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宿題【3.宵の口】

 いったいどれほどの時間宿題をやり続けているのだろう。

 黙々と宿題をこなす彼女はふと気が付いた。今日は一言もしゃべっていない。部屋には時々母親がごはんを届けてくれたが、頷くのみで言葉を発していない。
 彼女はふと心配になってきた。もしかして、もう声がでなくなってしまっているんじゃないだろうか?
 心配になった彼女のペンは止まった。そしてさらに考えた。いや待てよ。もう声がでないかもしれない。これは一大事だ。だって声が出ないんだもの、病気じゃないか。宿題どころではない。朝一番で大きな病院にでも行かなければならないかもしれない。これは大変だ。宿題とか学校どころじゃない。
 彼女はそんな一抹の不安に駆られ、机から立ち上がり大きく息を吸い込んだ。
 
 「あーーーーぁ……あぁ……」
 
 彼女は静かに頷いてゆっくりと椅子に座りなおした。
 声は出た。
 問題なかった。
 明日病院に行くことはない。


 やらねばならぬ。彼女は決意を新たにして宿題を再開した。しかし彼女の口元はちょっとだけ緩んでいる。どうやら声が出てちょっとだけ安心したようだ。

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