169-現実逃避をする〇〇
〇:……。
(ダンダンダンダンッ……!)
(パサッ…)
貸し切り状態の市民体育館で、バスケットボールをゴールにシュートする〇〇。
〇:……。
(ガシャンッ…!)
〇:ふぅ……
〇〇はその場に座り込み、天井を仰ぐ。
〇:……。
??:おっ、いた
??の声がして、〇〇は声のした方を見る。
〇:……久しぶり、『美穂』
美穂:おひさ~
若:俺もいるぞ~
やってきたのは美穂と正恭だった。
〇:よくここが分かったな
美穂:まぁね~、13年の付き合いですから(笑)
〇:…俺がバスケクラブに入ったの3年生のときだけどな?
美穂:どっちでもいいわ!(笑)
若:〇〇は現実逃避したいとき、ひたすらにシュート打つ癖があるからな
〇:…よくご存じで……
美穂:…菜緒さんの容態は?
〇:意識は戻った、…けど、下半身に麻痺が残ってるし、記憶障害も出てる……
若:そっか……
美穂:そりゃ現実逃避もしたくなるわな…
美穂:…手伝おっか?
〇:いや、いいよ…
〇〇はボールを拾って立ち上がる。
(パサッ…)
〇:…お前ら二人に付き合ってたら疲れるから(苦笑)
美穂:お~い!
若:美穂はともかく、俺は違うだろ!(笑)
美穂:ぶっ飛ばすぞ(笑)
〇:……ほんと、夫婦漫才見てるみたい…(苦笑)
(パサッ…)
〇:二人はまだ付き合わないの?
若:う~ん、…美穂は俺の彼女になりたいと思う?
美穂:いや、いまさらマサに恋愛感情とか抱かん
若:ほらな?
〇:(苦笑)
〇:…まぁ恋愛感情だけが交際理由じゃないと俺は思うけど
(パサッ…)
美穂:どういうこと?
〇:『こいつと一緒にいると心地が良い』って理由で付き合うのもアリじゃない?
美穂:……。
若:……。
〇〇の言葉に、美穂と正恭が互いに顔を見合わせる。
(パサッ…)
〇:…ま、どうするかは二人の自由だけど
若:……なんで俺ら〇〇のこと励ましに来たのに、いつの間にか恋愛のアドバイスもらってんの?
美穂:知らん…(笑)
美穂は持ってきたバッグからボールを取り出し、シュート体勢に入る。
(パサッ…)
美穂:……でも仮に、私とマサと付き合ってもこの関係性が変わらない、っていう自信はあるよ?
〇:ふ~ん…、まぁそうだろうな
(パサッ…)
若:……(苦笑)
美穂:でもそのときは、ちゃんとしたところで告白しにきてね?
若:……そのときが来たらな?
〇:楽しみだな……(笑)
美穂:どんな告白してくれるんだろ~?(笑)
若:ハードル上げんな(笑)
そうして正恭もボールを持ちだし、三人で一つのゴールにシュートを放つ。
〇〇・美穂・正恭の絆が垣間見れる一場面です。
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