164-車に轢かれる菜緒 Ⅱ
佐々木家の面々が病院に集まっている頃、陽世は警察の方に家まで送ってもらっていた。
警察:この家で合ってる?
ぱ:はい、ありがとうございます…
パトカーから降り、警官にお礼を言って家の中に入る。
ぱ:ただいま…
佐母:おかえり…ってどうしたの!?
母親が陽世の服に着いた血を見て驚愕の声をあげる。
み:どうしたの?…何があった……!?
ぱ:…ゔっ……(涙)
み:陽世……?
顔を押さえて泣いている妹に、美玲はそっと抱き寄り頭を撫でる。
み:何があったの…?
陽世が少しづつ口を開く。
ぱ:……菜緒さんが…(涙)
み:…菜緒さん…?
ぱ:駅の交差点で轢かれてて……(涙)
み:……。
事情を察した美玲。陽世をギュッと抱きしめる。母親も陽世の背中をさする。
み:辛かったね…
ぱ:…ゔうぅぅぅ……(涙)
仲のいい知人の惨劇を目の当たりにし混乱状態の陽世を、ずっと美玲と母親はなだめていた。
◇
しばらくすると、陽世は泣き疲れてその場で眠ってしまった。
み:……寝ちゃったか…
佐母:部屋まで運んであげてもらえる?
み:分かった
美玲は陽世を抱っこし、2階の陽世の部屋に運ぶ。
ベッドの上に寝かせ、ティッシュで目元の涙を拭ったら、そっと部屋を出て1階に降りる。
佐母:…〇〇くんたちは大丈夫かしら……
み:分からない…
すると、
(🎶~🎶~)
美玲のスマホに着信が。
み:…〇〇くんからだ
み:はい、もしもし
〇📞:もしもし、陽世ちゃんは大丈夫ですか?
警察から陽世のことを聞いた〇〇が、心配して電話をかけてきたのだ。
み:大丈夫、菜緒さんの容態は…?
〇📞:分からないです、あの場に耐え切れなくって外に出てきちゃったので……(苦笑)
み:〇〇くん……
〇〇が気丈に振る舞っているのが、電話越しでも分かった。
み:…元気になって、またみんなで食事会できるって信じてるから……!
〇📞:美玲先輩……
み:心折れちゃダメよ、一番頑張ってるのは菜緒さんなんだから
〇📞:…そうですね、ありがとうございます
通話が切れ、美玲はスマホを机に置く。
佐母:…あんまり芳しくないみたいね
み:うん……
◇
一方その頃、美玲との通話を終えた〇〇は、植え込みに腰掛けうつむく久美の背中をさすっていた。
〇:菜緒姉ちゃん……
久:……。
〇:…陽菜たちの様子見てくる
久:……うん、行ってらっしゃい
〇〇は病院内に戻り、陽菜たちがいる待合室に向かう。
ひより:……あっ、お兄ちゃん…
愛:菜緒は…?
〇:まだ分からない…
〇〇も待合室のソファに腰掛ける。陽菜と芽依は泣き疲れたのか、ソファに横になって眠っていた。
〇:……ひより、明日も学校だろ?先帰るか…?
ひより:……うん
ひよりは少し迷った後、〇〇の提案に頷いた。
〇〇が陽菜、ひよりが芽依をおんぶし駐車場に向かう。途中、処置室の前を通る。
〇:明日学校だから先帰らせる…
史:うん、お願い…
駐車場に着き、寝ている二人を後部座席に座らせたらシートベルトを着けさせ、〇〇とひよりは前に移動する。そうして〇〇は車を発進させる。
〇:……。
ひより:……。
病院から家までの道のりの間、〇〇とひよりの間には沈黙が流れていた。
そうして家に到着した〇〇とひよりは陽菜と芽依を家の中に運び、それぞれのベッドに寝かせる。
〇:…何か食べるか?
ひより:ううん、いらない…
〇:そう……
◇
久:…まだ終わらないか……
病院内に戻ってきた久美は、史帆たちの隣に腰掛ける。
史:…なんで菜緒が……
ひなの:……。
美玖:……。
愛:……。
愛萌も処置室の前に戻ってきて、5人で手術が終わるのをただ待っていた。
◇
時計の短針がてっぺんまで向かう頃、『手術中』のランプが消えた。
美玖:…ランプ
史:えっ…?
全員が顔を上げ、立ち上がる。すると処置室の扉が開き、中から手術着姿の医師が出てきた。
久:菜緒の容態は……?
医師:…一命は取り留めましたが、予断を許さない状態です……
久:そうですか……
菜緒はICUに移され、久美たちは医師からの説明の後、家に帰ることにした。
◇
久:ただいま…
〇:おかえり…
久美たちが家に到着すると、〇〇が起きて待っていてくれていた。
〇:菜緒姉ちゃんは…?
愛:なんとか一命は取り留めた、って……
〇:…そうか……
全員、軽く夜ご飯を済ませ、お風呂に入ったらすぐにベッドに入った。
〇:……菜緒姉ちゃん…
〇〇が見つめる先には、鴨居に掛けられた菜緒のスーツがあった。
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