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大事な人やから

〇〇:……。

俺はこの日、東京でアイドル活動をしている幼馴染が帰ってくるのを新大阪駅で待っていた。

〇〇:……来た…

すると、前から幼馴染が歩いてくるのが見えた。

〇〇:おかえり、菜緒

菜緒:…うん……

過労による体調不良で休業を余儀なくされた菜緒は、いつにも増して口数が減っていた。

免許を取ったばかりの車に菜緒を乗せ、地元に向かう。

〇〇:……どう?俺の運転、上手い?

菜緒:……知らない…

〇〇:(苦笑)

菜緒はずっと窓の外を見つめている。

〇〇:…お昼、何か食べる?

菜緒:……なんでも…

〇〇:…ほんなら、お好み焼きでも食べ行くか

菜緒:……。

そして地元のお好み焼き屋にやってきた。

(ガラガラガラ…)

大将:へいらっしゃい

〇〇:奥の座敷空いてます?

大将:おぉ、うん、空いてる

奥の座敷に着き、メニューを開く。

〇〇何食べる?

菜緒:……。

〇〇:…俺が決めろと…?

菜緒:(コクッ)

〇〇:すいません

大将:ほい

〇〇:豚玉二つとご飯二つ

大将:はいよ

ものの数分でお好み焼きと白飯がやってくる。

菜緒:……菜緒、こんなに要らん…

〇〇:…そう、なら半分は俺が食べるよ

ヘラでお好み焼きを二等分し、半分を菜緒の取り皿によそう。

菜緒:ありがと……

〇〇:いただきます

菜緒:いただきます

〇〇:…この後は行きたい所とかある?

菜緒:〇〇に任せる……

〇〇:じゃあ帰るか…

そしてお好み焼きを食べ終えお会計を済ませた俺たちは、そのまま家に帰った。



数日後、俺たちは泊まりで小豆島に旅行に行くことに。

〇〇:シートベルトはオッケー?

菜緒:うん

〇〇:ほんじゃあ、出発進行〜

シフトレバーを下げ、車を発進させる。

豊中南ICから高速に乗り、赤穂ICを目指す。

〇〇:…ご飯は向こう行ってから食べる?

菜緒:…どっちがいい?

〇〇:知らん(笑)

結局、途中のサービスエリアで腹を満たす。

そして2時間ほど車を走らせると、フェリーに乗る港が見えてきた。

〇〇:手続きしてくるから待ってて?

菜緒:うん

駐車場に車を停め、事務所で乗船手続きを済ます。

〇〇:お待たせ

菜緒:大丈夫

〇〇:あと30分くらいで船乗れるみたいやから…

菜緒:分かった

そして時間になり係員さんの誘導の元、船に乗船する。

〇〇:パーキングブレーキ入れてっと…、降りるで?

菜緒:うん

船室に上がると、椅子にはまばらにお客さんが座っていた。

〇〇:適当にこの辺座るか…

後ろの端の方の椅子に腰掛け、船の出発を待つ。

しばらくすると、船が動き始めた。

菜緒:……デッキで風に当たってくる

〇〇:俺も行く

二人で外に出ると、気持ちのいい風が俺たちの体を撫でていく。

〇〇:気持ちいい〜!!

菜緒:うるさい(笑)

〇〇:なんや(笑)

菜緒:じゃあしいんじゃ、このアホ(笑)

〇〇:気持ちいいんやからしゃあないやろ?(笑)菜緒もやりゃええやん(笑)

菜緒:するか!(笑)

そんなこんなで小豆島に到着し、車を船から下ろす。

〇〇:…このまま寒霞渓でいい?

菜緒:ええよ

港から15分ほど車を走らせ、寒霞渓の山頂に到着する。

菜緒:眩しっ…

〇〇:菜緒の笑顔もな

菜緒:……。

〇〇:真顔になるな(笑)

菜緒:やだ(笑)

俺は帽子、菜緒は日傘を差して展望台に向かう。

菜緒:おぉ〜!

〇〇:綺麗〜!

展望台からの眺望は、木々の緑と海の青のコントラストが映えていて、とても綺麗だった。

菜緒:やっぱいつ見ても綺麗よね〜…

〇〇:ホンマそれ…

菜緒:…写真撮る?

〇〇:一緒に?

菜緒:うん

菜緒がスマホを取り出し、腕を俺の腕に絡ませる。

菜緒:…〇〇のが腕長いやろ

〇〇:(苦笑)俺が撮るよ

菜緒:(笑)

〇〇:はいチーズ

(パシャッ)

〇〇:…どう?

菜緒:ええと思う、知らんけど

〇〇:ほんなら、この後どうする?

菜緒:ハイキング以外

〇〇:せやろな(笑)

売店で飲み物を購入し、車に乗り込む。

〇〇:…星ヶ城跡とか行ってみる?

菜緒:うん、菜緒も見てたとこ(笑)

〇〇:おけ(笑)

寒霞渓からすぐ近くの星ヶ城跡に向かう。

〇〇:こっから少し歩くみたいやな…

菜緒:やな……

未舗装の坂道を並んで登っていく。

〇〇:…そういやさ

菜緒:何?

〇〇:メンバーさんとは連絡とってるん?

菜緒:あぁ…、連絡が来れば返してるで?特に同期はしょっちゅう連絡来るから

〇〇:愛されてんな…(笑)

菜緒:やかましい(笑)

そして山頂に到着した俺たちは、辺りを散策する。

菜緒:🎶〜🎶〜

〇〇:……上機嫌やな…

周りに観光客もおらず、菜緒は二人きりの空間を満喫してきた。

(パシャッ)

俺はそんな菜緒の姿をカメラに収める。

〇〇:…この後はどうする?

菜緒:もう旅館に行ってもええよ?

〇〇:せやな〜……

しばらく散策した後、俺たちは車に戻って旅館を目指した。

〇〇:途中どっか寄らなくて大丈夫?

菜緒:うん

そして旅館に到着し、車を預ける。

女将:ようこそお越しくださいました

チェックインを済ませ、部屋に向かう。

菜緒:おぉ〜(笑)二人で泊まる広さやないやろ(笑)

〇〇:意外に安かったからさ(笑)

荷物を端に置き、浴衣に着替える。

菜緒:未だに浴衣、一人で着付けれんのよな…

〇〇:あんだけ着てるのに?(笑)

菜緒:だって、いつも衣装さんが着付けてくれるし…

〇〇:しゃあないな、俺が着付けたるわ(笑)

菜緒:よろしく(笑)

菜緒に浴衣を当て、腰紐を結ぶ。帯を巻いて形を整えたら完成。

〇〇:よし、オッケー

菜緒:サンキュ

自分の浴衣も着付けたら、二人して座椅子に腰掛けくつろぐ。

〇〇:…夕飯の時間まで暇やな…

菜緒:トランプでもやる?

〇〇:あるん?

菜緒:ない(笑)

〇〇:おい(笑)

お茶を汲み、一口すする。

〇〇:ふぅ〜……

菜緒:そうやって自分だけなんや…(笑)

〇〇:飲みたきゃ自分で汲め(笑)

そして2時間もすると、夜ご飯の時間になった。

仲居:失礼いたします、お夕飯をお持ちいたしました

二人:ありがとうございます

仲居さんに御膳を並べてもらい、仲居さんが下がる。

仲居:それではごゆっくりどうぞ

二人:ありがとうございます

菜緒:写真撮っていい?

〇〇:どうぞ?

菜緒がスマホのカメラで色んな角度から写真を撮る。

〇〇:そろそろ食べる?

菜緒:うん

カメラをしまい、手を合わせる。

二人:いただきます

菜緒:…ん〜、美味しい!

〇〇:そらよかった…

1時間ほど食べ進めると、菜緒が箸を止めた。

〇〇:…もう食い切らん?(笑)

菜緒:うん…(苦笑)

菜緒の御膳には、まだ少し料理が残っている。

〇〇:もらうよ

菜緒:ありがと

料理が残っている器を交換し、菜緒の分も平らげる。

〇〇:ふぅ〜、お腹いっぱい…

菜緒:じゃあお風呂行く?

〇〇:そうね

替えの下着とタオルを持って大浴場に向かう。

菜緒:何時くらいに出てくればいい?

〇〇:1時間くらい?

菜緒:オッケー

菜緒と分かれ、青色の暖簾をくぐる。

〇〇:すげぇ……

服をカゴに入れ、浴場に入ると全面半露天のお風呂だった。

全身を洗いシャワーで流したら、掛け湯をして浴槽に浸かる

〇〇:お隣失礼します

※※:おぉ、他にお客さんおったんや…!

〇〇:(笑)

※※:兄ちゃん、一人か?

〇〇:いえ、幼馴染と

※※:幼馴染か〜、うちの嫁さんも幼馴染なんよ

〇〇:ほぇ〜、やっぱ幼馴染だと楽ですか?

※※:いやいや全然、毎日尻に敷かれとるよ(苦笑)

〇〇:お互い大変ですね…(苦笑)

すると壁の向こう側から声が聞こえてきた。

※※2:ちょっと〜!聞こえとるで〜?

菜緒:〇〇〜、出たら後で説教やからな〜?

〇〇:やべっ…(笑)

※※:(笑)俺も説教かな…?

数十分後、出たくないと思いながらも浴場を出て身体を拭く。浴衣を着付けたら荷物も持って暖簾を出る。

〇〇:お待たせ

菜緒:〇〇、牛乳奢りな?

〇〇:はいはい…(苦笑)

自販機で二人分の瓶牛乳を買い、一つを菜緒に渡す。

菜緒:じゃあ戻るで?

〇〇:ほい

牛乳を飲みながら部屋に戻ると、畳には布団が敷かれていた。

菜緒:ふかふか〜

速攻で布団にダイブし、そのうえで泳ぐ菜緒。

〇〇:はぁ…(苦笑)

俺は牛乳瓶をゴミ箱の横にまとめ、『資源ゴミ』と書いたメモ帳を貼り付けておく。

菜緒:〇〇、スマブラやろ

〇〇:ええよ

SwitchのJoy-Conを取り外し、液晶を立たせる。

〇〇:何本勝負?

菜緒:菜緒が勝つまで

〇〇:別に弱くないやろ(笑)

そうして始まったスマブラ対決。20試合ほどしたところで、

菜緒:…もういいや

〇〇:おい(笑)

俺の辛勝で幕を閉じた。

菜緒:もう寝よっかな〜?

〇〇:寝る?

二人で立ち上がり洗面所に向かう。

(シャコシャコシャコシャコ…)

歯磨きを終え、部屋に戻ると菜緒はすでに布団に入っていた。

〇〇:おやすみ

菜緒:おやすみ

部屋の電気を消し、俺も布団に入る。

そして数時間後、不意に布団に違和感を覚えて目を覚ました。

〇〇:…んっ……?

ゆっくりと振り返ると、菜緒が俺の布団に入ってきていた。

〇〇:……菜緒?

菜緒:💤💤

〇〇:…いつもの甘えん坊か……

菜緒:……〇〇…

すると、寝ていたはずの菜緒が目を覚ました。

〇〇:ん…?

菜緒:〇〇は、菜緒の大事な人やから…

俺の身体に回された菜緒の腕の力が強くなる。

〇〇:…菜緒も俺の大事な人やねんで?

〇〇:やから頑張りすぎて身体壊すのは堪忍な?

菜緒:〇〇…

そのまま俺たちの顔は互いに近づき……、

(…チュッ)

Fin.

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