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最後の夜は摩訶不思議

お題……今日ピアスを買った。で始まり、最後は雪じゃなくてポップコーンが降り積もった。
2000字以内。

 今日ピアスを買った。
前から欲しかったものだ。
右に三つ左に二つ。
このピアスには不思議な力があるらしい。アハハ、まあね裏情報だから。
本当かどうかはやってみなきゃ
判らない。
成功してるとは書いてはあるけど。ネット情報だから~。
それに誰でもが買える訳じゃない。ってところもみそでしょう。売主が何に使うか聞くの。電話でね。
その理由によっては売ってくれない。私の理由はクリアしたから買えたんだけどね。
あ~ワクワクする。
何着ていこう……やっぱり赤ね。
あの人が好きだって言ってくれた
あのシャネルスーツ。

いつものバーで待ち合わせ。
少し早かったかな。
興奮気味にお店の扉を開けると、
マスターが笑顔で迎えてくれた。
「久しぶり。元気?」
「はい! 元気です」
続いてあなたが入って来た。
「お待たせ」
「私も今来たとこ。今日は有難う」

私たちはたわいない話をしながら
そこそこ飲むと店を出た。

私は甘えるように腕を絡ませて
「ねぇ~最後の夜なんだから……
いい? いいよね……」
涙ぐむ私に負けたあなたは、
「判ったよ。これでお終いだから。いいね」
「判ってる」

いつものホテルへ。

部屋に入るなり唇を貪られ、
ベッドに倒された。
「慌てないでっ、ゆっくり味わいたい」
あなたは苦笑い為ながらベッドに座り直すと、
「やっぱり似合うよ。その色。
ピアス新しい? それもいいな」
私は隣に座り、
「嬉しい……気づいてくれたの。うふふ、可愛いピアスでしょう?
触ってみてよぉ。良いことあるんだって」
訝しげに見ていたあなたも、これで最後だと思う気持ちが心に隙を作る。

両手で耳たぶを触ってくれる。

「ねえ、今ここに雪が降ってきたらどうする?」
「雪?なんだ?それ」
それでも暫く真剣に考えていた
あなたは、
「雪かぁ。良いね、おつだよ。
でも冷たくない雪お願いします」

「ああそうだねぇ~その手があるね」
私は目を閉じて呟く。
「冷たく無い雪。白い何か、マシュマロは好きでは無いので……他でお願いします。出来ればあれで。あなたはこのピアス触っていてね」

突然照明が消えた。
と次の瞬間、ドッサリ、ドッサリドッサリと重たいものが私たちの上に降ってきた。
これでもかと降ってきた。
「重たい~苦しい~あっ~」
私だって苦しい……もうダメ。
あなたの声が、途切れ途切れに聞こえる!
「冷たいく無いって……で……」
あなたの手が急速に冷たくなる。
雪のように、氷のように。
  
 ああ~笑える。明日のニュースに出るかしら。
速報……
 ラブホテルで変死体! 
三十代男女が白い物体に押し潰され、窒息死した模様。
白い物体は、ポップコーンと断定された

 あなたは私だけのもの。
幸せだね。ねぇ……うふふ。
前に話してたね。あなたさポップコーンを死ぬほど食べたい。
それくらい好きだって。
ポップコーン食べ過ぎで死ぬなんて笑える。

 だから私たちの最後はこうしたよ!この部屋中いっぱいに、雪じゃなくてポップコーンが降り積もった。

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