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第一話

〇〇:うわっ、マジか……!

私の手に握られたスマホの画面には、滑り止め大学の合否発表の画面が映されていた。

『不合格』

〇〇:四月からどうしよ……

入試を受けた大学全てに落ちた私、森田〇〇。大学進学を諦めて就職先を探すことにした。

と言っても、すぐに就職先が見つかるわけもなく……、

〇〇:…ダメだ……

日々、お祈りメールに心を抉られ続けていた。そんなある日、見覚えのあるアドレスからメールが…。

**********

森田〇〇様

お世話になっております。
Seed&Flower LLCの今野義雄です。

森田様に折り入ってお願いがございます。
ぜひ、面接にお越しいただければと思います。

候補日をお送りしますので、森田様のご都合をお聞かせください。

<候補日時>
…………………………
〇月〇日 (〇) 〇時~〇時
〇月〇日 (〇) 〇時~〇時
〇月〇日 (〇) 〇時~〇時
〇月〇日 (〇) 〇時~〇時

※予定時間は1時間
…………………………

いずれの時間帯も、ご都合が悪い場合は遠慮なくお知らせください。
調整しますので、候補日を複数いただけると幸いです。

よろしくお願いいたします。

**********

それはSeed&Flower LLCの今野さんからの面接に関するメールで、就職先を決めあぐねていた私にとっては願ってもいない申し出だった。

私はそのメールに返信をし、面接当日を待った。



そして面接日当日、私はあらかじめ前泊していたホテルからSME六番町ビルを目指す。

〇〇:すみません、〇時から面接の予約をしている森田〇〇と申します

ロビーの受付で要件を伝える。

受付:今野から承っております、こちらのネックストラップを首から下げていただいて、あちらのエレベーターをお使いください

〇〇:ありがとうございます

ゲートを通り、エレベーターで二階に上がる。一度トイレに入り、髪やネクタイを整える。

〇〇:よしっ、完璧…!

トイレを後にして会場に向かう。

面接会場に到着し、一度深呼吸をして部屋の扉をノックする。

(コンコンコンッ)

今野:はい、どうぞ

〇〇:失礼いたします、本日はよろしくお願いします

部屋に入ると、奥には今野さんが椅子に座って待っていた。

今野:どうぞお座りください

〇〇:失礼します

緊張した面持ちで椅子に座る。

今野:…緊張する?(笑)

〇〇:はい

今野:早速なんだけど…、

〇〇:はい

今野:…森田くんはあのオーディション、どういう風に捉えてる?

〇〇:…間違いなく私の人生のターニングポイントになったと言えますね

今野:そっか…、

今野:もう一度チャンスがあるなら…っていうことは考えたこと無いか……

〇〇:そうですね、

〇〇:私にとってはあのオーディションが全てなので…

今野:…じゃあ、マネージャーとしてはどう?やってみない?

〇〇:マネージャー…ですか……?

今野:落とした立場の人間が言うことではないと思うが、

今野:森田くんはきっと日向坂と関わったとき、大きなシナジーを発揮すると思う

〇〇:……。

今野さんの言葉に、私の心境は複雑だった。あのとき流した涙の感触は今でも鮮明に思い出されるほどなのだ。正直、今野さんが言っていることは虫のいい話だと思う。それでも、

〇〇:…ぜひ、やらせてください

私はこの話を受けたいと思った。

今野:そう言ってくれると信じていた、ありがとう

私は立ち上がって、差し出された手を握る。

〇〇:よろしくお願いします

今野:よろしく頼むよ

今野:…それで早速で悪いんだが、

今野:森田くんには今日からとあるメンバーの専属をしてほしいと思ってる

〇〇:専属?日向坂って専属マネージャーとかあるんですね(笑)

今野:一応…ね?(笑)

そうして今野さんの後に続いて部屋を出る。そしてとある部屋の前で今野さんが足を止めた。

今野:…ここにそのメンバーがいるから、

今野:いってらっしゃい

〇〇:え、今野さんは行かないんすか?

今野:大丈夫、二期生だから

〇〇:……。

絶対誰も私のこと覚えていないだろ、と思いながら部屋の扉をノックする。

(コンコンコンッ)

??:…はい、どうぞ

〇〇:失礼します…

中に入るとメンバーが一人、こちらを向いて立っていた。

菜緒:初めまして、日向坂46の小坂菜緒です

中にいたのは、共にオーディションで戦った小坂さんだった。私は平静を装って初対面の挨拶をする。

〇〇:…初めまして、小坂さんの専属マネージャーの任を受けたk…

菜緒:…なぁ、菜緒たち初対面ちゃうよな……?

~続~

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