見出し画像

【水井軒間インタビュー】自主企画『 #己を纏う 』に込めた想い

初めましての方は初めまして、そうでない方はお久しぶりです。日向キタローです。

インタビュー企画第12弾はイラストレーターの水井軒間(みずい のきま)さんです。今回は水井軒間さんが一年かけて進めていくご自身の企画についてです。様々なことをお聞きしたのでお楽しみに。


画像1



・だんだん音楽系の方を見るようになって、最近は音楽をやっている方とのご縁が多い、というような感じですかね。


ー今回は企画にお声がけいただきましてありがとうございます。まず早速ではありますが、ご自身の企画についてうかがう前に自己紹介を兼ねまして普段どのような活動をしていらっしゃるのかお聞かせください。


基本的な活動は絵を描くことを中心に作家活動をしています。展示参加だったり、コミティアとかの同人即売会での出展などがメインで、特にここ最近はVtuberさんからお仕事を頂いて、動画やCDジャケットなども描かせていただいています。自分のお手伝いをしている場所としては、まず「447 Records(ヨンヨンナナレコーズ)」というエハラミオリさんが主催しているレーベルのようなところにイラストレーター・アニメーターとして参加しています。そして「VIRTUALIZE REALIZE(バーチャライズ・リアライズ)」というDJイベントの方でビジュアルスタッフとしてお仕事もしています。


ー現在バーチャル関係やVtuberさん関係でお仕事などをしているかと思いますが、最初にバーチャルやVtuberを知るきっかけなどは覚えていますか?


そうですね…。きっかけは2017年の冬から2018年初めの、ちょうどブームが起こり始めた頃ですかね。YouTubeやTwitterで知りまして、ねこますさんから知って、のらきゃっとさんとかの方を見るようになりました。当時盛り上がっていたVRchat個人勢みたいな界隈を中心に見ていましたね。あっくん大魔王さんとか、あのあたりはずっと追っていました。そこからエハラさんやワニのヤカさんを知ってから、だんだん音楽系の方を見るようになって、最近は音楽をやっている方とのご縁が多い、というような感じですかね。

Vtuberさんのジャケットイラストも、2020年の夏くらいからになりますけど、色々カウントするとたしか10件くらいはやっているはずです。Vtuberじゃない方のものも含めるとおそらく20件くらいはやっているんじゃないかな…。



・生きづらい人たちがちょっと生きやすくなるための表現のひとつなんじゃないかな、と思っています。


ー本当にたくさん関わっていらっしゃいますよね。そんな中で、今回お話をうかがわせていただけるご自身の企画、『己を纏う』に関してお聞きしていこうかと思うのですが、まず企画自体はそのくらいの時期から思いついたんでしょうか。


2020年の10月くらいからはもう構想があって、参加していただくモデルさんたちに声をかけていったので12月からになります。そしてこれはここからの流れにはなりますが、2021年の2月末に本告知っていう感じになります。

ゲストモデル(敬称略)
LUCAS
Polaris Nox
NICO
yosumi
ヤカ
エハラミオリ
Fra(BOOGEY VOXX)
Ci (BOOGEY VOXX)
咲乃木ロク
曇莉
空色ヒカリ
蓮水秋悕
アザミ
隣町本舗
サキュバスのリヤ
天音りりあ
坂神蟬丸
樫野創音
鎌木リカ(オカルトフリーク)
fh(オカルトフリーク)
てれかす
座敷乃てまり(カクレゴ)
天野ドウジ(カクレゴ)
kagamiiiiin
Itsuki Miyamura
kurogane
天城貴文&柳井サリー
DatCat
非暮
大崎
皐月渚
Nemonoika
本郷みもみ
ヒサノコースケ
霜槻このえ
水井しろめ
創戸うつ
・水井和泉


ーその声をかけていったモデルさん方もかなり多岐に渡るというか、Vtuberとして活動していたり、クリエイターの方だったり、視聴者としている時間の多い方だったりですが、モデルとして声をかけたメンバーに関して、何か理由などがあったりしますか?


基準としては、”活躍されている方”というよりも、私が”人となりを知っている方”を基準として考えていましたね。


ーお聞かせいただいた企画意図にもある「内面」や「その人らしさ」を表現するために、水井さん自身がある程度”その人”を知っていることを念頭に置いたチョイス、のような感じなるんでしょうか。


そうです。”アバター”というものを描きたいという時に、何を描きたいかというと、その「アバターを持って生きる人の人柄」を描きたいので、人柄をよく知っている人…その人のいいところだったり、面白いところだったりの魅力を描きたいと思いました。なのである程度話したことのある人だったり、親交のある人をメインにしています。


ーアバターというものを描きたいというお話なんですが、水井さんにとっての”アバター”というのは何だったりするんでしょう。


私は”水井軒間という作家”として「生きづらい人のための表現を目指します」というスローガンみたいなものを掲げているんですけど、アバター文化・アバターという表現方法もそのひとつだと思っているんです。”よりその人らしさを出せる文化・世界”だと思っているっていうというか。もちろんリアルが”そうじゃない”というわけでもないんですが。それを今まで私たちはたぶん服装や髪型、お化粧でやってきたと思うんですが、それの延長線上や拡張がアバターだと思っています。より自由度が高いというか、例えば身長がいじれたりだとか、髪の長さが好きにできたり、性別も変えたり、声もいじれたりするという。こういう操作できる面が広くなったことで、リアルでどうしてもコンプレックスを抱えていたり、まわりと上手くいかない部分だったりを自分がやりやすいように変えていったりできる。わかりやすく言うと、リアルだと男として生きづらい方が女の子のアバターを持って、女の子のように振舞う事でより自分らしさが出せたりするみたいな。そういう面で、生きづらい人たちがちょっと生きやすくなるための表現のひとつなんじゃないかな、と思っています。


ーアバターといういろんな選択肢が生まれるというか、自己表現の方法が広がるような感覚でしょうか。簡潔に言うと”自分のなりたい姿”になれるような感じですよね。


そうですそうです。例えば人間じゃないものにもなれるわけですよね。動物だったり、ロボットとか。それも結構面白いところかなと思っています。


ーそして今回はそのアバターというものに水井さんが”その人らしいファッション”を纏ったイラストを描いていくというようなものになるわけですが、そのファッション自体はどういったものにしていくか、というのはある程度決まっていたりするんでしょうか。


その人によって普段のイメージからガラッと変えたりとか、全部自分の好みの範疇にはなるんですけど、私が好きな服装の中で幅は持たせよう、ということは考えていますね。クラシックな恰好だったり、逆にラフでストリート風だったり、清楚風だったりちょっと悪かったりみたいないろんなバリエーションが出せればいいなと思っています。

企画の発表後、Twitter上に3月から10月にかけて1枚ずつ順々にあげていく予定で、今(インタビューを受けている時点)は描きためている状態です。先にデジタルでラフを描いて、モデルさんに「こういう服装で描こうと思っています」って共有・チェックをもらってから、アナログに移行して構図を練ってからまた共有してチェックをもらって本描きに入る…というのを回している状態ですね。



・自分らしさを身に纏うということで『己を纏う』というタイトルにしました。


ーとても忙しそうですよね……。この記事が公開されている頃には企画もある程度知られている状態になっているかなと思うのですが、実際に企画が人の目に触れて、見た人たちにどういう影響があってほしい、みたいなことは会ったりしますか?


思うのは、今こういう”アバターを持って生きる”っていう生き方をしている人たちがいることを、まだ知らない人たちに知って欲しいというのが1つ。それとこの企画を通して、バーチャルやアバターに興味を持っている人たちが、リアルやバーチャルを含めてファッションに興味を持ってもらえないかなということも考えています。バーチャルでアバターを着ることと、リアルで服装を着ることってそんなに離れてないんだよ、そこは繋がっているんだよっていうことを伝えたいなと思っています。

あとは自分の見た目をコントロールして生き方を楽しくするっていうことを知って欲しいなって。アバターをもってVRchatを楽しくすごすのと、リアルでしたい恰好をして触れ合っていくのは、同じように楽しんだよっていうのを知ってもらいたい。そういう趣旨があって、アバターというものとファッションを融合させた企画を立てているっていう感じですね。


ー”自分のしたい恰好”や”なりたい自分”を着るというか…。あ、だから企画のタイトルが『己を纏う』なんですね…!?


そうそう!タイトルはまさにそういうことです!自分らしさを身に纏うということで『己を纏う』というタイトルにしました。



・”見た目”というフィルターを取っ払った時に、その人の”個人”というものが見えやすくなるのかなと思うんですよ、リアルの世界より。


ーもっとアバターに関してお聞きしていきたいんですけど、ご自身で経験したアバターに関する面白いことって何かあったりはしましたか?


面白いことというか、”結果的に面白くなったこと”があるんですよね。私、VJの非暮(ひぐらし)さんっていう方のアイコン画を担当させていただいているんですけど、あれを発表した時に非暮さんの友達が「あ、わかる!似てる!」みたいなことを言っていて。アイコン画は水色髪メガネっ子で、リアルの非暮さんは男の人なのに、なんか「すごくわかる!」「イメージに合う」みたいなことも言われて、それは何かうれしかったというか面白かったですね。”その人らしさ”を表現するというのが、仕事として上手くいった例かなと思っています。

あとはこれはアバターの使い方っていうのじゃないかもしれないんですが、VRchatのコミュニティの中に”お砂糖関係”っていうものがあるんですよ。いわゆる”パートナーシップ”なんですけど、恋人関係とはちょっと違って、あくまで例として多いパターンとしては、両方ともリアルでは男性なんだけどVRチャット内で女性のアバターを持ってる人同士がパートナ関係を結ぶっていうのがそうですね。甘ったるいから”お砂糖”って呼ばれてるんですけど。今回モデルとしてお誘いした方の中にも、実際にパートナシップを結んでいる友達がいたりします。その関係がなんかアバターの使い方としてはあの文化が面白いなって思っていて。”リアルで男”で”バーチャルで女”とかってあんまり関係ないというか。性自認がなんであるとか、性の対象がどうだとかっていうものを飛び越えているんですよね。


ー”その人”と”その人”同士の関係性っていうような感じですよね。


そうですね。”その人”と”その人”なんですよ。これがリアルだとなかなかできないものなので、バーチャルの文化、アバターの文化で起こっている面白いことのひとつなんじゃないかなって思います。

”見た目”というフィルターを取っ払った時に、その人の”個人”というものが見えやすくなるのかなと思うんですよ、リアルの世界より。リアルだと中身がめちゃくちゃいい人だったりするのに、”見た目”っていうものの影響で評価されない人が、リアルよりもちゃんと”いい人”っていう中身を評価してもらってより幸せに生きている。なんて例もあったりするんですよ。

単純にVRゲームだから目とか体力とか使って疲れるような部分もあったり、コミュニティとして複雑なところがあるので、私もどっぷり浸ったり知り尽くしているわけじゃなかったりするんですが、それでもやっぱり面白いことは起きてるなと思います。


ーそれだけバーチャル文化やアバター文化っていろんな可能性を持っているってことですよね。


それについて1つ言いたい話があって。私がずっとバーチャルとかアバターに対して抱いている可能性とか希望みたいなものがあって、それを端的に表している曲がKMNZの『VR』なんですよ。

コンプレックス抱えてたって
ここなら好きなようにミックスダウンしたらいい
新たな自分が出てくる4次元ポケット次から次へ
矢継ぎ早過ぎて 一息つく間もない頭パンクしそう
ならば早くしようとせず自分のペースで
それができるバーチャルの可能性

こんなのがラップパートにあって、『ここなら好きなようにミックスダウンしたらいい』『それができるバーチャルの可能性』ってすっごいいい歌詞だなと思って、まさに私が言いたいことってこういうことなんですよね。


ー私事にはなりますが、自分も以前にバーチャルでやっていくうえで”顔”がいるかなと思って、アバターというか”顔”を作ったんですけど、それを作ったことで”自分のなりたい・なってみたい姿”になることがいいことというか、”バーチャルの自分がすごい認められる”なって感じました。


”自己実現”もできるんですよ。その中でリアルにもいい影響があると思うんですよね。



・アバターを持つことに関してそういう「活動をしないといけない」みたいなものを絶対に背負わなくていいし、なんの理由もなくアバターを持ったっていいっていうのが広まればいいとも思います。


ーアバターについていろいろお聞きしましたが、水井さんとしては今後アバター文化やバーチャルがどうなっていって欲しい、のような願望ってありますか?


そうですね…。1つ思うのは”バーチャル一般人”が増えていって欲しいなって思います。何か活動をしているわけじゃないんだけど、アバターを持っている人が増えて欲しいというか。VRchatをやっている人は今では結構いて、そういう人はアバターを持っているんですけど、Twitterのアイコンにするだけでもそれって自分のアバターになりえるので、そういったところで「自分のバーチャルの姿」「バーチャルの次元での身体を持つ」というのがもっと広まればって思いますね。

あとはアバターを作った時に「え?Vtuberやるの?」っていうあのいじりみたいなのが減っていったらいいというか、アバターを持つことに関してそういう「活動をしないといけない」みたいなものを絶対に背負わなくていいし、なんの理由もなくアバターを持ったっていいっていうのが広まればいいとも思います。アバターを持つことがどんどん”当たりまえ”になっていって欲しいというか。


ー水井さん個人としては今後どうなっていきたいですか?


まずは私もVRchatにアバターを持って進出したいというのがあります。モデルはもうあって、あとは機材をそろえるだけなんですが、それがそろえばやってみたいことがありますね。構想段階ではあるんですが、VR個展をやってみたいと思っています。バーチャルの世界で個展を開いて、自分もそこにアバターの姿で在留して、みんなもアバターの姿でやってくるっていう。


ー”MusicVket(ミュージックブイケット)”や”ComicVket(コミックブイケット)”の個展バージョンって感じですね。


そうですね。そういう系のイベントも出展したいなって思っているんですが、個人企画もしてみたいなって。

もう1つ、水井軒間としてではなく、運営しているVtuberの「水井しろめ」ちゃんっていう子がいて、あの子の活動を頑張りたいなって思っています。しろめちゃんの動画は今のところ私が全部やっているんですけど、アニメーションMVみたいなものをがっつり作ってみたいなと。

あとは自分の顔をトラッキングしてYouTube配信とかもしてみたいなって思っています。これも機材が必要なんですけど。絵を見てくれる人がたくさんいるのも勿論うれしいんですけど、もうちょっとタレント的にというか、個人としておもしろがってもらいたいっていう気持ちが最近あります。なので、人前で話すことをもうちょっとやってみようかなと。

今”温めている話”はたくさんあるので、今後そちらの方も注目してもらえれば。ゆっくり世に出ていくので楽しみにして欲しいなって思います。


ーもう一度企画の話に戻るんですが、各モデルさんに声かけをしたときってどんな反応が返ってきましたか?


ある意味メタ的なことになりますし、お誘いするときにはめちゃくちゃ慎重になりましたね。人も選んだし、選んだうえできちんと確認を取って了承のうえ参加してもらっているって感じで。でもほとんどOKでしたね。「おもしろそう!」って言ってもらえるのが多くて。あとは「自分が選ばれたこと」に関してめちゃくちゃ驚いている人もいました。活動している人もしていない人も、分け隔てなく扱いたかったのでいろんな界隈からピックアップした感じになります。


-それでは最後に改めて企画のご予定をお聞かせください。


Twitterだけじゃなくて本も出す予定にはしているんですが、情勢の影響もあって本がいつどのタイミングでどういうものが出せるのか不確定なところがるんですよね。コミティアも中止になっちゃいましたし。リアルでの本はどうなるか今のところ不確定ではありますが、Twitterなどでは予定通り3月から10月にかけて投稿していくので、チェックの程よろしくお願いします、ということで!



水井軒間(みずいのきま)
画家・イラストレーター。
1996年12月8日生。
2016年より「水井軒間」として活動を開始。
2018年多摩美術大学グラフィックデザイン学科卒業。
Twitter:@mizuinokima
公式HP
日向キタロー
アニメとゲームと特撮とバーチャルが好きなオタク。
Twitter:@HinataHuto



取材・文:日向キタロー


記事に関して何かありましたら、日向キタローのTwitterまでご連絡ください。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?