第十三話
菜緒:森田くん、
〇〇:はい
菜緒:ひかるちゃんといちゃつきすぎ…!
〇〇:へっ…?
菜緒:いくら従姉弟同士でもあれはアカン…!
〇〇:はぁ…、すみません……
菜緒:むぅ……
私にはなんだか小坂さんが……、
〇〇:……あの、
菜緒:何?
〇〇:嫉妬してます…?
菜緒:なっ、そんなわけないでしょ……!?
〇〇:本当は?
菜緒:…ちょっとだけ……
〇〇:やっぱり…
菜緒:そらそやろ、森田くんは菜緒の専属マネージャーやのに…!
〇〇:…小坂さん、
〇〇:きつい言い方になるけど、私と小坂さんはあくまでメンバーとマネージャーよ?
〇〇:もちろん、ひかるの行動を肯定するわけやないけど、小坂さんが嫉妬する必要もないで?
菜緒:まぁ、そうやけど……
小坂さんは納得はしていない様子だったが、明日もライブがあるので部屋に帰らせることにした。
◇
そして翌日のライブ後、片付けをしているとどこからかメンバーの話し声が聞こえた。
声の方に行ってみると、廊下の端の方で小坂さんと松田さんが何やら話していた。
好花:……まぁ、その話は昔聞いたことあるけど……
菜緒:やっぱダメなんかな……
好花:うちには分からんけど、思い伝えるだけでも何か変わると思うで?
菜緒:でも……
好花:伝えるかどうかは菜緒に任せるよ、うちから出来るアドバイスはこれだけやから…
そう言って松田さんがこちらにやってきたので、私は急いで自分の仕事に戻った。
◇
そしてホテルに戻った後、シャワーを浴びていると部屋のインターホンが鳴った。
〇〇:誰や…(笑)
シャワー中で応対できないので諦め、シャワーから上がり着替えて服を着てからドアの方に向かうと、
〇〇:何か貼ってある…
ドアに付箋が貼ってあり、
『506号室まで来てください 小坂』
と書かれていた。
〇〇:小坂さん…?
私は付箋に書かれていた通り、506号室を訪れる。
(ピンポーン)
菜緒:はい
〇〇:来たよ
菜緒:ありがと、中入って?
小坂さんに中に通される。
菜緒:森田くん、
〇〇:どうしたの?
菜緒:…やっぱひかるちゃんに嫉妬するよ
〇〇:……。
菜緒:ずっと言ってなかったけど私……、
〇〇:⁇
菜緒:オーディションのときから森田くんに一目ぼれしてて…、
菜緒:ずっと片想いしてたの……!
〇〇:小坂さん…?
菜緒:別に付き合おうとか考えてない、
菜緒:でも森田くんのことが好きだから…、
〇〇:小坂さん、
〇〇:もうええよ、小坂さんの気持ちは分かったから…、
菜緒:…ごめん……(涙)
小坂さんが謝りながら顔を手で覆う。
〇〇:……小s…菜緒さん、顔を上げて?
菜緒:森田くん…
私はしゃがみ込んで菜緒さんと目線を合わせる。
〇〇:なんでオーディションのとき、菜緒さんに連絡先訊いたと思う?
菜緒:えっ……?
〇〇:一目ぼれしてたのは菜緒さんだけやないで?(笑)
菜緒:…〇〇くん……
私は菜緒さんの手を取り、二人で立ち上がる。
〇〇:菜緒さん、卒業したら私と付き合ってください
菜緒:〇〇くん…、こちらこそよろしくお願いします……(涙)
再び涙を流す菜緒さんをそっと抱きしめ、涙が収まるまで一緒にいてあげた。
◇
そして数年後、日向坂を卒業した菜緒と交際を始めた。
菜緒:今日記念日やからな?
〇〇:分かってる(笑)ちゃんとレストランも用意してるから(笑)
菜緒:行ってきま~す
〇〇:行ってらっしゃい、気ぃつけてな?
とある年の記念日、私はとある計画のために数か月前から動いていた。
〇〇:…はい、はい、よろしくお願いします
計画の最終調整を行い、決行時間を待つ。
そして夜、菜緒と予約していたレストランに向かう。
店:いらっしゃいませ、お待ちしておりました
レストランの窓際の席に案内され、席に着く。
店:ただいま、お料理お持ちいたします
◇
そしてディナーを終えた私たちはお店を後にし、ある場所へ向かう。
〇〇:…ここも懐かしいな……
菜緒:菜緒にとってはひらがな時代からの思い出の場所やからな…
私たちがやってきたのは、みなとみらいグランドセントラルタワーの屋上だった。
〇〇:…菜緒、渡したいものがあるんだ
菜緒:はい…、
私は懐から小さな箱を取り出し、両の手で持つ。
〇〇:菜緒、私と結婚してください
そう言って、小さな箱に入った指輪を菜緒に差し出す。
菜緒:よろしくお願いします
菜緒が指輪を受け取り、深々とお辞儀をする。私もつられてお辞儀をする。
菜緒:長かったな~…(笑)
〇〇:ほぼ15年やしな(笑)
私たちはタワーのスタッフさんに祝福されながら階段を降りていき、家に帰った。
~続~
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