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手持ち花火が消えるまで

(ガチャッ)

〇〇:暑っつ〜

愛萌:いらっしゃい

〇〇:おう、麦茶もらうな?

愛萌:どうぞ

幼馴染の家に勝手に入り、冷蔵庫を勝手に開ける。

〇〇:ぷはぁ、生き返る〜!

愛萌:酷暑日に部活なんて精が出ますね〜

〇〇:しょうがないだろ?大会が近いんだから

愛萌:はいはい…

〇〇:愛萌は相変わらずクーラーの効いた部屋で読書に勤しんでんだな

愛萌:だって暑いのやだもん

〇〇:…ちょっとはこっち向けよ(笑)

ここまでの会話で愛萌は一切こっちを向いていない。

愛萌:何?

ようやく愛萌が本から目を上げる。

〇〇:やっとこっち向いた、…そんなんでよく友達できるよな?

愛萌:友達とはちゃんと顔見て話してるから

〇〇:俺は友達以下か(笑)

愛萌:いや?友達以上

…よくそんな恥ずかしいセリフをさらっと言えるな……。

〇〇:雑な扱いしてっと、俺も離れてくぞ

愛萌:大丈夫、〇〇はどんなに無下にしても私からは離れていかないから

〇〇:どっから来るんだ、その自信は…(笑)

愛萌:勝手に相手の家に入り浸るような関係性なんだから、今さら雑に扱ったところで何も変わらんよ

〇〇:あっそ、まぁ俺も愛萌と疎遠になるつもりは毛頭ないけどな

愛萌:よくもまぁそんな歯が浮くようなセリフを吐けるよね

〇〇:お互い様だろ(笑)

麦茶を飲み終えた俺も、愛萌の隣のソファに腰掛ける。

〇〇:…今日の花火大会行く?

愛萌:人多いからやだ

〇〇:…ほんと、ニートみたいな生態してるよな

〇〇:まぁ、だから買ってきたんだけど

愛萌:何を?

〇〇:手持ち花火セット

そう言ってスーパーのレジ袋から手持ち花火を取り出す。

愛萌:…よく分かってんね

夕方になり、外の気温も下がってきた。

〇〇:…そろそろ花火やる?

愛萌:やる?

愛萌がソファから立ち上がり、仏間からロウソクとマッチを持ってくる。

愛萌:暑っつ

外に出ると、まだ蒸し暑さが続いていた。バケツに水を汲み、花火セットの封を開ける。

愛萌:どれからやる?

〇〇:どれでもいいんじゃない?

(シュワァァァ)

愛萌:ふふふっ(笑)

〇〇:何笑ってんの?(笑)

愛萌:いや?(笑)

〇〇:…愛萌

愛萌:ん?

(カシャッ)

愛萌がこっちを向いた瞬間にシャッターを切る。

愛萌:…盗撮の現行犯

〇〇:楽しそうな顔して何言ってんだよ

愛萌:…〇〇

(パチパチパチッ)

〇〇:うおっ!…人にネズミ花火投げんなし(笑)

愛萌:さっきのお返し

〇〇:釣り合わねぇよ…(笑)

買ってきた花火を全てやり尽くし、家の中に戻る。

愛萌:臭っさ…!(笑)

火薬の匂いが服に付着して、異臭を放っていた。

〇〇:風呂入ってこいよ(笑)

愛萌:覗かないでよね?(笑)

〇〇:覗かんわ(笑)

愛萌が出た後、俺も入れ違いにお風呂に入った。

〇〇:あ〜!いい湯だった〜

リビングに入ると、愛萌がソファで寝落ちしていた。

愛萌:💤💤

〇〇:…ったく、しょうがねぇな

愛萌をお姫様抱っこしてベッドまで運ぶ。

愛萌:💤💤

〇〇:……寝てれば可愛いんだけどなぁ…

部屋の電気を消し、部屋から出る。

〇〇:おやすみ

愛萌:💤💤……おやすみ

まさかの愛萌が起きていた。

〇〇:……いつから起きてた?

愛萌:…お姫様抱っこされたあたりから?(笑)

〇〇:…てことは……

愛萌:〇〇って私のこと可愛いって思ってたんだ〜(笑)

ばっちり聞かれていた。

〇〇:さっきのやつはノーカンで

愛萌:なんでよ〜、私は〇〇のこと好きだよ?

〇〇:…また改めて告白するわ

愛萌:待ってます(笑)

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