166-車に轢かれる菜緒 Ⅳ
そして病院に着くと、久美たちもすでに着いていた。
美玖:お待たせ
久:大丈夫、じゃあ中に入ろっか…
救急外来の入口から中に入り、スタッフステーションに向かう。
医師:…佐々木さん、ご案内します
昨日の担当医の方が気付き、ICUまで案内してもらう。
医師:面会される方は手指の消毒をお願いします
久:…最初、私と史帆とひよりと芽依で行くね
〇:うん…
4人が最初にICUに入り、他の5人は外で待機する。
久:……菜緒…
史:…こんなに傷だらけになっちゃって……
菜緒のベッドのそばまでやってきた4人が見たのは、全身にガーゼが当てられ呼吸器を着けられた菜緒の姿だった。
ひより:菜緒お姉ちゃん……
芽依:……。
続いて、美玖と愛萌と陽菜が面会に向かう。
美玖:愛萌、大丈夫…?
愛:大丈夫…
陽菜:……。
美玖:…人の気も知らずに呑気に寝てるわね……
愛:…ほんと、相変わらずアホみたいな寝顔で……
そして最後に、〇〇とひなのがICUの中に入る。
〇:……ほんとにアホ面で寝てる…
ひなの:…起きたら説教しないとね……
〇:そりゃそうだ、こんだけ心配かけてんだから……
そして〇〇とひなのが面会を終えたところで、医師から説明を受けるため個室に通される。
医師:菜緒さんの状態ですが…、
医師:肺・肝臓・腎臓と大腸の一部が損傷、眼窩・鼻骨・右上腕骨・胸骨・坐骨・右大腿骨・両下腿骨・右踵骨を骨折、さらに下肢神経が一部損傷しており、最悪後遺症が残る可能性があります…
全:っ……。
菜緒の状態の酷さに全員が言葉を失う。
久:…菜緒は生きているんですよね……?
医師:えぇ…、ただ必ずしも意識が戻るとは限りません……
医師:このまま植物状態になる可能性も……
愛:…菜緒……(涙)
〇:愛萌姉ちゃん……
愛萌はその場に泣き崩れ、〇〇に支えられ外に出る。
◇
そして〇〇と愛萌がしばらく外で待っていると、7人が部屋から出てきた。
久:…では、妹をお願いします
医師:最善を尽くします
医師にお辞儀をし、病院を出る。
美玖:愛萌、立てる?
愛:うん…
駐車場に向かい、車に乗り込む。
〇:じゃあ俺、行くところあるから先に家帰ってて?
美玖:分かった
〇〇は他の人たちと分かれ、駅に向かう。
バスと電車を乗り継ぎ、〇〇がやってきたのは……、
(ピンポーン)
好:はい…
〇:ごめんね、来ちゃった
好:いえ、上がってください
松田家だった。〇〇は好花の部屋に通され、ラグの上に座る。
好:…菜緒さんの状態はどうなんですか……?
〇〇は医師にされた説明を好花にする。
好:そんなに……
〇:ほんとにね……
〇〇は頭を抱える。
好:〇〇さん……
好花は〇〇を後ろから抱きしめる。
好:大丈夫です、あの菜緒さんなんですから
好:きっとまた騒がしい菜緒さんは戻ってきますよ
〇:…松田から見ても菜緒姉ちゃんは騒がしいんだな……(苦笑)
好花の言葉に口角が上がる〇〇。
好:あっ、笑った(笑)
好:もう…、私たちがいないと笑顔になってくれないんですから…(苦笑)
〇:…まぁな……
好:〇〇さん、そこは否定するとこです
〇:……(苦笑)
すると、芽実が部屋にやってきて、彼氏に抱きついている自分の姉を目撃する。
芽実:……まぁ、〇〇さんが元気になるなら…(苦笑)
〇:…なんか盛大に勘違いされている気が……
好:(笑)
◇
そうして好花たちに元気をもらった〇〇は、松田家を後にし家に帰る。
〇:ただいま
史:おかえり
〇〇は荷物をソファの横に置き、そのままソファに横たわる。
史:…さっき、美玲ちゃんから電話あったよ
〇:…なんだって?
史:陽世ちゃん、だいぶトラウマになっているっぽい……
〇:……。
〇:…そうか……
〇〇はスマホを開き、現実から逃避し始める。
史:……。
史帆もその姿を見て、台所で夕食の準備に戻る。
◇
その頃の陽世は…、
ぱ:……。
自室でベッドに潜っていた。
(コンコンコン…)
み:入るよ…?
美玲が部屋の中に入り、陽世のベッドの横に来る。
み:…菜緒さん、一命を取り留めたって
ぱ:……そう…
み:…きっと陽世が思っているようなことにはならない、大丈夫だよ、日本の医療技術は世界トップクラスなんだから…
まるで自分に言い聞かせるように陽世に声をかける美玲。
ぱ:……あの光景がフラッシュバックするんだよ、身近な人が死ぬかもしれないって…
み:……。
ぱ:…一命を取り留めても意識が戻る確証はない……もしかしたら…
み:陽世、それ以上は言っちゃダメ
二人の間には長い長い沈黙が流れた。
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