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【r0yインタビュー】”ナマの存在”Vtuberへのオリジナル楽曲を手掛ける、トラックメイカーr0yの話。

初めましての方は初めまして、そうでない方はお久しぶりです。日向キタローです。


インタビュー企画23弾はトラックメイカーとして活動しているr0y(ろい)さん。Vtuberさんのオリジナル楽曲作成やDJなどでもイベントでプレイしていることなどいろいろお聞きしてきましたのでお楽しみに。

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・ぱっと見は他のゲームの掲示物と変わらないんですけど、実態としてはリアルタイムに会話ができるっていうので「ナマの存在」としてそこに存在していたんですよ。


ー まず自己紹介を兼ねまして、普段どういった活動をなさっているのかをお聞かせください。


改めましてr0yと申します。昔はボカロPとしてボーカロイドのオリジナル楽曲を作っていたんですが、最近はもっぱらVtuberさんにオリジナル楽曲を書き下ろしています。ありがたいことに、現時点で公開されているもので14曲書き下ろさせていただいていますね。


ー Vtuberさんへ楽曲を提供し始めてどのくらいになるのでしょうか。


実際にVtuberさんへ楽曲を書き始めたのは、確認したところ1曲目が2020年の1月23日なので…一応2年近くはやっていることになりますね。

自分としてはまだ1年くらいの感覚だったんですが、どうやら2年弱経っているみたいです(笑)


ー こちらの記憶としても初めてお名前をお見かけしたのは『c0c0-Ahead(ココアヘッド)』だったので、お見かけしてからそれくらい経っているということなんですね…。


最初期の『c0c0-Ahead』の時からキタローさんからは認識していただいていたということですね。


ー 現在はVtuberさんへと楽曲を提供なさっていますが、少しそこからはさかのぼって、”Vtuber”というもの自体はどれくらいから認識していたのでしょうか。


明確に何年前から知っていたっていうのは定かではないんですけど、少なくとも4年前…とかだったかな、いわゆる有名どころと言いますかキズナアイさんやミライアカリさんは認識していて、多少動画とかを見たことがあるといった程度でした。

そんな中で自分の中で”Vtuber”というものが大きくなった転機みたいなのがありまして、それが2018年頃の東京ゲームショウに行ったときでした。その時に東雲めぐさんがふれあいコーナーみたいなものをやっていたんです。モニターにめぐさんが映ってらっしゃって、そこの前に行くと実際にお話ができるっていう催しだったんですけど、それを見た時に衝撃を受けたというか、「なんだこれは」と思って…。周りにゲームキャラクターが並んでいる中、インタラクティブに会話ができる存在がそこにいるっていうのことに感動したと言いますか…。


ー いろんなキャラクターが並んでいる中で、一見同じように見えるのにやっていることがまったく違うようなものですからね。


そうなんですよね。ぱっと見は他のゲームの掲示物と変わらないんですけど、実態としてはリアルタイムに会話ができるっていうので「ナマの存在」としてそこに存在していたんですよ。自分はチキって参加しには行けなかったんですけど…(笑)それを傍目に見て、”Vtuberってこういう文化なんだ、すごいな”って思ってからは、自分の心の中には印象としてすごく強く残りました。そこから”Vtuberって他にどんな方がいらっしゃるんだろう”と思って、先程言った有名どころと言われるような方以外にも漁っていくようになった形です。



・Vtuber自体に興味があったのもそうだし、自分は前々から”キャラソン”という概念が好きだったんですよ。


ー 存在自体は結構前から知っていた形なんですね。作曲などはVtuberを知る以前からしていたんでしょうか。


世間でいうDTMを始めたのはもう9年近く経つかもしれませんね。ちゃんと数えたことはなかったんですけど、こうして改めてカウントするともう9~10年ほどになります。

とはいっても始めたのは学生の頃で、当初は本当にお遊び程度の感覚でやっていました。なので本格的に曲を作り始めた=始めた年ではないですね。


ー その期間の中で先程おっしゃったように、Vtuberさんへ曲を書き始めてからは約2年ほどになりますが、1曲目の『c0c0-Ahead』は「Vtuberオリ曲コンピ」という企画の中の1曲だったと記憶しています。そちらの参加した企画自体は偶然見かけた、というような形でしょうか。



本当にたまたま見かけた、というような形ですね。

自分は起きている時間はだいたいTwitterを見ているんですけど…(笑)そうしてTwitterを見ていたら、たまたま、それこそ誰がRTしたかも覚えていませんけど、「Vtuberにオリ曲を書くのに興味がある方はいませんか?」とオリ曲コンピのツイートが流れてきたんですよね。ちょうどその時はVtuberへの興味が高まっていた時期だったので、”Vtuberへオリ曲か…”と思って気になりました。

Vtuber自体に興味があったのもそうだし、自分は前々から”キャラソン”という概念が好きだったんですよ。アニメのBlu-rayとかが発売された時に特典CDとかでキャラソンがついてくる、みたいなことがあると思うんですけど、”そのキャラクターイメージで作られた曲や歌詞”というのが個人的にはすごく好きで。音楽でキャラクターを表現するという行為自体が面白いと感じていて、Vtuberオリ曲もそれと近しいものがあると思っていたんですよね。Vtuberのキャラソンじゃないですけど、その方を音で表現するということになるし、先程言った東雲めぐさんの話じゃないですけど、アニメキャラよりもナマモノなので、より曲として描かなければならない対象が生々しいとなっているような感じでしょうか。そういったところが個人的にすごい面白いなと思っていて、立候補するか悩んだんですけど、別に立候補にリスクがあるわけじゃないしと思って応募したら採用していただいたので曲を書くことになった感じですね。



・バレンタインというテーマを曲名や歌詞から回収していったんですけど、結果音の方にまで影響を与える、という面白い形になりました。


ー あの企画自体も参加者の方々はかなりの人数でしたよね。その中でペアを組んだのが咲乃木(さきのき)ロクさんでした。よろしければその時のことなどもお聞かせください。もちろん言える範囲でにはなりますが。


そうでしたね。Vtuberさんに楽曲を書かせていただくというのが(咲乃木)ロクさんが初めてだったんですが、ペア自体は企画の運営さんがお決めになったので、蓋を開けたらお相手がロクさんでしたという形ですね。

ペアとして決まってから”作戦会議をしよう”となりまして、どんな曲がいいかというのを最初に相談したら「バリバリかっこいい系エレクトロでいきたい」ということで、そこは自分も得意分野だったので”うるさいエレクトロ系”でいくことはすぐに決まりました。

ただ自分はVtuberのオリジナル楽曲以前にラップが入る曲というものを作ったことがなかったんですよね。なのでどうしたもんかなと思って、ラップが入った曲とかを何曲か聴き漁って、”どういう感じのリズムとかにすればラップが乗せやすいのかな”ということを模索しました。そのあと、デモを作り始めたんですけど、いったん適当な英語のラップを流しておいて、それをロクさんだと思いこんでオケを作ってから、あとからその外国人のラップを抜いてロクさんに渡す、という…(笑)

このあと少し面白い話があって、このコンピレーションアルバムがバレンタインテーマだったんですよね。出る時期もそれに近いので共通テーマにしましょう、という話があったのを自分もロクさんもすっかり忘れていて…。2人で「あ、やべえ。バレンタインなんも関係ねーぞこのエレクトロ」と。デモの段階だとバレンタイン要素はなにもなかったんですけど、ブラッシュアップするにあたってバレンタイン要素を付け足していく形になりました。主に歌詞の方でその要素を足していく事になったんですけど。曲名も『c0c0-Ahead』で”ココア”というのが入っていて曲名で回収したり、歌詞も”思い切って好きな相手にぶつかれよ”というものに仕上げてくださって。
曲名の”ココ”の”o”の部分が数字のゼロになっているのは、自分の”r0y”名前の表記がゼロだからというのもありつつ、銃の型番っぽくてかっこいいよねっていう話にもなりまして『c0c0-Ahead』という曲目にしたので、曲の方にもあとから銃声を入れてみたりしました。なので、バレンタインというテーマを曲名や歌詞から回収していったんですけど、結果音の方にまで影響を与える、という面白い形になりました。

最初からバレンタインを意識していたらこうにはならなかっただろうなと思うので、結果的にあとから足したことによる化学反応みたいなものはあったのかなと思います。


ー 先程おっしゃったように、Vtuberさんへ書き下ろした曲は、現在公開されているもので14曲ということですが、その中でも特に気に入っているものや、よく出来たと感じているものはありますか?


そうですね…どれも我が子みたいなものなので決めるのはなかなか難しいところではありますが…。”1曲挙げろ”と言われたら、紡音れいさんに書いた『Area-Zero』ですかね。


この曲はかなり攻めた曲で、ドロップがめちゃくちゃうるさいんです。これも”れいさんにはかっこいいものが合うよな”と思って、ダーティーなものでも許されるかなというのがあって。あとはクラブイベントで流れた時に「こいつは只者じゃないぞ」っていう感じを出したかったんですよね。なので、もう行けるところまで行っちゃおうと思って、攻められるだけ攻めた形になっています。実際、箱とかで流してみたらめちゃくちゃ迫力が出たので狙い通りかな、と。今、自分はDJもやったりしているんですけど、流すと皆さん盛り上がってくれたりするので、そういう意味でも思い入れがありますね。自分の中で大きな武器の1つになったのかなというのもあります。


ー どちらかというと、こういったハードめなサウンドの方が得意なんでしょうか。


そうですね。エレクトロとロックの中でならジャンルは選ばないんですけど総じて”うるさいものが得意”です。静かなものがあんまり作れないので(笑)エレクトロでもロックでもうるさいものを作れますよ、ということで今までやってきてはいます。


ー 1音目を聞いた瞬間から「おっ?」っとなるような曲が多い印象がこちらとしてもありますね。


ガツンと殴っていきたいなと思っています。



・知らない外国人さんのセリフじゃなくて、知ってるVtuberさんの面白いセリフが鳴っていたら聞いている人も面白いんじゃないかな、と。


ー 自分個人としてもr0yさんの作る曲は好きと公言しているものが多くあります。ここで今回お話をお伺いするにあたって、1つお聞きしたいことがあるんですが…。普通に曲を作っているかたわら、『柚子花絶叫EP』や水瀬しあさんの舌打ちを使ったハイハットなどもイメージが強いのですが、どういう経緯で作ったんでしょうか?


あー、なるほどなるほど(笑)

『柚子花絶叫EP』の話をすると、以前柚子花さんがTwitterに絶叫を投稿したんですよね。投稿自体は結構前だったんですけど、RTで自分のタイムラインにあがってきたんですよ。それを聞いた時に”なんてパワーがあるんだろう”って思ったんですよね。叫びが尋常じゃないと、迫力もありましたし。そして”これを声ネタで使わないのは失礼だろう”と。


ー 失礼…?


(笑)

少なくとも自分は思ったんですよね(笑)で、どんな曲に使おうと思った時に、”これはダブステップしかない”と個人的には思いまして、声ネタを使用したダブステップを即座に作成して、その日のうちか次の日くらいにTwitterに投稿したんですよ。そしたら思いの外めちゃくちゃウケまして…。”こんなに好評いただけるのであれば、ちゃんとリリースしよう”ということになりました。リリースするのであれば柚子花さんの許可をいただければならないということで連絡をとったんです。”『柚子花絶叫EP』という形で柚子花さんの絶叫を使用した曲を4曲ほどパッケージで出してもいいですか?”と。

ありがたいことに許可をいただけたので、制作にうつりまして…。こういうものって温度感とか速度感とかが大事だと思って、手早く、かつハイクオリティな楽曲を書ける人たちを集めて、”柚子花絶叫を使った曲を書け”と言って書いてもらいました。短い納期の中で書いてもらって、最初にTwitterに投稿したものが話題になってからすぐにEPのリリースにこぎつけましたね。


- 声ネタ自体がr0yさんはお好きなんですか?


好きですね。学生時代に音MADを聞いていたというのもあるんでしょうし、あとはクラブミュージックとかって声ネタが入ることが多いんですよね。それもめちゃくちゃかっこいいんですけど、好きなVtuberさんの声が入っていたらそれはそれで楽しんじゃないかと思って。知らない外国人さんのセリフじゃなくて、知ってるVtuberさんの面白いセリフが鳴っていたら聞いている人も面白いんじゃないかな、と。バックグラウンドというか、”文脈のある叫び声”というか…。柚子花絶叫もそのうちの1つな感じですね。


- 結構いろんなイベントなどで流れていますよね。


そうなんですよ!最初は一部のマニアックな層にウケてそれで終わりだと思っていたんですけど、結構Vtuber楽曲オンリーのクラブイベントでで使われていて…(笑)定期的に叫び声が上がっている報告が回ってくるんですよね。

Twitterで「柚子花絶叫」でサーチすると「あ、今流れた」というような報告をしてくれている人が結構いらっしゃって、日本全国のイベントで流れているし、なんならアンセム的な立ち位置になっているところもあるらしくて…。”そんなに!?”とは思いますけど、やっぱり作った側としてはありがたい限りではありますよね。

全国各地で流れていますが、柚子花さんは「汚い方だけ流すんじゃない」とおっしゃっていますね。柚子花さんもきれいな方が本業というか、普通の柚子花さんの曲も流してくれとのお達しが出ていますので、クラブで柚子花絶叫を流していただける方は、是非とも通常の柚子花さんのシングル楽曲とかも流していただけると良いかなと。いい曲がたくさんありますので。


- いい曲もかなりの数ありますからね。


水瀬しあさんの舌打ちハイハットの話もしますと、時系列的には柚子花絶叫よりも前なんですが、ある時にしあさんの配信を見ていたんですよ。見ていた時に、あの御方めちゃくちゃ舌打ちするんですよね。その舌打ちがめちゃくちゃ綺麗でクリアなんですよ。”すごい綺麗な音だな”と思って耳をすませてたら”これハイハットの説あるな”と思いまして…。”ハイハットとして使用できるんじゃないか?”と思ってしまったんですよ、これはもう天啓ですね。もう思ったら試さずにいられなくて。なので、実際にサンプリングしてDAWに取り込んでちょっと加工したら本当にハイハットになったんですよね。

こうなったらもうハイハットにしてそれで終わり、なんてもったいないじゃないですか。こうして綺麗なハイハットとしてあるのに。じゃあもう曲にしなきゃなと思って、それを使った曲を作ってTwitterに投稿したらそれも何故かまあまあウケまして…。結果的に水瀬しあさんの配信のエンディングとして使われるという。そんな結果なんてまったく想像してなかったんですけど…。「エンディングで使用してもいいですか?」って連絡きた時には”本気で言ってますか?”と返したくらいにはビビりましたね。もっとカワイイのとかがあると思うんですよ、こんな世紀末みたいなのでいいんですか?っていう。「これがいいんです」と言われたので高音質なデータをお渡ししましたけど…(笑)



ー Vtuberさんを見ている層って音MADを通ってきている方が多いように感じるので、そういった面でも馴染みが深いんですかね…。


そうですね(笑)あるんだろうなあ…。

どうあれ、刺さるものがあったというのは嬉しい部分はあります。本人にも気に入ってもらえたのはよかったかな、と。



・実際に箱で流してみると、”こういう方がノリやすいんだな”とか”映えるんだな”と体験として得ることができて、間違いなくDJを始めてからの経験や知識は作曲にも還元されていますね。


ー 先程話題にも上がりましたが、現在DJとしてもイベントに出ていらっしゃいますよね。


初めてDJとして出たのは2020年の8月頃のイベントで「DJやってみませんか?」というお誘いをyasuさんからいただきました。シスター・クレアさんの『DOGMA』のRemixを出した時に興味を持ってくださった方だったんです。自分はその時点でDJ自体完全未経験でした。DJアプリとかでちょっとだけ遊んだことはありましたけど、ちゃんとやったことはなくて、”DJってどうやってやるんだ?”となりましたね。お誘いいただいてから1ヶ月ほどあったので練習しようと思って、DDJ-400を買って練習して、実際に現場に立ったというような感じです。


ー 実際にDJとしてプレイしてみていかがでしたか?


めちゃくちゃ面白かったですね。元々、ミュージックプレイヤー用にプレイリストを作るのが好きだったんです。流れとか考えたり、相性がいいものを並べたり。DJもその点はにているのかなと思って肌に合いました。

実際に曲の移行とかはエフェクターとかを使ったりもできて、そこはDTMで培った部分をそのまま反映できるものだったので特に違和感もなくて、慣れ親しんだエフェクターたちを使ってかっこよく繋いでいくというのも面白かったですね。


- そこからDJとしても出演する機会が多かったですよね。


そうですね。初めて出させていただいたのは「ANI FLAT」というアニソンメインのイベントだったんですけど、Vtuberさんへ曲を書いているということもあるのかVクラにゲストDJとして呼んでいただけることが多くて、Vtuber楽曲メインでプレイさせてもらいましたね。

その中で実際に箱で流してみると、”こういう方がノリやすいんだな”とか”映えるんだな”と体験として得ることができて、間違いなくDJを始めてからの経験や知識は作曲にも還元されていますね。


ー 実際ご自分で箱などで聞くと違ってきたりするものですか?


違いますね。家でもモニタースピーカーとかを使ってモニターしたりはしますけど、箱の超でかいスピーカーで爆音で流すというのはやっぱり家の中では難しくてですね…。


ー 一般家庭ではそのあたりは難しいですよね。


箱鳴りがいいっていうのを実際の箱で確認するというのは結構大事ですね。家で鳴らした時にこういう感じだと箱ではこうなるんだなっていうのをある程度つかめてくると、箱で鳴らしてみなくても予測つくようになるんですけど、最初のうちはわからないですからね。なので始めは自分の中でギャップがあったんですけど、”こういう感じにすると綺麗に鳴るんだ”っていうツボが押さえられてきたので、箱鳴りの想像がつくようになってきました。


ー 他には作曲の延長といいますか、Remixの方も結構な数を出していらっしゃいます。やはり作曲する時とRemixの時だと勝手は変わってきますか?


そうですね。そもそも自分がRemixしているのって一種のファンアートなんですよね。自分は絵が描けないので、Vtuberさんに対してどうやってファンアートを作ればいいのかというところを考えた時に、”自分が作れるのは曲だけなのでRemixだな”と。

作曲との違いとしては、始めから歌メロが決まっていることですかね。Remixの時は歌メロは固定で決まっているわけなので、それを破壊してもいいんですけど、破壊しない場合それをうまく使いながら、ドラムやベースを差し込んでいくっていう作業になるのでゼロから作る時と比べて、指針やガイドとなるものがあるので作りやすい面がありますね。一方で好き勝手暴れられないというところもあるので一長一短というところもあったりはしますけど。あまり崩しすぎると”これはこの曲のRemixと言ってもいいのか?”となる時はありますね。それもそれでかっこいいものに仕上がるときもあるんですけど。

Remixの方が指針が立ちやすいというのがあると思うので、もしDTMに興味がある人はRemixから始めてみるのもいいかもしれないかな、と。好きだなと思う曲を持ってきて、低音域を削って、そこに代わりに自分の好きなベースやドラムを足してみるっていうのをしてみると、漠然となにもない状態から作るよりかはとっつきやすいかもしれません。なにも縛りがないほうがやりやすいという人もいると思うので、そこは人それぞれの好みかなとは思いますが。自分としてはどっちも好きですね。



・詳細の部分は各々の受け取り方に任せるけど、話の大筋は伝わってほしいというのがあるので、程々にぼかしつつ本筋は伝わるような度合いを目指しています。


ー 少し話は前後してしまいますが、オリジナル楽曲の作り方としてはいつもどういう形で作っていったりしているんでしょうか。


いつも作る時は、まずはそのVtuberさんについて調べます。なので非公式wikiみたいなものって結構助かったりしていますね。そういうものを見て、概要を掴んだり、アーカイブや生配信を見たりして、その方の人物像を掴むところから始めます。人物像を掴んで、まず「こういう曲調がいい」というのがあればそれに沿いますし、そういうオーダーがない場合でもそのVtuberさんが好きだと公言している曲とかを意識したりもしていますね。

そうして人物像と楽曲のカラーが決まったら、いったんワンコーラスのラフをバーっと書いてしまって、それに対してOKが貰えればブラッシュアップしていってフルにしていく、というような感じでしょうか。


ー 作詞などはいかがですか?


作詞とかはVtuberさんへ曲を書く前からちょっとは経験がありました。でもあんまりなかったですね。Vtuberさんへ曲を書くにあたって、挑戦するかと思ってちょいちょい書いたりしました。他の方に依頼することもあるので頻度としては半々くらいですかね。

歌詞の書き方としては、自分は曲ができてから歌詞を書く派なんですけど、曲ができているということは、そのVtuberさんのイメージも掴んでるし、曲調も定まっている状態なので、要素は揃っていると。あとはテーマやお話をどうするかというところなんですよね。

例えば『AreaーZero』であれば、「退屈な日常に囚われている君を解放してあげるよ」っていうテーマなんです。これはれいさんに合うと思ったので、こういうテーマにもなっているんですけど、そのストーリーを歌詞で描くという感じになります。中身としての塩梅がなかなか難しくて、露骨に全部説明してしまうとTHE 作文みたいになってしまいますし、かといって説明しすぎないとそもそものテーマが伝わらないっていう。抽象的な言葉を並べるのってかっこいいんですけど、全部それだと結果的に情報量がゼロになってしまうというか…。聞き手にすべて想像を委ねてしまうというのも、1つの形だとは思うんですけど、自分の場合、詳細の部分は各々の受け取り方に任せるけど、話の大筋は伝わってほしいというのがあるので、程々にぼかしつつ本筋は伝わるような度合いを目指しています。


ー 曲を書くよりも歌詞を書くほうが難しかったりしますか?どっちも難しいとは思いますが…。


そうですね。「ラーメン作るのとケーキ作るのどっちが難しい?」的な感じで難しいんですけど…少なくともr0yとしては作曲のほうが得意、ですかね。作詞の方が苦手というか、難しく感じます。経験の数というところでもあるとは思いますけどね。作詞の経験が増えれば、作曲と同じ温度感で作れるかもしれないですけど、今はまだ作詞の場数の方が少ないので。ただやっぱり過去に書いた歌詞には思い入れがありますし、褒めてもらえると嬉しいですね。


ー 過去の作詞の中で自分で特によく書けたと思うものはありますか?


歌詞で1番気に入っているのは菜花ななさんに書かせていただいた『Frost Veil』ですかね。

これは自分が描きたいストーリーを作文にならない程度のわかりやすさで伝えられたんじゃないかなと思っています。



・より広い範囲でいろんなVtuberさんに依頼してもらえるような作曲家でありたいです。


ー 今まで作ってきたものなどについてお話を聞かせていただきましたが、これからの展望などもお聞かせいただければと思います。


現状、すでにやりたいことはやれているので、今後もVtuberさんにオリジナル楽曲を書いていければなと思っています。今後の展望としては、より広い範囲でいろんなVtuberさんに依頼してもらえるような作曲家でありたいです。

あとは今までリリースしてきたものは自主制作の面が強いので、メジャーレーベルから楽曲をリリースしてみたいというものがありますね。


ー 今まで作ったことがないような曲を作ってみたいというものはありますか?


基本的に作りたいと思ったものはすぐに作ってしまうので、”作りたいと思ってはいるけどまだやっていない”というものはないんですよね。ただ、自分がこれまで出してきた曲は治安が悪いがちなので、たまには爽やかな曲を作ろうかなというのは少し思っています。うるさかったり悲しかったり影があったりする曲が多いので。


ー DJなどもこれから続けていく予定ですか?


そうですね、現状やめる理由もなく、楽しいばかりなので。今後もバリバリ続けていきますし、オファーをいただければぽんぽん飛んでいきたいと思っています。



・”Vtuberってまだこういう表現方法が残されていたんだな”という感動があったし、描いているストーリーの質も高いんですよね。


ー r0yさんは楽曲を書く書かないに限らず、いろんなVtuberさんを見ているとは思いますが、個人的に「この人面白い・すごい」と思う方はいらっしゃいますか?


今、1番すごいなと思うのはラングドシャさん…通称ドシャ様ですかね。もうご存じの方もいるかも知れませんが、ラングドシャさんという方がいまして、天使代行なんですよね。信者さんを集めるために活動をしているんですが…いやもうとにかく見てくれとしか言えないんですよね。


”Vtuberであること”をフルに活用して、物語を紡いでいる方で、”Vtuberってまだこういう表現方法が残されていたんだな”という感動があったし、描いているストーリーの質も高いんですよね。当人もマルチで才能があるところも推しポイントです。絵も上手いし、ストーリーも面白いものが書けるし、歌も歌えるし…。ドシャ様のオリジナル楽曲である薄明光線も編曲は別の方ですが、ご本人が作曲と作詞をしているんですよね。これだけマルチにやっていて、しかも質が高いと。


ー ラングドシャさんのあの物語は”お話”といいますか、あれは”現実”ですからね。


もう”現実”ですね。現実だわ。画面越しに1つの世界を見ているというか、明らかにそこの世界があるんですよね。個人的には今までのVtuberとはまたちょっと一線を画して来たなと思いまして。今まで結構Vtuberさんを漁ってきた自覚はありますけど、ああいったものは今まで見てきたことはなかったですね。

いわゆる世界観の構築もそうなんですけど、雑談とかTwitterの運用もオタクの温度感をわかっている感じもとてもいいなっていう。本当に心地良い”オタク”というか…(笑)オタクが嫌がることを絶対にしないというか、その親近感もまたよくて。なので、「誰か面白いVtuber知らない?」と聞かれると、毎回彼女の名前を答えていますね。

もしまだドシャ様を知らない方がいたら、本来は初配信を見るべきなんですけど、そこでのストーリーの続編となる2話の方が受け口が広いんじゃないかなと個人的には思ったりもしています。


初配信で描かれた物語の続編が、第2話「ラングドシャと深海の姫君」というタイトルでアップされていて、初配信の内容が前提となっているので初配信を最初に見るべきではあるんですけど、見ていなくても楽しめるし、話の間口が2話の方が広いんじゃないかなと思っているんですよね、個人的には。なのでいっそのこと2話から見てもらうのもアリかな、と。どちらから見ても設定などに関しては把握できますし。2話を見てもらって、で十中八九くっそ面白いと感じると思うので、そこから初配信を見てもらってもいいかなっていう。2話の冒頭10分くらいを見たらもう”ただものじゃなさ”がわかると思うんですよ。そこまで見たら「もういいかな」ってならないと思う。自分はならない。

しかもあれ、プレミア公開じゃなくて生配信ですからね。ほんとに意味がわからない(笑)”こんなにすごい人がまだいたんだな”と自分は衝撃を受けましたね。

…なんか作曲とかよりも真面目に話してませんか?これ(笑)


ー そんなことありませんよ!?


(笑)


ー いろんなお話をお伺いしてきましたが、r0yさんご自身の楽曲の宣伝などはありますか?


今出せるものであれば、曲に関してではないんですが「ぶいおれんす」というイベントがありまして、そちらに自分も関わっていたりするのでぜひ見てください、という感じですね。配信のみのイベントになるのでどこからでも参加できますので。


あとは1番最近出たものだとyugaさんという方に提供させていただいた『SSystem』ですね。これも本当にyugaさんのオリジナル楽曲である必然性を追求した曲になりますので、ぜひそれを聞いて感じていただければと思います。





r0y(ろい)
音楽ゲームやVtuberに楽曲提供を行うトラックメイカー。 Vtuberに提供した楽曲は既に二桁を超える。 
2020年にはDJを始め、ハードでオシャレな音を鳴らし続けている。 推しがたくさんいるので、死後裁かれます。
Twitter:@22hurt
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日向キタロー
アニメとゲームと特撮とバーチャルが好きなオタク。
Twitter:@HinataHuto



取材・文:日向キタロー

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