四人姉妹の温泉旅行
〇〇:寒っ!
姉妹四人で温泉旅行に来た私たち。電車を降りると、冷たい風が吹きつける。
美玲:〇〇、早くしないとバス行っちゃうよ?
〇〇:んっ
改札を抜け、旅館直行のシャトルバスに乗り込む。
ひより:わぁ〜、暖か〜い
陽菜:一番奥でいい?
美玲:いいよ座って?
私たちがシートに座ると同時に、ドアが閉まりバスが出発する。
〇〇:…駅前過ぎると一気に山だね
美玲:駅自体、山の中だからねぇ…
40分ほどバスに揺られると、旅館の前に到着した。
運転手:雪で足元滑りやすくなっておりますので、お気をつけてお降りください
美玲:〇〇、降りるよ
〇〇:うん
ボストンバッグを抱え、バスから降りる。
陽菜:気をつけてよ?
〇〇:大丈夫(笑)
そんなことを言った束の間、
(ズルッ)
ひより:あぶっ…!
雪に足を取られ、転びそうになったところをひよりお姉ちゃんに支えられる。
陽菜:だから言ったじゃん(苦笑)
〇〇:お姉ちゃんありがとう…(苦笑)
気を取り直して、旅館内に入る。
美玲:すみません、チェックインをお願いしたいんですけど…
チェックインを済ませ、部屋の鍵を渡される。
ひより:部屋どこ?
美玲:渡り廊下歩いた別館だって
陽菜:渡り廊下で〇〇がまたコケるよ?(笑)
〇〇:もうコケないから!(笑)
渡り廊下を無事に渡り、別館の部屋に到着する。
ひより:おぉ、広い…!
鍵を開け部屋に入ると、8畳と16畳の二間にトイレ洗面台のついた立派な部屋だった。
陽菜:早速浴衣に着替える?
〇〇:うん
荷物を端のほうに置き、用意されていた浴衣を手に取る。
着ていた洋服を脱ぎ、浴衣をあてる。
美玲:身体細いねぇ…(笑)
〇〇:見ないでよ…///
帯を巻いたら、形を整える。
〇〇:よしっ
陽菜:早っ!(笑)ちょっと手伝って?(笑)
〇〇:しょうがないなぁ(苦笑)
浴衣を着終えたら、陽菜お姉ちゃんの手伝いに入る。
陽菜:…高校生なのにお姉ちゃんより背高いの、なんかムカつく…
〇〇:なんでよ(笑)
身長が170cm越えの私と150cm代前半の陽菜お姉ちゃんでは、大人と子供のよう身長差だった。
美玲:みんな着替え終わった?
ひより:終わったよん
〇〇:陽菜お姉ちゃんはもう少し
〇〇:…よしっ、オッケー
陽菜:ありがと
美玲:じゃあ、はい
美玲お姉ちゃんから羽織を渡され、袖を通す。
美玲:下の土産物屋さん回ろ?
下駄を履き、最低限の荷物を持って部屋を出る。
フロントの前を過ぎようとしたとき、仲居さんに呼び止められた。
仲居:外は寒いでしょうから、もしあれでしたら足袋の用意もございますが…?
ひより:…借りる?
〇〇:うん
美玲:四足お願いします
仲居:かしこまりました
近くの椅子で足袋を履き、エントランスから外に出る。
(ザクッサクッ)
美玲:…カイロ貼ってても寒いね(笑)
刺すような寒さが肌に直撃する。
陽菜:どっち行く?
〇〇:…右?
美玲:右?じゃあ行こっか
慣れない足袋と下駄に苦戦しながら、雪道を歩く。
店員:いらっしゃいませ
一軒目の土産物屋さんに入ると、店員さんの元気な声が響く。
美玲:…この辺は柚子が有名なんだね
入口入ってすぐのところに、柚子を使った商品が陳列されていた。
店員:試食します?
陽菜:いいんですか?
店員さんが柚子のジャムをスプーンに載せて持ってきてくださった。
美玲:いただきます
ひより:…ん〜!美味しい!
〇〇:…買う?
美玲:うん、真ん中の大きさでいいよね…?
その他にも店内を見て回る。
陽菜:お手玉ある
〇〇:お姉ちゃん出来ないじゃん(笑)
陽菜:そういう〇〇は出来るの?
〇〇:出来るよ(笑)
片手でお手玉を二つ手に取り、そのままお手玉を回す。
陽菜:出来るんかい!(笑)
ひより:おぉ、すごい!
ひよりお姉ちゃんがスマホで動画を撮る。
〇〇:……っぶな…!(笑)
危うく落としそうになり、お手玉を掴む。
〇〇:悴んでるからやりにくいわ(笑)
店員:お手玉お上手ですね
〇〇:ありがとうございます(笑)
既にお会計を済ませていたらしく、そのままお店を後にする。
店員:ありがとうございました〜
続いての甘味処では、おしるこや甘酒など温かい食べ物が勢ぞろいしていた。
店員:いらっしゃいませ
美玲:みんな何にする?
〇〇:〇〇おしるこ
ひより:ひよたん甘酒
陽菜:陽菜もおしるこ
美玲:じゃあ、おしるこ二つに甘酒一つ、それとおうどん一つで
店員:かしこまりました
〇〇:いただきます
〇〇:(フーッフーッ)
猫舌なのでしっかりと冷ます。
ひより:…美味しい?
〇〇:うん
〇〇:…甘酒飲ませて?
ひより:未成年にはあげませ〜ん(笑)
〇〇:……ケチ…
美玲:お姉ちゃんのうどん食べる?
〇〇:いただきま〜す
美玲:あ〜ん…
〇〇:んっ…、あっふ……!
美玲:(笑)そりゃそうでしょ(笑)
口の中で必死に冷ます。
陽菜:火傷してない?(笑)
〇〇:……たぶん…(涙)
こぼれた涙を指で拭う。
おしるこを飲みながら、次のお店を探して歩く。
〇〇:…ごちそうさま
美玲:ゴミもらう
〇〇:んっ
美玲お姉ちゃんに空き容器を渡し、ティッシュをもらう。
陽菜:次どうする?
ひより:寒いしそろそろ戻ってもいいけど
美玲:(苦笑)
ということで旅館に戻る。
◇
陽菜:ただいま〜
部屋に入ると、既に布団が敷かれていた。
ひより:ダ〜イブ!
陽菜:陽菜も〜!
二人が布団に突っ込む様を呆れて見つめる私と美玲お姉ちゃん。
〇〇:……お茶飲も…
美玲:私のもお願い…
急須にお茶っ葉を入れ、ポッドからお湯を注ぐ。
〇〇:はい
美玲:ありがと
お茶を注いだ湯呑みを一つお姉ちゃんに渡す。
陽菜お姉ちゃんとひよりお姉ちゃんは布団の上で寝返りを繰り返している。
〇〇:〇〇たちの布団乱さないでよ?
ひより:分かってま〜す(笑)
座卓に座り、スマホを開く。
美玲:…晩御飯何時だっけ?
〇〇:……19時って言ってなかった?
美玲:…あと一時間半か……
外を見ると、既に日は暮れ真っ暗になっていた。
〇〇:……ボウリングでもしてこよっかな…?
美玲:行ってらっしゃい(笑)
布団にいる二人に目をやると、寝ているようだった。
◇
ボウリング場に着き受付を済ませると、靴を履き替えてレーンに立つ。
〇〇:ほっ…!
(ガシャーン!)
〇〇:よっしゃストライク!
その後も好記録を出し、結果は276点。
5回ほどゲームを繰り返したところで、飽きてボウリング場を後にした。
◇
〇〇:……およっ?
部屋まで戻る途中、ワゴンを押す仲居さんが歩いていた。
〇〇:…晩御飯か……
仲居さんを追い越し、一足先に部屋に入る。
〇〇:ただいま
美玲:おかえり
〇〇:もうすぐ晩御飯着くよ
美玲:あらそう?…陽菜、ひより、そろそろ起きて〜
ひより:ん〜
陽菜:晩御飯?
美玲:もうすぐ着くって〜
すると、
仲居:失礼致します、お夕食お持ちしました
美玲:ありがとうございます
座卓の上を片付け、料理を置いてもらう。
仲居:それではごゆっくりお召し上がりください
四人:ありがとうございます
仲居さんがはけていったところで、座椅子に座り手を合わせる。
四人:いただきます
陽菜:ん〜、美味し〜!
美玲:…にしても、やっぱり旅館の料理って量多いよね…(苦笑)
〇〇:はぁ…(笑)
ひより:まぁ〇〇は運動部だし全然余裕だわな(笑)
〇〇:うん(苦笑)
そうして夕食を食べ終え、温泉に入ることに。
着替えとタオルを持って大浴場に移動する。
◇
陽菜:意外に人少ないね…
大浴場に入ると、人はまばらだった。
〇〇:みんな晩御飯の前に入るんでしょ?
洗い場で身体を洗い、髪の毛の水を絞って纏めたら、掛け湯をして湯船に足を付ける。
〇〇:ふぅ〜……
そのまま腰を下ろし、肩まで浸かる。
〇〇:…あ"ぁ……
ひより:…なんかおばさんみt…いでっ!
余計なことを言ったひよりお姉ちゃんのこめかみに手刀を叩き込む。
美玲:ほらそこ暴れない(笑)
四人で並んで湯船に浸かる。
陽菜:……胸まで大きいのね…
〇〇:…人の胸を見るな(笑)
腕を組んで胸を隠す。
ひより:でも〇〇ってスタイルいいよね…(笑)
ひより:背高いし顔ちっちゃいし足長いし胸おっきいし…
〇〇:…それ全部お姉ちゃんもだけどね(苦笑)
◇
一時間弱ほど暖まったところで湯船を出る。
タオルで全身の水気を拭き取り、髪をタオルでまとめたら浴衣を着付ける。
美玲:三人とも、牛乳飲む?
陽菜:飲む!フルーツ牛乳ね
ひより:ひよたん、コーヒー牛乳
〇〇:〇〇もコーヒー牛乳
美玲:分かった
美玲お姉ちゃんからコーヒー牛乳の瓶を受け取り、蓋を開ける。
陽菜:…〇〇、ちょっと開けて?
〇〇:なんで開かないのよ(笑)
片手で陽菜お姉ちゃんの牛乳瓶の蓋を開けてそのまま渡す。
陽菜:すごっ!
〇〇:蓋拾っといて?
コーヒー牛乳を飲み終え、髪を乾かす。
(ブォォォォ……)
ひより:…長いね(笑)
長い上に毛量の多い私の髪は、乾かすのに人一倍時間がかかる。
〇〇:…疲れた、あとお願い
ひより:はいはい(笑)
ひよりお姉ちゃんにドライヤーを渡し、代わりに乾かしてもらう。
ひより:……はい、終わったよ
〇〇:ありがと
脱衣所を出て渡り廊下を歩いていると、
陽菜:雪降ってる…!
ひより:ほんとだ…!
〇〇:…寒っ……!
美玲:(苦笑)
部屋に戻ると、ひよりお姉ちゃんと陽菜お姉ちゃんが羽織を脱いで布団に沈む。
〇〇:ふぁ〜……
カバンからポーチを取り出し、スキンケアをする。
美玲:…髪の毛上げた〇〇って赤ちゃんみたいで可愛いよね(笑)
〇〇:…うるさい……///
可愛いと言われて満更でもないが、恥ずかしいので照れ隠しをする。
スキンケアを終え、学校の課題を座卓に広げる。
美玲:…冬休みの課題?
〇〇:そう…
美玲:ちゃんとやってんだねぇ…(笑)
〇〇:……。
勉強する私の後ろでは、二人が暴れまわっている。
〇〇:ふぁ〜……
美玲:…眠いの?
〇〇:うん……
美玲:(笑)
◇
〇〇:……んっ…
いつの間にか眠っていたようで、抱き上げられる感覚に目を覚ました。
〇〇:……お姉ちゃん…?
ひより:あ、起きちゃった?(笑)
ひよりお姉ちゃんにお姫様抱っこされて、布団まで運ばれる。
布団に置かれ、掛け布団をかけられる。
ひより:おやすみ
〇〇:んっ……
ひよりお姉ちゃんの浴衣の袖を掴んで引き留める。
ひより:何?(笑)
〇〇:…一緒に寝るの……
ひより:しょうがないなぁ…(笑)
ひよりお姉ちゃんを布団に入れて、そのまま抱きつく。
ひより:甘えん坊さん…(笑)
〇〇:……。
ひよりお姉ちゃんに頭を撫でられながら眠りについた。
◇
〇〇:んっ……
翌朝、空が白み始めた頃に目を覚ました。周りを見回すと三人はまだ眠っている。
布団から起き上がり、羽織を羽織る。ガラス戸を開けて外に出ると、掛け流しの部屋付き露天風呂が湯けむりを立てていた。
〇〇:はぁ〜……
息を吐くと、白い煙が空へと登っていく。
部屋からタオルを持ってきて、近くの岩の上に置く。浴衣を脱ぎ髪を纏め、湯に足をつける。
〇〇:熱っつ〜……
ゆっくりと腰を下ろしていく。
〇〇:ふぅぅぅ……
肩まで湯に浸かり、ふと遠くに目をやると、
〇〇:…サンピラー……!
ダイヤモンドダストが陽の光に照らされ、神秘的な光景を生み出していた。
◇
(ガラガラガラ……)
掛け流しを堪能していると、ガラス戸が開く音がした。音のした方に目を向けると、
美玲:おはよ(笑)
ひより:何独り占めしてんの(笑)
陽菜:陽菜たちも入ろっかな〜(笑)
三人が起きてきた。
美玲:私、足湯だけでいいや
ひより:じゃあひよたんも
陽菜:温泉に浸かってるの〇〇だけだね(笑)
三人が縁に腰掛け、足を湯の中に入れる。
(パシャパシャ…!)
〇〇:お姉ちゃん、飛沫飛んでるから…!
ひより:いぇい!
美玲:いぇい!じゃないわ(笑)
ひよりお姉ちゃんが足をばたつかせ、飛沫が飛ぶ。
美玲:……〇〇が露天風呂に入ってる姿って画になるね…
陽菜:横顔綺麗だもんね…(笑)
〇〇:うるさいわ…///
◇
身体が暖まったところで温泉から出る。身体を拭いて浴衣を着付ける。
部屋に戻ると、座卓の上に朝食が並んでおり、いい匂いを漂わせていた。
四人:いただきます
〇〇:…美味しい……
美玲:(笑)ご飯食べ終わったら帰る準備してね?
ひより:ほ〜い
そしてご飯を食べ終え、帰る準備を始める。浴衣を脱ぎ、洋服に着替える。
〇〇:…よしっ、準備完了
荷物をまとめて、準備を終える。
美玲:終わった?
〇〇:うん
陽菜:終わった〜
ひより:いいよ〜
浴衣を畳み、部屋を後にする。
フロントに鍵を返却したら、そのままシャトルバスに乗り込む。
陽菜:…いい旅館だったね……
ひより:うん……
〇〇:……また来る…?
美玲:……また来よっか
車窓から見える湯けむりが次第に遠ざかっていった。
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