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豆腐
豆腐と題するエッセイの中で、向田邦子は、いいます。
「子供の時分、豆腐は苦手であった。おみおつけの実や鍋ものに、よく食卓にのぼったが、こんなもの、どこがおいしいのかと思っていた。色もない、歯ごたえもない。自分の味もない」。
Sもまた、豆腐を嫌います。外で一緒に食事をして、思い掛けずそれが紛れ込んだ料理に出くわせば、黙って皿を私に差し出します。
豆腐が好きでも嫌いでもない私は、「またか」といいながら、それをつまんで口に放り込みます。ありがたみに欠ける食材だけど、忌み嫌う対象とも思えません。
それでも、Sの白黒の付け方が、私は、割合と好きです。
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