株主総会の問題点 ~参加できない、必要な報告がない~
株主総会の在り方については、いろいろな問題点が指摘されています。
私が重要な問題と考えていることは
「株主が、現実的には、株主総会に参加しにくいこと」
「株主に対して、株主総会であったことを報告している企業が少ないこと」
の2点です。
問題点1.株主が株主総会に参加にしくい
みなさん、上場企業の株主総会に出席したことがありますか?
ほとんどの方は「出席したことがない」と思います。
理由はいろいろ考えられますが、
(理由1) 平日の午前中に開催される、という曜日、時間帯の問題
(理由2) 総会日が複数の会社で重複してしまう問題
(理由3) 上場企業の大半は、東京に本社があり、株主総会も東京で開催されるという場所の問題
の3点が大きいでしょう。
(理由1) 曜日、時間帯の問題
これについては、土日開催にすることや、平日の夕方以降開催にすることで、参加しやすくなる株主がいることは確かです。
一方で、土日開催、平日の夕方以降開催にすることで、参加しにくくくなる株主がいることも確かですし、経営陣や従業員に業務時間外の労働という負荷をかけることにも繋がります。
(理由2) 日程が重複する問題
これについては、やむを得ない側面もあります。
上場企業が約3,900社ありますから、株主総会を1年365日にきれいに分散させたとしても、1日平均10社の株主総会が開催されることになります。
よって、日程が重複することは、やむを得ないともいえます。
とはいえ、日程を分散させる努力は行ってほしいところです。
(理由3) 東京開催であるという問題
これは、深刻な問題だと思います。
例えば、北海道に住んでいる人にとって、東京で開催される株主総会に参加することは、コストの面からも時間の面からも、非現実的です。
もちろんなかには、それだけのコストと時間をかけられる人もいるでしょうが、ごく少数です。
以上、3つの理由について、解消することは簡単ではないです。
つまるところ、株主が株主総会に参加できるようにするためには、インターネットを用いた株主総会にせざるをえないです。
近年、インターネットを用いた株主総会の開催は、コスト的にも技術的にも、身近なものになりつつあります。
よって、株主総会については、必ずオンラインで視聴できる環境の構築を義務付けるべきだと考えます。
コーポレートガバナンスコードの1丁目1番地
コーポレートガバナンスコードにおいても、1丁目1番地に株主の権利が実質的に確保されることが求められています。
理想は、オンラインで株主総会を視聴し、さらにそこから議決権行使ができることです。(いわゆるバーチャルオンリー株主総会や、ハイブリッド型株主総会)
そこまではコスト・技術面から困難である場合でも、少なくとも当日の様子を生中継で配信するウェブキャスト型株主総会は義務付けてほしいところです。
また、当日、オンラインでも参加できない株主のために、アーカイブを速やかに自社IRページ上で公開すべきと考えます。
なお、コーポレートガバナンスコードの原則1-2においても、株主総会における権利行使に係る適切な環境整備を行うべきことが定められており、真っ当な原則となっています。
補充原則1-2④は個人投資家軽視で誤り
ところが1点、非常に残念な点があります。
残念な点、わかりますか?
コーポレートガバナンスコードでは、株主を平等に扱うべきことが繰り返し主張されているにも関わらず、「少なくとも機関投資家向けに議決権電子公司プラットフォームを利用可能とすべきである」と、まったくもって不平等な記述があります。機関投資家優遇、個人投資家軽視です。
補充原則1-2④として示されていますが、明らかに株主の平等に反する記述です。
補充原則としてではなく、「株主平等の原則に反する禁忌」として示すべきでしょう。
こういうところに、市場関係者は誰もハッキリとは言わないが、心の中で思ってる「個人投資家軽視」の本音が透けて見えるように思うのは、私の考えすぎでしょうか。
問題点2.株主に対して、株主総会の報告をしている企業が少ないこと
株主総会の動画公開を必須とすべき
仮にすべての企業がバーチャル株主総会を開催したとしても、やはりこれに参加できない投資家は出てきてしまいます。
このため、株主総会の当日の様子を動画で収録し、公開するのは、やはり上場企業にとって必須だと考えます。
少なくとも、議事録を作成し、これを公開すべきでしょう。株主総会において社長からの報告事項については、基本的に招集通知に掲載されているとおりですから、招集通知に記載されてない報告事項があれば、それは動画ないし議事録の形で公開すべきですし、株主からの質疑と経営陣からの応答についても、動画ないし議事録の形で公開すべきです。
これはコーポレートガバナンスコードに従い、上場企業に当然求められるものだと考えます。
ところが、これを実行している企業が、非常に少ないです。
この株主総会の報告が行われていないことが、株主総会の第2の重要な問題点です。
もちろん、株主総会の様子を動画等で公開している企業もありますが、非常に少ないのが現状です。
社外役員、女性役員の議論は順番が違う
昨今、メディア等では、社外役員の人数を1/3以上に、とか、女性役員の比率が30%以上といったことが話題にあがります。
これ自体は、取締役会の多様性を確保し、多角的かつ実効性ある取締役会の実現に有効であると思います。
けっこうな議論です。
ただし、そもそもその前提として、株主総会が有効に機能していることが必要です。
機能不全の株主総会で、どれだけ社外役員を選任しても、女性役員を選任しても、それは不十分なものであると考えます。
個人株主がロクに参加もできない株主総会、
何が議論されたか、当日参加した人しかわからない株主総会、
機関投資家にだけ議決権電子行使が可能な株主総会、
そのような株主総会の改善こそが、1丁目1番地の問題として解決すべきでしょう。
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