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音楽室の後輩

僕には毎日昼休みに向かう場所がある。

〇:今日もいるかな~

そう呟きながら音楽室のドアをそっと開ける

🎶~

音楽室の中では後輩の山口陽世ちゃんがピアノを弾いている。

陽:…先輩、今日も来たんですね

〇:陽世ちゃんのピアノをBGMに弁当食べるのが良いんだよ

陽:先輩って物好きですよね、誰も来ないようなところにわざわざ来て、私の下手なピアノをニコニコしながら聞いているなんて

〇:僕にはきれいな演奏が聞こえるけどね

陽:…先輩ってお世辞下手ですね

〇:お世辞じゃなくて本音だからね

陽:そんなんだから友達いないんですよ

スバブーッ

〇:ケホッケホッ、人の心を抉ろうとしないでくれ

陽:事実ですから

〇:あっそうですか

僕はもう黙って弁当を食べることにした。

🎶~🎶~

〇:…それなんて曲?

陽:…ドビュッシーの「亜麻色の髪の乙女」です

〇:何それ?

陽:ピアノクラシックの定番、ですね

〇:へぇ~(全っ然分かんねぇ…)

〇:「ツィゴイネルワイゼン」とか「我が祖国」とか弾ける?

陽:…単なる馬鹿かと思ったら意外と教養はあるんですね

〇:先輩に何ちゅう口聞いてんだよ(笑)

陽:…ふふっ(笑)

🎶~🎶~

〇:すげぇ…

陽:まぁ、天才なので(笑)

〇:じゃあさ、jpopとかも弾けたりする?

陽:楽譜があれば弾けないこともないです

〇:明日持ってくるからそしたら弾いてね

陽:分かりました

〇:…そういえば陽世ちゃんって何組だっけ?

陽:……1年2組です

〇:分かった

そう言ったあと、僕は弁当箱を片付けて音楽室を後にした。

放課後コンビニのコピー機で楽譜を購入して、次の日の朝、1年2組の教室に行った。

(コンコン)

〇:失礼します

※:どうしました?

〇:ごめん、山口陽世ちゃんの机ってどこ?

※:山口陽世?そんな人うちのクラスにいたっけ?

※:いや、いなかったと思う

〇:えっ、そんなはずは…

僕たちが困惑していると、教師がやってきた。

先:はーい、全員席につけ…って、〇〇お前何で1年の教室にいるんだ?お前2年だろ?

※:先生、山口陽世っていう生徒のこと知ってますか

〇:彼女にこの楽譜を渡しに来たんですけど

そう言って手に持っていた楽譜を見せる。

先:山口陽世……なぁ〇〇、どこで山口に会った?

〇:えっ、校庭挟んだ反対側にある音楽室です

※:先輩…音楽室はこの校舎の四階にしかないですよ

〇:いや、そんなはずは……

先:…〇〇、昼休みに職員室に来てもらえるか

〇:……分かりました

そして昼休み、職員室に行くとやけに教師からの視線を浴びた。

先:〇〇、こっち来てくれ

先生に呼ばれ、校長室に入る。

校長:君が〇〇君だね

〇:はい

校長:この写真を見てほしい

そう言って校長が差し出した写真には、

〇:陽世ちゃん……

先:やっぱりそうか…

校長:〇〇君、落ち着いて聞いてほしい、この写真は私の娘の写真だ、そして、娘は20年以上前に亡くなっている

〇:えっ……

僕は校長が言っている意味が全く分からなかった。

〇:でも僕は毎日会っていて、会話もしていて……

校長:陽世は高校生ピアニストとして数々のコンクールなどで賞をとっていたんだが、高校1年生の時に交通事故に遭ってそのまま……

〇:…音楽室は……?

先:老朽化を理由に数年後に立て壊されて今の音楽室だけになったんだ

〇:…そうですか

僕は席を立ち、校長室を後にした。

〇:(僕が見ていたものはすべて幻覚だったのだろうか)

僕はそのまま音楽室に…いや、音楽室があった場所に向かった。

〇:…何か落ちてる

音楽室があった場所には1枚の封筒が落ちていた。封を開け、中の便箋を開くと、

「〇〇君へ

 ついにバレちゃったな(笑)
 〇〇君が聞いた通り私はずっと前に亡くなっているよ
 じゃあ何でここにいたかって?
 理由は簡単!やり残したことがあったんだよね
 なんだと思う?
 正解は……『恋』だよ
 生きている間はピアノ一筋の人生だったから
 恋なんてしてこなかったんだよね
 だから〇〇君と一緒にいた時間は私にとって
 かけがえのない時間だったんだよ
 私の都合に振り回しちゃってごめんね?
 振り回したついでに私の両親に伝えてくれる?
 『親不孝な娘でごめんなさい
  二人の娘で最高な人生だったよ』って
 よろしくね

 山口陽世より」

〇:…ツンデレ彼女か……

僕はそっと封筒をポケットにしまった後、校長室に向かった。

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