私はほぼ日本語の資料しか見ていなかったのですが、博士が英語版のWikipediaなどを見ては? と提案。Google翻訳すると、なんと大きさの記述があった。英語wikiによると300マイル。約500km。
「4000kmのが嬉しいです」と泣いたため4000kmということで話しを進めてもらった。いや500kmも充分でっかいんですがね。
ちなみに、大きさより「長さ」なのと海中なので割と自重問題は大丈夫なんじゃないか、とのこと。やった。
あと英語版の聖書はレヴィアタンを「He」としているのでオスかも、など。
実在していない以上、考察材料は文だけなので「オリジナル(原文)を見た方がいい」と強く勧めてもらった。
……ヘブライ語とかだろうか。
今から勉強できるだろうか。
英語も読めないのだが。
割と真剣に悩みつつ──レヴィアタンに対する解像度はかなり上がったと言えるだろう。
残った時間は折角なので博士の本業である「マンボウ」をたっぷり解説してもらい、時間は早かったがお開きにした。

宗教的、歴史的ではなく「生物学的にレヴィアタンを考察したい」──
この無茶ぶり(というか、失礼)を受けて下さった博士には感謝しかない。
「空想科学」ということで記事掲載して下さったラボブレインズ様も、ありがとうございます。
この世でレヴィアタンに興味を持ってくれた人が増え、もしこの記事を読み、少しでも足しになったらいいな、と夢想しております。
レヴィアタンはいいぞ。
きっと海のどこかで、クジラなんかをぱくつきつつ巨体を丸めゆったり寝ている姿を想像しながら、私は穏やかな気持ちになるのです。


懺悔コーナー

ラボブレインズ様の記事での博士の説明部分。

依頼主はあるアニメ作品で好きになったキャラクターが、アプリゲームで「レヴィアタン」をモチーフにした衣装を着たことがあり、それがきっかけで調べ始め、気付いたら元ネタである「レヴィアタン」にはまっており、もっと色んな情報が欲しくなって、一応海洋生物学者でもある私に今回依頼してきたという、そんな理由!?と思わず言いたくなるような経緯だった。

聖獣レヴィアタンのリアル生物学的考察とレンタル博士の可能性について

そんな理由ですごめんなさい。
いや、これには訳がある。
Twitterで「レンタル博士」がバズった二年前。
「架空の海のいきものについてレンタル博士に聞けないかな!」というようなことを呟いたところ「それも楽しそうですね!」とのリプを牛マンボウ博士からもらったことがあり、「いつか依頼します!」と返していた。
これで頼まないのは言い逃げだとずっと気を重くしていたのでようやく連絡できたと思っていたのだが
博士は忘れていたし依頼された内容に非常に困惑されていて、
つまりあれは冗談の範疇だったらしいごめんなさい。

そう、記事を読んでようやく気付いたのです。
専門家の方に専門外の依頼をしてしまったというトンチキに。
海洋生物の専門家の知識がお借りできる! ということに目がくらみ
マンボウの研究だけで生きていく! と決意されている博士にマンボウ以外の考察をして頂いてしまった。
すみませんでした(土下座)
ですが、非常に有意義で、非常に為になりました。沢山のことを知れました。
博士の著書は読破済でしたが、オンラインなのとkindle購入なのでサインは諦めたものの
現在確認されているマンボウの種類の見分けくらいは出来るようになりました。
お付き合いいただき本当にありがとうございました。

ここまで読んで頂いた方もありがとうございます。
神獣としても、悪魔としても、レヴィアタンはとても魅力的な存在だと思います。
「ちょっといいかも」と思ってくれる人が、少しでも増えたら嬉しいです。
レヴィアタンはいいぞ。

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