第六話
審査員:ではこのオーディションを応募した志望動機を改めてお願いします
〇〇:はい…、
〇〇:…私がこのオーディションを応募したきっかけは母親からの紹介でした
〇〇:それまでアイドル歌手という存在を知らなかった私にとってけやき坂46はとても素敵で、
〇〇:メンバー同士の絆や有無相通ずる関係性は画面越しにも伝わってくるほどでした
〇〇:私は今、地元から離れた私立の中学に通っていますが、今の学校ではあまり上手く人間関係を構築できていません
〇〇:ただ、あのけやき坂でなら人間関係が上手く構築できる気がするんです
〇〇:メンバー一人一人が前を向いて、互いに手を取り合って上を目指している感じが、私にはとても綺麗に見えました
〇〇:……これが、私の志望動機です
審査員:…ありがとうございました
〇〇:ありがとうございました
審査員に一礼をして、後ろに下がる。
審査員:これで最終審査を終了いたします、候補者の皆さんは控え室に戻って待機していてください
候補者:はい
控え室に戻ると、審査が終わったからか少し和らいだ空気になった。
※:緊張した~(笑)
※:ほんと…、心臓飛び出るかと思った……(苦笑)
そんな中でも、私は緊張を崩せないでいた。
(トントン…)
愛萌:森田くん
〇〇:はい…?
すると、宮田さんに声をかけられた。
愛萌:なんの本読んでるの?
〇〇:…濱嘉之さんの『完全黙秘』です
愛萌:どういうあらすじなの?
〇〇:…俺も途中までしか読んでませんけど、
〇〇:財務大臣がパーティー会場で刺し殺されて、現行犯逮捕した容疑者が完全黙秘なので、身元不明のまま起訴する、っていう話です…
愛萌:へぇ~、面白そう……、話の組み立てが上手いね
〇〇:そうですか…?
宮田さんのおかげで少し緊張のほぐれてきた私は、カバンから一冊の本を取り出す。
〇〇:推し作家さんの本です、良かったら…
愛萌:ありがと、推し作家がいる辺りかなりの本好きだね?(笑)
〇〇:えぇ、まぁ…(笑)
愛萌:じゃあさ、連絡先交換しない?
〇〇:連絡先ですか?いいですよ…
お互いに携帯を取り出し、番号を交換する。
※:…全員で交換しません?
※:いいですね…!
すると、周りの候補者が立ち上がり、全員で番号を交換する、という流れに……。
※:よしっ…!
※:実際に連絡取り合うかは分からないですけど…(苦笑)
※:こういうのは社交辞令みたいなものですよ(笑)
〇〇:……?(笑)
愛萌:……(苦笑)
そして、私はあることを思い出し席を立つ。
〇〇:(濱岸さんと連絡先交換できないかな……?)
そう思い部屋を出るが、他の控え室に入る度胸はさすがにない。
廊下で固まっていると、隣の控え室のドアが開く。
??:(……ビクッ!)
〇〇:あっ、すみません…!(…あ、15番ちゃんや…!)
15番:いえ…、……お手洗いってどこか分かります?
〇〇:案内しましょうか?
15番:すみません…
いちごちゃんと並んで廊下を歩く。
15番:……。
〇〇:……(気まずい…)
15番:…あの、
〇〇:はい
15番:SHOWROOM配信、見てました…
〇〇:ほんとですか…!?俺もいちごちゃんの配信見てましたよ…!
15番:ありがとうございます…(苦笑)
〇〇:…あ、忘れてた、24番の森田〇〇です
菜緒:15番の小坂菜緒です
〇〇:同じ大阪同士、合格しましょうね
菜緒:ですね…(笑)
そうしてトイレに到着して、私も一応用を済ます。
菜緒:お待たせしました
〇〇:大丈夫です
また並んで控え室に戻る。
〇〇:あの~…、初対面でこういうお願いは不躾だと思うんですけど……
菜緒:どうしたんですか?
〇〇:連絡先交換しません?うちの控え室、全員で連絡先交換して……
菜緒:……ふふっ(笑)
菜緒:交換します?(笑)
〇〇:いいですか?(笑)
菜緒:スマホ、控え室に置いてあるので持ってきますね
〇〇:ありがとうございます…(笑)
そうして小坂さんが控え室にスマホを取りに行っている間、私は外で待っていた。
そして再び控え室のドアが開いたとき、
??:あ~、ほんとにいた~!
〇〇:ん……?
??:ニッシ―くんの配信見てたよ~
〇〇:ありがとうございます
菜緒:16番の渡邊美穂ちゃん
美穂:初めまして!
〇〇:初めまして、森田〇〇です…(苦笑)
??:よかったら候補者のみなさんで連絡先交換しませんか?
〇〇:……呼びます?
??:呼びましょう…!
私は自分の控え室のみんなを呼ぶことに。
(ガチャッ)
〇〇:みなさん、携帯を持って少し外に出てきてもらえますか…?
※:どうしたの…?
部屋の外にぞろぞろと出てきて、廊下に人が密集する。
そしてその騒ぎを聞きつけて…、
(ガチャッ)
※:……どういう状況です?
一番奥の控え室からも候補者が顔を出す。
※:今、全員で連絡先を交換しよう、っていう流れになってます
※:なるほど、……だってさ…!
そうして奥の部屋からも候補者が出てきて、廊下は人が通れないような状態に。
スタッフ:…え~っと、これはどういう状況?
※:みんなで連絡先を交換しています
スタッフ:なるほど…(苦笑)廊下は通行の邪魔になるからね?
候補者:はい
そうして連絡先を交換した私たちは控え室に戻り、合格発表の時間を今か今かと待っていた。
◇
そしてついにそのときが。
スタッフ:みなさん、会場に移動してください
候補者:はい…!
~続~
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