第五話
そして最終審査。私は三次審査のときより早めにホテルを出て、会場に向かう。
スタッフ:森田くん、こっちね(笑)
〇〇:はい…(笑)
あの一件以来、スタッフさんにはすっかり覚えられていた。スタッフさんの誘導に従い、A4出口から外に出る。
〇〇:おはようございます
スタッフ:おはようございます
〇〇:エントリーナンバー24番の森田〇〇です
スタッフ:24番…、ではこの番号シールを左胸のところに貼ってください
〇〇:はい
そしてスタッフさんの誘導で控え室に向かう。
スタッフ:森田くんの控え室はここね
〇〇:はい、ありがとうございます
三つあるうちの一番手前の控え室に通される。中に入ると、まだ誰もいなかった。
私は一番奥の席に座り、バッグから本を取り出して読書に勤しむ。
そしてしばらくすると、
(ガチャッ)
入口のドアが開いた。
??:おはようございます
〇〇:おはようございます
私は立ち上がって、入ってきた候補者に挨拶をする。
愛萌:エントリーナンバー18番の宮田愛萌です
〇〇:エントリーナンバー24番の森田〇〇です
愛萌:よろしくお願いします
〇〇:こちらこそ
宮田さんは私の向かいの席に座って、本を開いた。私も席に戻り、読書を再開する。
そうして候補者が入ってくるたびに本を閉じて挨拶をする、という動作を繰り返していると、
〇〇:(…トイレ行きたいかも……)
尿意を催し、席を立つ。そして控え室を出ると、同じタイミングで二つ隣の控え室からも人が出てきた。
??:お手洗いどこだろ…?
〇〇:あの…
??:はい…?
〇〇:一緒にお手洗いまで行きましょうか?
??:あ、お願いします…!(笑)
そうしてその候補者と並んでトイレに向かうことに。
??:あ、そうだ、エントリーナンバー5番の濱岸ひよりです
〇〇:あぁ、24番の森田〇〇です
ひより:知ってますよ、大阪の人ですよね
〇〇:えぇまぁ(笑)私もデコちゃんの配信は見てましたよ(笑)
ひより:えぇ~!嬉しい~!
そうして途中の十字路に差し掛かったとき、
ひより:ここまっすぐ?
〇〇:いや、ここ右じゃないですかね?
ひより:右?
そう言って、濱岸さんはその場で右向け右をしてガラス窓に突っ込んでいった。
〇〇:ぶふっ(爆笑)何ガラスに突っ込んでんですか!(笑)
ひより:痛~い…(苦笑)
そんなこともありながらトイレに到着した私たちは各々に用を足し、控え室に戻った。
◇
それから30分も経たないうちに最終審査が始まり、1-8番、9-16番、17-24番の順に審査が行われる。
しかし、予定時刻を過ぎてもスタッフさんがやってこない。
※:……どうしたんだろ…?
〇〇:トラブル…ですかね……?
するとスタッフさんがやってくる。
スタッフ:みんなごめんね、ちょっと前二つのグループの審査が長引いて、みんなの審査はお昼を食べてからになります
候補者:はい
そうしてお昼ご飯の牛すき弁当が配られた。
〇〇:いただきます
お弁当の蓋を開けて、手を合わせる。
〇〇:……。
候補者:……。
そして誰も喋らない。
そして全員がお弁当を食べ終えて、のんびりしていたころ、
スタッフ:そろそろ審査会場に移動します
候補者:はい
ゴミを机の上にまとめ、席を立つ。
〇〇:ふぅ~……
これまで以上の緊張に、私の心臓の鼓動は最高潮に達していた。
スタッフ:では24番から入ってください
〇〇:はい
第三グループの八人が壇上の上に並び、審査員を目の前にする。
〇〇:(う~わ、やばっ、緊張で寒気してきた…)
そして17番から順に自己PRをしていく。
審査員:次、24番の森田〇〇さん
〇〇:はい……!
大トリのプレッシャーに押しつぶされそうになりながら、一歩一歩と歩みを進める。
マイクを手に取り、スイッチを入れる。
〇〇:…大阪府出身、中学一年生、12歳の森田〇〇です
〇〇:生まれは京都の宇治で、生後三か月で大阪に引っ越しました
〇〇:…部活はバレーボール部で、……はい…
審査員:うん…、じゃあ休みの日は何してますか?
〇〇:休みの日は、部活がある日は部活をして、無い日は……無い日は…友達と遊んだり家で読書していることが多いです
審査員:もうちょっと掘り下げるね、友達とどういう遊びをしてますか?
〇〇:友達とは…友達の家でゲームしたりゲームセンター行ったりします
審査員:なるほど、…じゃあ最近のニュースについて話してもらえますか?
〇〇:はい、…応募のとき何て書きましたっけ?
審査員:全然違うニュースでも大丈夫ですよ
〇〇:え~っと…、天皇陛下が六月に退位を表明されたことですかね…?
〇〇:200年ぶりの日本の天皇の生前退位を生きているうちに経験出来ることが興味関心をもった理由です…
審査員:いいですね、では乃木坂46・欅坂46の好きな曲を教えてください
〇〇:乃木坂46は『ないものねだり』で、欅坂46は『渋谷川』です
〇〇:どちらも落ち着いた曲調で、聴いていて落ち着きます。
審査員:歌唱審査の楽曲も似たような曲でしたもんね、
そしてついにあの質問が審査員から飛んできた。
審査員:ではこのオーディションを応募した志望動機を改めてお願いします
~続~
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