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第二話

菜緒:…なぁ、菜緒たち初対面ちゃうよな……?

〇〇:えっ……?

菜緒:オーディション一緒に受けたやんな、森田〇〇くん…

〇〇:…そうね

小坂さんが私のことを覚えているという事実に、私は驚きとともに嬉しさが込み上げた。

菜緒:忘れられてると思っとった?(笑)

〇〇:そら思うやろ、あれから5年半経ってんねんで?(笑)

菜緒:ふふふ…(笑)

菜緒:…ひらがな二期オーディションからもうそんなに経つのか……

〇〇:時が経つのも早いよな〜……



事の始まりは2017年6月にまでさかのぼる。
……………………………………………………
〇〇:……。

当時中学一年生だった私は、このときソファに寝転がってバレーのトス練習をしていた。すると、母親が仕事から帰ってきた。

母親:ただいま

〇〇:おかえり

母親:…ご飯食べた?

〇〇:冷蔵庫に入ってる

母親:ありがと

すると、母親が一つの紙を持ってきた。

〇〇:……何それ?

母親:アイドルグループのメンバー募集オーディション

〇〇:…けやき坂46……?

母親:乃木坂46とか知ってる?

〇〇:知らん

母親:ズコッ…、

母親:…まぁ、興味があったら受けてみな?

母親から応募要項の書かれた紙を受け取り、中身を読む。

〇〇:…へぇ〜……

〇〇:受けてみよっかな…

単純な好奇心からオーディションに応募することを決めた。



〇〇:💤💤

母親:〇〇〜、起きなさ〜い!

〇〇:んあぁ……!

約二週間後、朝起きてダイニングに向かうとテーブルの上に封筒が置かれていた。

〇〇:…オーディションの結果か……

椅子に座って封筒を開ける。

〇〇:……おっ、合格…

母親:よかったじゃん、早く食べちゃいなさい

〇〇:んんっ

私は二次審査に進出した



二次審査、私は大阪市内の商用ビルに向かった。入口で受付を済ませ、誘導に従って移動する。中には女の子がほとんどだったが、ちらほらと男子がいた。

※※:あの…、この席空いてますか?

〇〇:えっ?あぁ、大丈夫ですよ

※※:失礼します……

〇〇:……。

※※:……。

控え室の横の椅子に候補者が来るが、会話はない。

しばらくして番号が呼ばれ、ビデオ審査の会場に移動する。

スタッフ:それでは※※番の候補者から順にカメラの前に立って、自己紹介と自己PRをお願いします

そして十人ほど行ったところで、私の番になった。

〇〇:……。

緊張で死ぬほど心臓が高鳴っている。

〇〇:ふぅ~……

スタッフ:準備いいですか?

〇〇:……はい

スタッフ:お願いします

〇〇:…大阪府出身中学一年生12歳の森田〇〇です

〇〇:自己PRは、~~~~~~~~

………………。

〇〇:…以上です、ありがとうございました

スタッフ:はい、では次の候補者は前にお願いします

次は歌唱審査になる。一人ずつ前に立ち、アカペラでワンコーラスを歌う。私が選んだ曲は倉木麻衣さんの『渡月橋 ~君想ふ~』だ。

審査員:森田〇〇さん、お願いします

〇〇:はい

マイクを手に取り、一呼吸置く。

〇〇:から紅に染まる渡月橋🎶

〇〇:導かれる日 願って🎶

〇〇:川の流れに祈りを込めて🎶

〇〇:I've been thinking about you🎶

〇〇:I've been thinking about you🎶

〇〇:いつも こころ 君のそば🎶

〇〇:…ありがとうございました

本番を終え、私は息をついた。未だ落ち着かない胸をさする。

〇〇:ふぅ~……

スタッフ:お疲れさまでした

〇〇:ありがとうございます

ブロック全員の審査が終わったところで、控え室に戻される。

スタッフ:本日はこれで以上になります、お疲れ様でした

候補者:ありがとうございました

スタッフ:親御さんがいらっしゃっている方は一階のロビーで待ってらっしゃると思うので、一緒に帰っていただいて大丈夫です

スタッフ:気をつけてお帰り下さい

候補者:ありがとうございました

荷物をまとめ、一階に降りる。他の候補者は保護者を合流する人が大半だが、私は母親が仕事でいないので一人で帰る。

そして後日、二次審査通過の通知が届き、私は三次審査に進出した。



そして三次審査、私たちは二日間あるうちの二日目に審査を受ける。

私は前日に新幹線に乗って東京を目指す。

〇〇:……待って、ここどこ…?

私は初の東京駅で道に迷ってしまった。

〇〇:チェックイン17時だから、あと50分しかない…!

ホテルのチャックイン時間が迫っており、それが余計に自分の心を焦らせてしまっていた。

私は携帯を取り出し、母親に電話をかける。

母親📞:もしもし?

〇〇:東京で道に迷った…、このままじゃチェックインの時間に間に合わない……!

母親📞:分かった、今自分がどこにいるか分かる?

〇〇:みどりの窓口の近く……

母親📞:みどりの窓口……、え~っと、みどりの窓口の方向いて左側に進んでおっきい通路を左に曲がると改札があるから、そこを出ると丸の内口っていうレンガ造りの方の出口に出られるから…、

母親📞:その先は分かる?

〇〇:うん……

母親📞:分かった、じゃあ気をつけてね

〇〇:うん…

母親のアドバイス通りに進み、改札を出たら路上の看板に従い東京メトロの二重橋駅に到着する。

そうして国会議事堂前に到着した私は、無事ホテルのチェックインを済まし、明日に備えて準備を進める。

~続~

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