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向田邦子(3)
向田邦子さん同様、お気に入りの手袋が見付けられない私も、両手をポケットに突っ込んでやせ我慢しながら歩き続ける自分のこの先を心細く想像します。
別に、高望みしている気はありません。たかだか手袋1双、すんなり調達できない自分には、人並みの能力が欠如している、と負い目を感じてもいます。
その癖、しっくりくる手袋を探し回る風でもなく、ただ漫然と日日をやり過ごしている間に、人並みの温もりを味わうチャンスを随分と逃してきた気もします。
「たったひとつ私の財産といえるのは、いまだに「手袋をさがしている」ということ」。彼女は、言い切ります。その覚悟もない私は、また心細くなります。
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